はぁ。
翔のやつめ。
何気に毎日毎日雅紀の自慢話をしまくりやがって。
いや、分かってるさ。
翔が雅紀を人目見て恋に落ちたことも、真っ直ぐで素直な熱血漢である翔に雅紀が惹かれていったことも頭のなかでは分かってるさ。
雅紀と別れて何年になるかよく分からないくらい色んなことがあったけどさ、それでもやっぱり俺の中で雅紀はあの頃のままの雅紀なんだよな。
タッキータッキーと言ってガキの頃から俺を追いかけてくる雅紀が俺の中で特別な存在になったのはいつだったかな。
太陽のような笑顔で一生懸命すぎるくらい一生懸命で。危なっかしくて見ていられないときも少なくないけど、誰より真面目な努力家なんだよな。
だから俺はずっと雅紀だけだった。
そして翔が雅紀を幸せにしてくれると信じて疑っていない。
いないけど。
なぁ、翔。
お前、大丈夫か?
大学のあの女、雅紀に手を出したりしねぇよな?
お前がいるから、お前だから俺は雅紀を手放したし、お前だから雅紀を託したんだぞ。
何かあってからじゃ遅ぇんだ。
何がなんでも守り抜け。
そのためなら俺はなんだってやる。
…つか、未練タラタラみてぇじゃねぇか。
くっそ!
ちょっと…というよりむしろめっちゃイライラしてきたからバスケのボールを手に取り公園へ向かった。
…。
……。
………。
帰ろ。
今行くと邪魔になりそうだしな。
抱えていたボールを静かに胸に抱え込み直して公園の入口からUターンした。
公園のベンチには翔の撫でた肩に頭を乗せてウトウトしている雅紀がいたから。
ったくよ。
俺の心配なんてなんでもねぇかもしんねぇな。
なんでもねぇまま終わるといい。
そうだろ?雅紀。