\ピンポーン/
\ピンポーン/\ピンポーン/
\ピンポーン/\ピンポーン/\ピンポーン/
誰だ!?
こんな朝っぱらからエントランスのインターホンを鬼のように連打するのは!?
モソモソと雅紀の腕の中から抜け出て雅紀のおでこにキスをひとつ落としてからカメラを見た。
「あ、お母さん」
『翔ちゃんおはよう!あの子いるのね?いるのよね??』
「はい、今開けますから!」
『ありがとう。お邪魔するわね!』
エントランスのロックを解除するとすぐに玄関のドアがノックされた。
エントランスのインターホンはめっちゃ連打しまくるのに、玄関については隣近所に遠慮をしてドアをノックするところがお母さんらしいな。
雅紀にお母さんが来たよと告げてから玄関を開けると、挨拶もそこそこに蒼翔とともにお母さんがベッドに寝ている雅紀の元へ駆け寄ってきた。
「雅紀っ!」
「んぁ?母ちゃん????」
「わんわん!わんわんわんわん!」
「え??蒼翔!?」
…バシッ!!
「何やってんのよ!心配したのよ!!どこへ行ってたの!!翔ちゃんにもお父さんにも誰にも言わずにいなくなるなんて!!!ばか!!」
「母ちゃん…」
ボロボロと大粒の涙を零しながら雅紀をひっぱたいたお母さんは雅紀の肩をつかまえて泣き崩れた。
そりゃそうだよな。
オレからの一報が入ってからどれだけお母さんは走り回っただろう。
聞けば蒼翔のリードを引っ張ったり、時に蒼翔に引っ張られるようにして走り回ってたそうだ。
真面目すぎるから。
頑張りすぎるから。
自分に厳しすぎるから。
責任感が強すぎるから。
雅紀はそういう子だから…。
お母さんはそう言って雅紀にしがみついて泣いていた。
「母ちゃん、蒼翔。それから翔ちゃん。心配かけてごめんなさい。心配してくれてありがとう。俺…何をやっても上手くいかなくて。体調管理くらいしっかりやれよって思うのに何も出来なくて…。それでヤケになったんだ…ごめん…」
「ばーか」
「そうよ。バカね。そういう時に逃げ場になるのが実家でしょ?翔ちゃんのところでしょ?何もかも自分1人で背負ってどうするの?まぁ自暴自棄になって1人になりたくなる気持ちも分からなくもないけど...周りに甘えなさい。八つ当たりしなさい。分かったわね?」
「ごめん」
「オレも頼りないとこあるけどさ、頼ってよ。ワガママ言ってオレを困らせてみせてよ」
「翔ちゃん、素敵なこと言うわね?」
「ワガママ…か…」
「そうだよ。オレが困るくらいのワガママ言ってみろ。ま、お前のワガママなんてオレに言わせてみればワガママじゃねーんだろうけどな?ふははは」
「翔ちゃんったら…雅紀のことを大切にしてくれてありがとうね…ほんとにありがとう…」
「わん!わんわん!!」
みんなでそんなことを言って泣き笑いになってたら、蒼翔が「俺もかまえや!」ってベッドの周りをグルグル走りながらはしゃいだ。
雅紀。
家族っていいよな。
困った時や助けが欲しい時はこうしてすぐに駆けつけてくれるんだよな。
な?
って雅紀を見たらまた顔中を水浸しにしながら雅紀が泣いてた。
泣き虫…って言いながら例の借りパク状態のタオルで顔をぐいぐい拭いてやった。