自暴自棄になってマンションを飛び出した。
何をやっても上手くいかない。
リハビリも体調管理も勉強も。
もともと勉強が苦手な方だったからせめてリハビリだけは頑張ろう、なんとか食らいついていって早く自分の足で立てるように歩けるようになろうって思ってたのに。
くっそ!!
イライラを爆発させた俺は部屋の中を荒らし、そのまま車椅子で飛び出した。
財布も持たずスマホも持たず。
突発的に飛び出した俺はどこか遠くへ行く術を持っていなかった。
翔ちゃんと散歩をした公園、街路樹。
幼い頃に父ちゃんや母ちゃんと遊んだ公園。
小学校や中学校。
あちこち徘徊するように車椅子を走らせた。
そして夜も更けてくるとさすがに冷えてくるしお腹も空いてくる。
実家からそう遠くはない公園のトンネルの中に丸まって寝た。
それからどのくらい経ったか分からないけど、翔ちゃんの香りに包まれたんだ。
スーツのあたたかさとともに、翔ちゃんの温もりに包まれていた。
何を言っても怒らないで俺の話を聞いてくれる翔ちゃんに甘えた。
このままでいい、むしろ俺がいないと困るんだだなんてさりげなく甘えながら俺を受け入れてくれる翔ちゃんの大きさに包まれて俺は涙が止まらなくなった。
指輪を嵌めてもらってタクシーに乗ったところまで記憶にあるけど、次に気がついたら翔ちゃんにお姫様抱っこをされていた。
意外にも軽々と俺を運んでくれるからしばらく寝たフリをして優しさに甘えた。その強さに甘えた。
駄々を捏ねながら好きだとか愛してるとか言ってもらってすごく幸せだ。
翔ちゃんは俺を丸ごと愛してくれている。
包み込んでくれている。
時に年下のように甘えてくれるけど、こうして大きな愛で包み込んでくれる翔ちゃんに俺は心から甘えることが出来るんだ。
俺の居場所。
俺だけがいていい場所をこうして作ってくれる翔ちゃんを俺は尊敬してる。
でも。
明け方まで何度も目を覚ましては俺の存在を確かめるように抱きついてスリスリして甘える翔ちゃんはやっぱり可愛いんだ。
翔ちゃん、ごめん。
心配かけてごめん。
翔ちゃん、ありがとう。
心配してくれてありがとう。
俺はもっと強くなるよ。
翔ちゃんの横に並んで立てるようになるよ。