よいしょっと。
姫抱きにした雅紀を落とさないように玄関で靴を脱ぎ捨てた。文字通りにぺいって靴を飛ばしてから真っ直ぐベッドルームに向かう。
そっと降ろしているときに雅紀が目を覚ました。
「え?翔ちゃん?」
「ん?」
「ここどこ?」
「オレたちの家だよ。帰ってきたんだ」
「ありがと…」
「オレの方こそ一緒に帰ってきてくれてありがとうだよ」
ベッドに降ろす直前に首に雅紀がしがみついてきたからバランスを崩したオレはそのまま雅紀を押し倒すような形になって倒れ込んだ。
「翔ちゃん…キスして?」
「いいよ?」
ちゅ、ちゅ
「好きだって言って?」
「好きだよ?」
「愛してるって言って?」
「愛してるよ?」
「俺、このままでいい?」
「そのままの雅紀を丸ごと愛してる。今のまま、素直で真っ直ぐな雅紀でいてくれないとオレが困るって言ったろ?」
「…あり、がと…」
「ふふ。今日はもう寝よ?」
覆い被さるように抱きしめたことと、ベッドの温かさと帰ってきた安心感とで再び睡魔に襲われた雅紀の口調がトロントロンになってきてる。
可愛いな。
こういうとこが可愛くて愛おしくてたまらない。
雅紀を抱きしめたままオレたちの体に布団をかけてオレも目を閉じた。
・
・
・
雅紀、いるかな?
数時間おきに目が覚める度に雅紀が隣にいることを確かめた。
手を伸ばせば触れる雅紀の体。
オレを抱きしめてくれている腕。
暖かい胸の中。
良かった。
ちゃんといる。
もうどこにも行くな。
オレを置いていなくなるな。
ぎゅうううーーーって雅紀の背中に腕を回して胸にスリスリしながらオレは目を閉じた。
そしてオレが明け方まで何度もそうやりながら雅紀の存在を確かめていることを雅紀が気づいていたなんてオレは知らなかったんだ。