アプリでタクシーを呼んでから、関係各所に雅紀と会えたことをLINEで伝えた。これから2人でマンションに帰ることと、自分の行動にジレンマを感じた雅紀が突発的に家を飛び出したことも伝えておいた。夜遅くの連絡になって申し訳ないことと、返信は不要である旨も伝えた。
公園の入口にタクシーが横付けされると、雅紀を先にシートに座らせてからトランクに車椅子を乗せた。
2人並んで後部座席に座ると当然のようにオレは雅紀の手を握った。握ったというか指を絡めて捕まえた。
程よいタクシーの揺れとオレの体温が心地いいのか、雅紀がウトウトしはじめた。
そしてコンとオレの肩に頭が落ちてきた。
うん。
お休み。
マンションまでそう遠くはないけどさ、寝なよ。
安心して寝ていいよ。
「おちる…」
「うっせぇwww」
ウトウトしながらもそんなことをつぶやきながら肩に頭を乗せ直す雅紀が愛おしくてたまらない。
基本的にオレのことを年上のように引っ張り上げてくれる雅紀だけど、こうして年相応に甘えてくれることかオレには嬉しいんだ。
甘えてよ。
オレが甘えることで雅紀を甘やかすこともあるけどさ、たまにはこうして頼ってよ。
「タクシーの揺れ、大丈夫ですか?」
「え?いや、大丈夫ですよ?」
「お連れ様がおやすみになられているし車椅子でしたので少し気になりました」
「お心遣いありがとうございます。揺れが気持ちいいみたいでぐっすりです」
「マンションに着きましたら車椅子を下ろすのを手伝わせてください。お客さんはお連れ様のそばにいてあげてください」
「…え?」
「そんなに安心しきっておやすみになってますからね。起こしては可哀想ですよ」
「はははは。重ね重ねありがとうございます」
声のトーンを小さくした運転手さんの心遣いが嬉しかった。
マンションに着くとオレは運転手さんにエントランスに車椅子を置いてもらうように頼んだ。
そして雅紀をお姫様抱っこをしてエントランスの鍵を渡して運転手さんに開けてもらい、そのまま玄関のドアの鍵も開けてもらった。
「玄関まで送って貰って申し訳ないです」
「いえいえ。とんでもない。こんなにまで信用して頂いて私も幸せです。ではまたのご利用をお待ちしています」
運転手さんに鍵をスーツのポケットに入れてもらいながらそんなことを話した。
すごくいい人だったな。
な?
雅紀?
姫抱きにした眠り姫雅紀のおでこにキスをした。