やべぇ。
もう日付が変わる。
4月とはいえ夜は冷える。
あの部屋の散らかり方を思うと雅紀は衝動的に飛び出したに違いない。
ということは薄着のままだろう。
やっと熱が下がってきたのに無理をしたらどうするんだ。
そう思うと心配していた気持ちに少し怒りの感情が上乗せされてきた。
何やってんだ!雅紀!
どこで何してんだ!!
あちこち走り回って体力も限界になってきた。
そういえば仕事から帰ってから飛び出したからなにも食ってない。
いや、雅紀だって食ってないはずだよな。
どこで何してる?
相葉総合病院の裏手にまわり、雅紀の実家の近くを奥へ進んだ。
あれ?
こんな所に公園なんてあったかな?
あまりにも近すぎてお母さんはここを見ていなかったか、それともお母さんが来たあとで雅紀がここに来たのかもしれない。
ふとそんなことを思ったオレはなんの迷いもなくその公園へ走り込んだ。
え?
公園の隅に赤い車椅子がある。
間違いなくこれは雅紀の車椅子だ。
「雅紀?いるのか?」
優しく声をかけながら公園の奥へ歩いていった。
そして。
「雅紀…雅紀…?」
ベンチの裏側のトンネルの中に体を丸めて縮こまったまま眠っている雅紀を見つけた。
そっと触れると雅紀の体は冷えきっている。
ばか。
こんな所で寝てたらまた熱が出るだろ。
何してんだよ。
着ていたスーツのジャケットを雅紀の上にかけてから覆い被さるように抱きしめた。
見つかってよかった。
無事で良かった。
生きていてくれて良かった。
寒かったよな?
雅紀を抱きしめたまま背中をさすっていると、腕の中の雅紀が目を覚ました。
「しょ、ちゃ…」
「雅紀。ただいま」
涙のあとが残る雅紀の頬にキスをした。
「風邪ひくだろ。何してんの?こんなところで」
「俺…俺…ごめんなさい…」
マンションを飛び出したことを責めずにどうしたのかと問うと、雅紀が泣きだした。