マンションを飛び出してからお母さんとお袋、そして岡田さんに連絡を入れた。
雅紀がそっちへ向かっていないか。
ここ数日、オレが雅紀に感じていた違和感についてみんなに話すと、それぞれ手分けして探してくれると言ってくれた。
あとは…。
そうだ!キミちゃんにも手伝ってもらおう。
もしも雅紀に何かあった時のためにと連絡先を交換しておいて良かった。
キミちゃんもすぐに連絡がつき、探してくれると言ってくれた。
真っ暗な公園や散歩をした道、大学までの通学路。
診療所までの道。
思い当たる場所をあちこち走って探し回った。
どこだ、雅紀。
どこにいる。
マンションには車椅子は無かった。
車椅子でどこかへ行ったんだろうか。
タクシーに乗ったんだろうか。
それとも電車か。
とりあえずありとあらゆる可能性を考慮し、駅に出た。
駅員さんやタクシー乗り場で待機している運転手さん、バスの運転手さんに赤い車椅子に乗った青年が来なかったか聞いて回った。
でもどうやら駅には来ていない。
でもヤバいな。
もう23時を過ぎた。
次々と助けを求めた仲間たちから着信が入るけど誰も雅紀と接触が出来ていない。
どこだ。
どこにいる。
明日の講義もあるうえに未成年のキミちゃんには家に戻るように伝えた。
「櫻井ー!」
「岡田さん!!」
「どうだ?雅紀くんはいたか?」
「いや、まだです」
「すまん。俺も病院に戻らないといけないんだ。相葉先生もオペで手が離せないからまだ伝えてはいないんだが…」
「分かりました。お手数おかけしました」
「とにかくお前も気をつけろ。深夜に1人で出歩くのは危険だ」
「いや。雅紀と帰ります。連れて帰ります」
「ん。分かった。何かあったら連絡しろ。気をつけてな」
「はい。ありがとうございます」
岡田さんと別れてからお母さんにもお袋にももう遅いから今日はありがとうって連絡を入れた。
あとは明日の朝何かあったら連絡をするからと伝えると2人ともオレに無理をするなと何度も繰り返して言っていた。
分かってる。
分かってるつもりだよ。
無理も危険なこともしない。
だから信じて。
そう言うとオレはまた走り出した。
雅紀がオレを呼んでるから。
そんな気がしたんだ。