それから2日、雅紀は大学を休んだ。
その間お袋やお母さんが作り置きしてくれたご飯を食べて過ごした。
オレもどうにか洗濯は形になってきたから仕事に行く前に干し、体力が復活しつつある雅紀が取り込むということになってた。
リハビリが出来ないからって雅紀はソワソワしたり、時にイライラしている仕草を見せることもあったけど、オレの顔を見るとふわっと笑って落ち着きを取り戻すこともあった。
でもやっぱり心配だ。
目の前のことに一生懸命になりすぎて周りが見えなくなる癖のある雅紀のことだ。
オレがいない日中にはかなりストレスを溜めているに違いない。
かといって診療所は簡単に休む訳にはいかない。
潤が戻ってきてくれたことに加え、トリミングの資格を取った智くんの腕もメキメキあがり、診療所はとんでもない忙しさになっていた。
「翔先生!!診てください!」
「どうしました?」
「さっきから苦しんでいて…」
「え?もう産まれるじゃないですか!こんなに早く??潤、斗真!!応援頼む!」
予定では2週間後に出産だと思っていた猫を連れた飼い主さんが飛び込んできた。
呼吸も荒いし、お腹の子の心音も弱い。
どちらも助けたい。
お腹の子みんなの命を救いたい。
「頑張れ、頑張れ…お母さんになるんだろ?子どもたちにおっぱいをあげるんだろ?頑張れ!」
「潤はここを押さえてくれ。斗真はこっちのサポートを頼む」
母猫に懸命に声をかける潤は姉ちゃんと陽縁と縁翔のことを思い出しているんだろう。
すごく真剣な表情で母猫に声をかけながらテキパキと動いていた。
もちろん斗真もオレも命を助けたい。
全員の命を…。
救いたい。
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・
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「よし、最後の一匹だ。慎重に頼む」
「ああ。母体はどうだ?」
「心拍は安定してる。大丈夫…でも…」
「どうした?」
「最初の一匹目の呼吸が浅いな。マッサージしよう」
「よし、最後の子も無事だ。マッサージの方はどうだ?」
母猫から取り上げた子猫は全部で五匹。
最初に取り上げた一匹目の子の呼吸が浅くなり殺める場面もあったけどみんな無事だった。
「よく頑張ったな?お母さんになったぞ?」
「お疲れ様」
「あとは麻酔から目が覚めるまで様子を見よう」
飼い主さんに五匹が無事に産まれたことと母親となった猫のことを説明している声を聞きながら麻酔から覚めるであろう母猫の頭をオレはただただ撫で続けていた。