春色スニーカー289 | 愛すべき櫻葉の世界

愛すべき櫻葉の世界

甘々櫻葉と翔ちゃんへの愛を甘くおしゃべりしてます♡



少しずつ雅紀と会える時間が少なくなっていった。

物理的には仕方の無いことと分かってはいるものの、その時間が増えれば増えるほど、オレが雅紀んちに家庭教師として行くと雅紀は帰りがけに涙を浮かべるようになってきた。


週3日の家庭教師は絶対的に変わることはない。

だけど講義の課題やら雅紀の試合やらが重なると自由に出来るはずだった週末ですら会うことがままならなくなっていった。

平日はさらに話す時間なんて持てない。課題に追われるオレはLINEすら返事が出来ない日もあるし、雅紀だって寝落ちしてることも少なくない。


だから尚更バイトから帰ろうとすると雅紀はオレのシャツの袖をぎゅっと握って離したがらなくなる。

そんな雅紀を目の前にして当然のようにオレも帰りたくなくなるわけで。


でも。

そんなにオレたちは時間を自由に使うことは出来ない。

オレも雅紀も次の日は学校だし。




「雅紀?ゴールデンウィークって予定ある?」

「んん、部活はない……」


「オレもサッカーのサークルも教習所も無いんだ」

「……」


「だからさ。おばさんにお願いして旅行に行かせてもらお?」

「旅行?」


「ん。電車でさ。近いとこ行こ?」

「でも……お金……」


「オレが出す。バイト代と貯金から出す」

「俺もずっと貯めてきたお年玉を使っていいか母ちゃんに聞いてみる」


「その代わり、旅行から帰ったらまた馬力を上げて勉強すっぞ?覚悟しとけよ?」

「……覚悟が足りなかったらどーすんの?」


「ばか。ヤリもしねぇ前から覚悟が足りなかったらなんて言うなや」

「ごめんなさい」


「ふははは。雅紀も寂しいのと同じようにオレだって寂しいんだぜ。いくら大学で滝沢やブッキーや隆ちゃんがいてもさ。やっぱり雅紀はいねぇんだもん」

「しょーちゃんも寂しい?」


「当たり前じゃん。ずっとそばに居た一目惚れした相手が隣にいねぇのって結構ダメージ大きいんだぞ」

「……そっか。しょーちゃんも寂しいんだね。俺と同じだな……」


入学式の朝、松本に言われたことを思い出してた。

寂しさも共有することは大事なんだって。

改めてこうして気持ちを吐き出すことでオレの心が少しだけ軽くなったような気がした。

そして吐き出したオレの言葉を受け止めた雅紀は少し晴れやかな顔をしているように見えた。