出産が近づくにつれ、私は仕事のペースを落とした。
潤は産休に入って実家に戻った方が安心だと言うけど、もう少しだけ2人でのんびり過ごしたいというのが私の本音だ。
外で仕事をバリバリこなし、翔といた頃もなんやかんやと翔の世話を焼くことに闘志を燃やしていた私は根っからの甘え下手だと思っていた。
だけどそうじゃなかったみたいだ。
潤は非常に甘やかし上手なのだ。
いい感じに潤の手の上でコロコロ転がされながら私はいい感じに甘えている。
というより潤の手によって甘やかされていると思う。
しかもそれが非常に居心地が良すぎる。
翔も付き合っていた頃はこうして潤によって甘やかされていたんだろうな。なんて変なところにヤキモチを妬いてしまうのは潤には内緒。
良すぎてこのまま母親になったら果たして子育てが出来るのか?と不安になるほどである。
潤め。
くっそ。
やられた。
私を仰向けに倒した潤は顔の両サイドに肘をついて自分の体を支えながらポンポンと頭を撫でてくれる。
私はその潤の背中に手を回して温もりを感じた。
「あ、そうだ。潤、名前…考えてる?」
「いや。全然?華は?」
「私も考えてないの。なんとなくネットで調べたりしてるんだけどピンと来ないのよね」
「だよなぁ。やっぱりさ、子どもの顔を見てからでいいんじゃないかと思うんだよなぁ。顔を見たところでイメージと違う名前にしちゃってたなって思うのも嫌だしさ」
やっぱり潤は潤だ。
相手の気持ちや心に寄り添える人だ。
そういうところが昔から好きなんだけど変わらないんだ。
例え産まれる前の子だとしても1人の人格者として考えて人権を尊重している。
ねぇ。
アナタのお父さんはすごく素敵な人なんだよ。
私が保証する。
アナタは世界で一番素敵なお父さんの子として産まれて来られるんだよ。
幸せだね。
そっとお腹を撫でると、グルグルボコボコとお腹の子どもが元気に動いた。
そしてその私の手を包み込みながら微笑んだ潤は覆いかぶさりながら抱きしめて何度も何度もキスの雨を振らせてくれた。