潤が風呂に入っている時に、姉ちゃんが姉ちゃんの部屋から顔を出してオレに手招きをした。
「お腹、触ってよ」
「いいの?」
「いいから言ってんのよ。ほら!」
「…なんか不思議だな…ここに赤ちゃんがいるんだな。おーい。聞こえるかー?翔ちゃんだぞー。元気に生まれてこいよー?」
「え?叔父さんじゃないの?」
「いいえ、オレは絶対的に翔ちゃんです!」
なぜか叔父さんとは呼ばせたくないオレは堂々と宣言してやった。
何でだろう。
姉ちゃんのお腹に手を当てていると不思議と涙が込み上げてくる。
「あったかいでしょ」
「ああ」
「翔…この子…ちゃんと産まれてくるよね?私、抱っこ出来るよね?」
「当たり前だろ?」
「不思議な夢を見たの…この子を産んだ私がベッドに横たわっているのを手術室の上から見下ろしてる夢…あと、もうひとつ。私が翔の頬を赤ちゃんの手を介して触れたあとに虹の橋を渡るの…それって…」
「ばか!変なこと言うな!!」
お腹を押さえている姉ちゃんの手を掴んだ。
そんなの夢だ。夢でしかありえないんだ。
この子も姉ちゃんも無事に帰ってくるんだ。
オレたち家族の元に。
潤の元に。
「そんな不安な気持ち…ちゃんと潤に受け止めてもらえ。アイツは絶対目を逸らさないで受け止めてくれるはずだから…だから大丈夫。夢のことも全部話せよ」
「ん。ありがと…」
遠い遠い過去。
オレが産まれてくるずっとずっと前の遠いもう1つの記憶の中に…。
そんなことがあったけど、オレは愛する雅紀さんの元に帰ってきた。命懸けで産んだ快翔の元へ帰ってきたんだ。
だから。
大丈夫。
そんなことは起こらないから。
姉ちゃんは大丈夫だ!!!!
「翔ちゃんにお前を抱っこさせろよ?頼むぞ!ママを守ってくれよ!」
「…翔…」
お腹に向けて力強くオレは伝えた。
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覚えてますか?
翔ちゃんが命を懸けて快翔を産んだ日のことを。
そしてその後快翔の退院を見届けてからお姉ちゃんが旅立ったことを。
この「Sounds of joy」は「幻の最終話」と「君のうたシリーズ本編」を絡ませながらのストーリー展開なので古くから読んでくれてる方は「ああ、あの時の!」って思ってもらえると嬉しいです。
↑翔ちゃんが命懸けで快翔を産んだお話
↑お姉ちゃんが翔ちゃんの頬を撫でて旅立ったお話