翔と雅紀さんが快翔を迎えに来た。
迎えに来たということは、私の役目はこれでおしまい。
翔の姉として、快翔の叔母として快翔が外に出られる日までここにいると決めてきた。
本当はまだそばにいたい。だけどワガママばっかり言っていられないでしょ。
翔も雅紀さんも快翔と会話が出来ることを気づいていた。私がこっそり力を使っていたことも気づいていたと思う。だけどそれも今日でおしまい。
あの車が病院から出ていったら私の力を使うのもおしまい。
快翔を抱き上げた翔の頬に触れた。
快翔の指を使って私自身が触れた。
こうして触れたかった。
快翔のそばにいることを言い訳にしていたけど、本当は翔と一緒にいたかった。
大好きよ、翔。
大好き。
今度生まれ変わるときはちゃんと姉弟として一緒に生まれようね。
『ありがとう、翔。ばいばい』
快翔の指を通して翔に伝えようとしたけど、しなかった。
ばいばいなんて言いたくなかったから。
だけど翔は快翔の指が触れたことでキョロキョロしてた。いつもより温度が高くなっちゃったからかな。
ばいばい、翔。
ばいばい、快翔。
雅紀さん、翔と快翔をお願いします。
3人の周りをくるりと回ってから空へ上がった。
3人にたくさんの幸せが訪れますように。
そう願いを込めて光のシャワーを降らせた。
3人を乗せた車を見送りながら視界がボヤけていった。泣かないって決めてたのに。どうしてこんなに泣けるんだろ。ばかね、自分で決めていたのに。
ママ。
パパ。
ありがとう。
家に飛んでいって台所にいるママの背中に抱きついた。ママは何か気づいたみたいで翔が贈ったガーネットのブレスレットを押さえて泣いていた。
リビングで新聞を読んでいるパパの背中に抱きついた。パパもやっぱり気づいたみたいで慌てて持っていたコーヒーをこぼしちゃった。
「快彦さん?まさか?」
「そうだよな?あの子…」
ママの元にパパが駆け寄り、泣き崩れたママをしっかり抱きしめていた。
「またね。また来てね?今度はちゃんと産むからね?約束してね?」
「約束だ。必ず俺たちの子どもとして産まれて来いよ」
リビングの真ん中に置いてある小さな小さな白いガーゼを抱きしめながら2人は泣いていた。
そのガーゼの中に私はいた。確かに生きた。
生き抜いたんだよね。
ママ、パパ、ありがとう。
またね。ばいばい。
ママとパパの周りをくるりと飛んでから虹の橋へ向かった。
近くにいられないけど、ずっとずっとそばにいる。
いつもここから見守ってる。
ありがとう。
産んでくれてありがとう。
この世界は最高に優しくて幸せだったよ。
ママ、パパ。
翔、快翔。
愛してる。
ありがとう。
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お姉ちゃん目線での翔ちゃんと快翔。
また違った見え方になるかな。
お姉ちゃんと家族の別れは永遠の別れじゃない。
キラキラした光のシャワーがそう言ってるみたいだよね。