The Music Never Ends126 | 愛すべき櫻葉の世界

愛すべき櫻葉の世界

甘々櫻葉と翔ちゃんへの愛を甘くおしゃべりしてます♡




快翔と雅紀さんと一緒に家に入った。

快翔は水色のカーペットの上に敷かれた青いタオルケットの上に寝かせると、大きな目をキョロキョロさせて家の中を見ている。


ちょんちょん。快翔の手の甲をつつきながら話しかけた。

「快翔。今日からここがお前の家だよ」

「あちこち見てるね?」

キョロキョロする快翔がなんだか忙しそうだ。


なんか変だ。

いつもなら触れる指先を通して快翔の言葉が伝わってきていたのに。

もしかしたら?

ハッとして顔を上げると雅紀さんも同じことを思っていたみたいだ。


「雅紀さん?快翔の言葉が分からなくなってる。姉ちゃんは?いねぇの?」

「…分からない…快翔と一緒に病院を出るまでは俺も分かっていたのに…もしかしてお姉さん、今日までって決めていたのかも…」


「そんな!!だって!まだそばにいて欲しいのに!姉ちゃん!姉ちゃん!出てきてよ!なぁ!あの時病院でほっぺたが熱かったのが別れの挨拶なんて嫌だ!姉ちゃんっ!なぁ!」

「翔!やめろ!お姉さんだってきっと泣きながら俺たちを見送っていたはずだろ?な?翔…」

天井や部屋の上の方を見ながら叫び続けるオレの肩を雅紀さんがぐっと押さえた。


「うあああああ!!!うあああああ!!!!姉ちゃん!姉ちゃんっっ!なんでだよ!くそっ!」

「翔!待ちなさい!翔っ」

「ふにゃあああ、ふにゃあああ」


姉ちゃんがいない。

いなくなった。

心に大きな穴があいたみたいだ。

我を忘れて叫んで家の庭に走り込んだ。






「うあああああ!!!うあああああ!!!うあああああああああああ!!!!!!ああああっ!!」


力の限り叫んだ。

叫んで叫んでこれ以上ないくらい声を上げて泣いた。


『翔。泣かないで……お姉ちゃんはいつも近くにいる。ありがとう。私のために泣いてくれてありがとう。快翔に会わせてくれてありがとう。翔。好きよ。今度は絶対に一緒に産まれよう。約束』


心の中に優しい声が聞こえた。


「いやだ!!いやだ!!姉ちゃん!!逝かないで!!うあああああ!!うああああああ!!!!!」


病院を出る時はキラキラした光の中にいたはずなのに、いつしか空から大粒の雨が降り出した。


そう。

まるで姉ちゃんが泣いてるみたいだった。