英霊の聲(こえ) | 中杉 弘の徒然日記

中杉 弘の徒然日記

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 三島由紀夫の作品の中に『英霊の聲(こえ)』という短編小説があります。「先の大戦で散った英霊たちの精神的なよりどころは何であったのか?」ということです。これはお父さんでもなければお母さんでもないのです。それは天皇陛下なのです。

 「天皇陛下、万歳!」と言って死んだメンタリティーは完全に天皇です。それをわからないから左翼馬鹿どもは、最後に「お母さん!」、「死にたくない!」と言って死んだというのです。そうではないのです。死ぬことは名誉なのです。これは三島先生が早くから指摘されていることです。

 文明とは「生の文明」「死の文明」があるのです。人間には「生き甲斐」ということがあれば、「死に甲斐」ということもあります。生き甲斐とは、好きなことをやって楽しいのですからわかります。

「何のために死ぬのか?」という目的をもった人は幸せです。「何のために死ぬのか」とう考えた時に、一番元気がよいのは20歳くらいです。20歳で「何のために死ぬ」という目的をもった人は、むしろうらやましいのです。80~90歳のジジイやババアになり、ベッドで寝たきりになり、あちこち管でつながれたら、何のために生きているのでしょう。

1日1日、皆の迷惑になり、そんな人間と比べたら、20歳で特攻隊として見事に生命を燃やして、「これで終わる。しかし俺は国のために、天皇のために殉じるのだ」と思った人生とどちらがよいのでしょう。そのことを三島由紀夫は言っています。

 三島先生は「私は自然に自分の生命を任せない」と言っているのです。死を自然にまかせたら怖いのです。癌になって死ぬかもしれない、半身不随になって死ぬかもしれない、植物人間になって死ぬかもしれません。「そんなものに自分は身をまかせるつもりはない。私は私で死に甲斐をもって堂々と死ぬ」これが人間の喜びだと思います。

 傍から見ていると三島先生の切腹は「苦痛だろう」と言う人もいるでしょうが、喜びなのです。『豊饒の海』では、「切腹の刃が腹に入ったときに瞼(まぶた)の上にかくやくと太陽が昇った」と表現しています。

 日本には「死に方」というものがあったのです。最初から武士道では武士道と云ふは死ぬ事と見付けたりと書いてあります。三島先生は『葉隠』の愛読者です。だから最初の頃は「殿様が欲しい」と思っていたのです。殿様がいないと死ぬことがみつけられないのです。

 殿様のために武士道と云ふは死ぬ事と見付けたりで完成するのです。今は封建君主がいないから、自分が死を捧げる対象がいないのです。そこで到達したのがやはり天皇です。我が国の文化は天皇から始まり、天皇によって完成されているのです。和歌も文学も武芸もすべて天皇から源を発しているのです。

 そして、特攻隊で死んだ人のことを考えて「彼らは不幸であったのか」と考えた時に、「最高に幸せだったのに違いない」ということを三島由紀夫は結論づけるのです。そこで天皇が人間宣言をしたのです。

 戦前は「天皇は神だ」と思って国民は死んだのです。天皇は人間宣言をされたのです。三島由紀夫はこれに対して怒りをもっていたのです。「昭和天皇はご立派だったとかいう人がいますが、私はそんな言い方は気に食わない。天皇には良いも悪いもない。ただし、絶対に「私は神である」とこの一言だけを言ってくれればいいのだ。天皇は神であるのになぜ人間宣言をしてしまったのだ」と怒っていたのです。

 「天皇のために命を捨てた英霊たちはさぞかし恨んでいることであろう。」これが『英霊の聲(こえ)』のテーマです。

 三島先生は間違っています。天皇陛下の人間宣言は違うのです。「私は神話とともに生きてきた。しかし、そうではない。これからは人間としてのつながりを国民の皆様ともっていく」ということを言っているのです。

 これは僕の持論ですが、「神天皇」「人間天皇」があるのです。「人間天皇」とは、家族と団らんしてご飯を食べている姿、お孫さんをだっこしている姿、夫婦でお散歩している姿などです。これは神天皇の姿ではないのです。人間天皇の姿です。

 それで終わったら普通の人です。天皇には高御座(たかみくら)が用意されています。高御座にのぼると天皇は人間天皇を脱して、神天皇となられるのです。この両方をもっているのです。神天皇のときには私情は何もありません。

 天皇陛下は神様にお使いしている人ですから、1年の内に200回以上の儀式を行い神と対話して、神の意見を聞き、そのような修行を1年間に200回も行っているのです。儀式を行うごとに人間天皇は神天皇に近づいていくのです。

 この神天皇に近づいていく第一の儀式が大嘗祭です。それによって今まで皇太子だったのが「神になった」という自覚がでてくるのです。まだまだその自覚は本物ではなくて人間が強いのです。1年間に200回の儀式を行って、神と接触をしていくことにより完璧な完成された神天皇になるのです。

 日常生活すべてが神天皇ではないのです。「歩く姿もすべて神である」などということはできません。普段は人間天皇です。一度、高御座にのぼられて御聖断を下すときは神天皇です。

 開戦の詔勅も終戦の詔勅も神天皇が行ったものであり、その御聖断には一つも誤りはありません。終戦して昭和天皇は、「日本は戦争を終わらせた。それによりあらぶるアメリカを内側から変えることができる」と言うのです。

 それはどのようなことかというと今までは男と男の原理で日本は戦いました。アメリカはたかだか239年の国で野蛮国もいいところです。我が国は2800年の歴史をもった類稀なき国家なのです。

 239年の歴史しかないアメリカが日本を叩き潰そうとしても所詮無理があるのです。アメリカは暴力をふるいまくって天皇は終戦をされました。この野蛮人どもが核兵器を開発して日本国民を皆殺しにするという計画がみえたからです。

 西洋ではジェノサイドといい、戦争して勝った場合、負けた国は皆殺しです。日本人にはそんな思想はありません。これはハーグ国際法条約違反ですが、そんなことはおかまいなく野蛮人ですからバンバン原爆を落としたのです。

 昭和天皇は「終戦しておかなければ、日本民族がいなくなってしまう」と思い終戦をしたのです。負けた形を取るのでアメリカに犯された形を取るのです。アメリカ239年の国家が2800年の国家を犯したのです。犯されたということは、日本は女の論理にならなければいけません。

 犯したアメリカは野蛮人だから何でも無茶苦茶にやるのです。やられた方は黙っているのです。これは夫婦関係に似ているのです。夫婦関係も犯されてしまうと女はおとなしくなります。男は威張りながら好きなことをやります。

 ところがいつの間にか、女が財布を握っているのです。普通の家庭はそうです。お母さんがいなければ何もできません。何でもお母さんがやってくれるので、男は空威張りしているだけで何もできません。それに気が付くとお母さんの方がはるかに偉くなってお父さんが使えるのです。そうなればよいのです。

 犯された日本はアメリカの荒ぶる気持ちを抜いてしまい、「日本がいなければ何もできない」というようになればアメリカ自体が変わるのです。そのように天皇は考えられたのに違いないのです。

 事実、今はそうなっています。アメリカは日本がいなければ何もできません。武器もほとんどが日本の部品です。車もすべて日本製です。テレビもスマホもすべて日本製です。何もかも日本がいなければアメリカは何もできないのです。お金も日本に頼りきっているのです。日本は米軍に82の基地を無料で貸して、年間1兆円の思いやり予算をあげているのです。日本が1兆円あげなければ米軍は日本に駐留することもできません。

 武器はすべてアメリカ製のものを買ってあげています。国債を100兆円以上買ってあげています。これによりアメリカ軍は成り立っているのです。日本がいなければアメリカはどうすることもできないのです。

 今回の安倍談話で一番恐れたのはアメリカです。日本がアメリカに牙を向けるのではないか」と彼らはいつも恐れているのです。悪いのはアメリカです。日本は売られた喧嘩を買っただけで、悪いのはアメリカです。「アメリカこそ裁判にかけろ!」という話になってくるとアメリカは狼狽えてしまいます。原爆を落としたことが何よりもの証拠です。それに触れてくるのではないかと内心はビクビクしているのです。

 安倍さんの談話を聞いて「我々の追及はないな」とホッとしているのです。安倍さんも本当は言いたいのでしょうが、国際的には言えないのです。今回の談話はずいぶん言いたいことを発言しています。「植民地、やめようではないか。植民地、お前ら(白人)もしただろう。日本だけがやったのではない」と言っているのです。そこが一番のポイントです。そのようなことを言って牽制したのです。一番恐れているのはアメリカです。

 日本がいつか「東京裁判を見直せ、あんな裁判はおかしだろう。アメリカこそ裁判にかけろ!」と言い出したら困ってしまうのです。おそらくアメリカが弱ってくると、そのような話が出て来るに違いないと思います。

 今はまだ巨大であるから、そんな話は出てきませんが、そのようなことなのです。

 天皇陛下には人間天皇と、神天皇の二つの面があるのです。それを十分に使い分けておられるのです。国民の側も「今は人間天皇でいらっしゃるな」、「今は神天皇でいらっしゃるな」と理解して、天皇陛下のお言葉を直立不動で聞かなければいけません。

 けじめをつけていくところに2800年の国家を維持してきた日本の秘密があるのです。




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