三島由紀夫と軍事行動 ⑥ | 中杉 弘の徒然日記

中杉 弘の徒然日記

毎日・毎日起きている事件について
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 三島由紀夫先生は自衛隊に三度も入隊して実際に軍事経験をしています。しかも、荒野をかけめぐったのです。戦車にも乗っただろうし、匍匐前進(ほふくぜんしん)もして、テントの中で自衛隊の皆さんとともにご飯を一緒に食べたでしょう。

 そのような生活をしたときに「ここにこそ、男がある」と実感したのです。三島由紀夫は自衛隊が気に入ったので、3度も入隊したのです。階級はなかったけれど特別資格です。そこに盾の会の会員も体験入隊をさせています。

 「ここにこそ青春があり、人生があり、希望がある!」と感じ取って自衛隊諸君には大変お世話になったといっています。こんな楽しかったことはないのです。文士というものは、机に向かって頭をかきながらひねくりだす作業です。これはやはり非人間的です。

 1日中机の前から動かず、頭をかきむしりながら、アイデアを出して考えていくのは行動的ではありません。そのような生活は非行動です。

 ところが、荒野の中に鉄砲をもって立って「前進!」と進めば気分は爽快です。「駆け足!」「伏せ!」「撃て!」、こちらの行動は人間的です。自衛隊は一体なんであるのかというと、「自衛隊は軍隊である。軍隊以外の何物でもない」と三島由紀夫は言っています。

 しかし、長谷川慶太郎先生の話によるとちょっと違うのです。自衛隊は軍隊ではないのです。何故ならば、憲兵がいないからです。憲兵とは兵隊をつかまえて、軍事法廷に連れていくのです。兵隊が兵隊を捕まえて軍事法廷で裁くという仕事がないのです。

 もう一つは勲章がありません。この二つは大事なことです。「形がいかに軍隊に似ていても、この二つがないから自衛隊は軍隊ではない」と長谷川慶太郎先生は言っています。そうなのです。自衛隊には憲兵がないのです。

 もし、自衛隊員が法律を犯せば、裁くのは民間の裁判所です。我々が使っている裁判所で裁かれるのです。もうその瞬間に軍人は軍人たる名誉が失われるのです。軍隊は人殺しをするのです。人殺しをしたら民間の裁判所で裁かれ、「殺人罪です」と言われてしまいます。そんなことになったら軍の活動や行動はできません。

 だから、軍の裁判所があって、軍法会議をもって裁くのが軍隊です。軍隊は民間のやっていることと反対のことをやるのです。人殺しをする団体です。それがないのは、軍隊ではありえないのです。

 それと軍隊独自の勲章を発行しないとダメなのです。アメリカにしてもそうです。日本も昔は、「金鵄勲章(きんしくんしょう)」があったのです。ナチス・ドイツには十字勲章がありました。第一次世界大戦時には、鉄十字勲章をヒトラーはもらったのです。

 軍人は妙なもので、そのようなもののために働くのです。階級とは違います。階級は順を追っていくのでそう簡単には上がれませんが、勇敢な行動をすると勲章は二等兵でももらえるのです。

 鉄十字勲章をもらったヒトラーは勇敢だったのです。伝令兵ですから、銃弾が飛び回る中をあちこち走り抜けたのです。だから勲章をもらったのです。

 日本でも金鵄勲章があります。それを誇りにして胸につけて歩くのが軍人の誇りです。それがないのは軍隊ではないと長谷川慶太郎先生は言っています。

 そのようなものを抜きにして、作家と正反対の自衛隊で体を動かし行動する軍人にあこがれたのです。「素晴らしいな。ここに青春がある」と思ったのは当然のことだと思います。

 最終的にはF-104の超音速戦闘機に乗るのです。その時の体験は『太陽と鉄』という小説の中によく書かれています。これは、名文だと思います。

 軍隊の話にもどすと、軍事活動とはどのようなものかというと、命令するものがいて、それを実行する者がいます。戦闘の喜び・楽しみというのは、飛び回っている兵隊さんの軍事行動の中にあるのです。

 それを指揮している指揮官は机の上にいるのです。小隊長は現場にでていきますが、参謀や部隊長はほとんどがデスクワークです。自分は血わき肉踊らないのです。小説家と同じで、「あっちへ行け」「こっちへ行け」と、考えているからそこには行動の喜びがないのです。指揮官はブクブク太っていくだけで、命令に従って動いていく兵隊は死ぬのです。

 兵隊は死ぬのですが、その中にこそ喜びと、誇りと、名誉をもっていることでしょう。特攻隊を命じた人間の中に喜びはなくて、散った特攻隊員の中にこそ大義と「俺はやったのだ!」というものが残るはずなのです。行動が大事なのです。

 三島由紀夫は、デモについてふれていますが、大衆デモが何万人集まっても、それは軍事行動ではありません。なぜかというと命令する者と、命令される者がいないからです。命令する者と実行する者がいて初めて軍隊です。デモ隊が何十万人集まっても、それは軍隊ではありません。

 だから、デモ隊は簡単に蹴散らせるのです。軍隊というものがあって、軍隊には行動の美があるのです。軍の喜びというものは、実行者であるところの兵隊または、下級士官の中にあるということを覚えておきましょう。そのように三島先生は言っています。

 太った指揮官になると机に座っているだけで、もう喜びもないし、何もありません。単なる計算だけが戦争です。「突撃!」という感激は味わえません。そのように三島先生は言っています。

(⑦に続く)






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