復興増税=所得税・法人税、社会保障増税=消費税→「復興・社会保障一体増税」に耐えられる? | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

復興増税=所得税・法人税、社会保障増税=消費税→「復興・社会保障一体増税」に耐えられる?

秘書です。
菅政権は、①増税は所得税増税と法人税増税、②社会保障は消費税増税という方向性を考えているようですね。しかし、日本経済にそんな「復興・消費税一体増税」の攻勢に耐えられる力はあるのか?
与謝野大臣によれば、日本は、

「経済が成熟した社会、それから期待収益率が高い投資分野のない社会」
「実際の物づくりの能力あるいは提供できるサービスの能力とかいう、やはり経済の本質的部分の実力の低下というものが日本の経済の最大の問題」

なのだそうです(2011年3月9日衆議院内閣委員会)。実力が低下した国で円高を放置して、増税して、どうやって国が成りたつのでしょう。生活が成り立つのでしょう。努力が報われるという価値観を維持できるのでしょう。



復興目的の消費増税に否定的=「社会保障財源に」-与謝野経財相
http://www.jiji.com/jc/eqa?g=eqa&k=2011051200687
(2011/05/12-21:10)時事通信
 与謝野馨経済財政担当相は12日、外国特派員協会で講演し、「消費税は社会保障に使われるべきだ」と述べ、東日本大震災の復興財源を確保するために消費税を増税することには否定的な見解を示した。
 与謝野経財相は「国民の70%が震災の負担を分かち合うことに同意している」としつつ、消費増税を持ち出した場合には、「(国民の支持は)70%を下回ると思う」と述べた。
 また、復興に必要な政府支出の規模に関しては、「荒い試算だが10兆から15兆円になるのではないか」との見通しを示した。

→おやおや?と思いましたが、これは既定路線だったようですね。復興構想会議の検討部会メンバーである大武健一郎・元国税庁長官は、4月24日に復興増税は消費税ではなく所得税・法人税で、と提案していました。

元国税庁長官の緊急提言!臨時増税は不可欠だが、消費税はなじまない
2011年5月12日 ダイヤモンドオンライン 大武健一郎
http://diamond.jp/articles/-/12231

「具体的に臨時増税の対象として考えられるのは、すでに議論の俎上にのぼっている所得税、法人税のほか、固定資産税だろう。特に、法人税、所得税は、もともと臨時増税としてうまれた制度であり、時限措置にもなじみやすい。それらで、仮に3年と決めて1割上げれば、3年間で最低8兆円は集まる。当面これでまかなったとして、足りないに決まっているので、またその次を考えればよい。」

「ただし、臨時で増税する場合に、消費税は絶対になじまない。仮に「2年間増税」と言った瞬間に、住宅は一切建たなくなる。2年後に家を建てようと思うに決まっているからだ。復興財源を確保するうえで経済の活性化を目指すべきなのに、逆行する動きをうみかねない。もし消費税を上げる議論をするならば、社会保障など財政の根幹を見直すなかで議論すべきだと思う。」


第2回東日本大震災復興構想会議検討部会(平成23年4月24日)大武委員提出資料
http://www.cas.go.jp/jp/fukkou/pdf/kentou2/ohtaka.pdf

3.復興財源

(1)復興債の活用(但し、将来の増税を法律化)
(2)財源
①臨時増税 所得税 法人税 固定資産税
(消費税は臨時になじまず、段階的引き上げが好ましい。)
②寄付金の活用 復興基金の設立
寄付者の意向配慮
寄付者の表彰

→そして、消費税増税は社会保障と一体で、ということなのでしょう。

社会保障 今月末に改革案と試算
5月13日 5時50分 NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110513/t10015862191000.html

社会保障と税の一体改革で、政府・与党の集中検討会議は、今月末に社会保障制度の改革案と、それにかかる費用の試算をまとめることにしており、税や保険料などの国民負担が、どの程度増えることが示されるのか、注目されます。
12日開かれた、社会保障と税の一体改革を巡る集中検討会議で、厚生労働省は、無年金や低年金となっている人への対策強化や、所得が低い人に対する医療費の負担軽減策を検討するなどとした、社会保障制度改革の原案を示し、来月末までに税制の抜本改革を含めた一体改革の具体案を取りまとめる予定です。それに先立って、集中検討会議では、12日に厚生労働省が示した原案を基に検討を進め、今月末までに、社会保障制度改革の案と、それを維持するためにかかる費用の試算をまとめることにしています。厚生労働省の原案のように社会保障制度の充実・強化を図るためには、社会保障費の増大は避けられず、今月末にまとめる試算で、税や保険料などの国民負担がどの程度増えることが示されるのか、注目されます。

→では、復興と社会保障と一体となった増税に、日本経済は耐えられるのか?与謝野大臣は、欧米で当たり前の金融政策を日本でやらない理由は、日本の製造業とサービスの実力が低いから、といっていました。

→スウェーデンは、競争力があり(スウェーデンを語るときに、日本とは対照的なリスクをとる選好があるといわれていることを忘れてはなりません)、中央銀行は量的緩和政策で断固とした反デフレ政策をとっています。だから、社会保障の負担を国民ができるわけです。

→それを、社会保障負担のところだけスウェーデンの真似をして、中央銀行はデフレと円高を容認しておきながら、日本の製造業とサービスは実力はありませんといい、増税をしていく。これでは持続不可能ではないでしょうか?


2011-05-12 15:45:00
3.9 中川―与謝野論争の焦点:なぜ欧米で普通の金融政策を日本ではダメというのか?
http://ameblo.jp/nakagawahidenao/entry-10889407754.html

○与謝野国務大臣 日本の国のように、経済が成熟した社会、それから期待収益率が高い投資分野のない社会、こういうところで量的緩和をしてどのような効果が発生するかということを考えれば、答えは一目瞭然であって、金利をいじることも量的緩和をいじることも実は経済に全く影響がないと言ってもいいほど影響がない、これは厳然たる事実だと私は思っております。

○与謝野国務大臣 実は、日本の経済は金融が問題なのではなくて、実際の物づくりの能力あるいは提供できるサービスの能力とかいう、やはり経済の本質的部分の実力の低下というものが日本の経済の最大の問題であって、これをすべて日本銀行の金融政策等々に押しつけるのは多分間違っているんだろうと私は思っております。

→阪神淡路大震災以後の95年以来の行きすぎた円高こそが日本の経済社会の質を変えたのでしょう(行きすぎた円高の結果としての非正規雇用の拡大や、努力しても報われないという価値観の蔓延)。

→今度の大震災以後、①日銀の通貨政策による円高とデフレの放置、②復興・社会保障一体の増税政策、③大規模二次補正の秋への先送りにより、一体、日本をどんな国にしようとしているのでしょうか。

→縦割りの中でそれぞれが部分的合理性ばかり追求して、全体が連鎖して化学反応を起こして意図せざる随伴的結果を生む(随伴的結果についてはポリシーメーカーは所掌の範囲外だから誰も責任をとらない)。その全体の連鎖を鳥瞰すべき司令塔が不在。これが国民を苦しめることになります(今回の原発対応のように国際社会にも迷惑に?)。政治主導の必要性はそこにあるはずなのですが。しかし、全体を鳥瞰できるスタッフが集まるはずの国家戦略局は民主党政権は取り下げるという。