(トップ育成システム)「争点形成能力」と「連合体形成能力」と「捨て身の覚悟」 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

(トップ育成システム)「争点形成能力」と「連合体形成能力」と「捨て身の覚悟」

このコラムの結語である「世論調査に表れた『軽い人気』を選出基準とする総裁選は未曽有の危機を招いただけで、限界だ。自民党の自己修繕能力が大いに問われる」に対して、自民党はしっかりと答えを出さねばならない。


平成になってから13人の首相が誕生しているが、2代続けてこれ程短期だったのは、非自民党の細川、羽田首相以来のことは確かである。しかし、その前に5年半に及ぶ戦後歴代政権第2位の長期政権となった小泉政権が存在している。


私は、小泉総理が重要閣僚や党の役職でリーダーとしての資質が磨かれたとは思わない。


もはやそういう時代ではない。


では、小泉総理のリーダーシップの本質は何だったのか。


私は「争点形成能力」と「連合体形成能力」と「捨て身の覚悟」だと思っている。


「郵政民営化」という、当時は誰もが無理だと思う争点を形成し、竹中さんという専門能力のある人を添えて「無から有」を生み出し、たとえば「竹中さん」と「財務省」という“ライバル同士”の連合体をつくりあげた。


この連合体の接着剤になったのが、小泉総理の「捨て身の覚悟」だ。


「争点形成能力」と「連合体形成能力」と「捨て身の覚悟」


最低限、この三位一体がなければ次の時代のリーダーになれない。


小泉さんの時代からさらに時代は進んでいる。


リーダーが政治を変えるのではない。民意が政治を変える。


小泉総理の「死んでもいい」という覚悟を、民意が評価して05年の選挙結果となった。


05年の選挙で、国民が政治を変える主導権を握ったのだ。


これから、国民が主役となり政治に参画する「運動体」をどうつくるか。


リーダーのあり様は変化している。国民の政治参画のために政治家が捨て身になるときだ。


今、05年の民意の民意に育てられた中堅・若手は、小泉構造改革路線という霞が関との戦いを通じて鍛えられ、育成されている最中にある。


小泉さんが党内少数派として鍛えられたのと同じだ。必要なのは、


「争点形成能力」と「連合体形成能力」と「捨て身の覚悟」


だ。中堅・若手の改革派議員は、とくに「連合体形成能力」を磨いていただきたい。


改革派は分裂する宿命にある。しかし、国民のために、絶対に改革派は分裂してはいけない。いまこそ、連合体を形成しよう。(12月24日記)


(参照記事)毎日新聞の「視点未曾有08」に松田喬和・論説委員が「政権放り出し」「トップ育成システムの崩壊」を書いている。


「昨年に続き今年も政権が交代した。07年の参院選で自民党は敗北し、衆院と参院で多数派が異なる『ねじれ国会』への有効な対応が見いだせず、事実上の『政権放り出し』だった。


平成になってから、13人の首相が誕生しているが、2代続けてこれ程短期だったのは、非自民の細川護煕、羽田孜首相以来だ。リリーフに立った麻生太郎首相も、毎日新聞の調査では誕生後わずか1カ月で不支持が支持を上回り、その後も支持率の下落に歯止めはかからない。


55年の保守合同で誕生した自民党の歴史は派閥抗争史でもあった。『党中党』的な派閥は金権政治の温床となるだけでなく、非公式な集団ながら政策決定過程にも関与し、不透明な政治を増長させた。自民党の分裂を契機に93年に非自民政権が生まれ、翌年には衆院に小選挙区制が導入された。党営選挙が当たり前になり、派閥の出番は少なくなり、急速に弱体化した。派閥の領袖が総理・総裁候補の一大要因ではなくなった。


半面、派閥の衰退で自民党の指導者育成機能も失われた。派閥内での“階級”を昇格する間に重要閣僚や党の要職をこなし、リーダーとしての資質は磨かれた。ところが、派閥に代わる新たな育成システムも出現していない。安倍晋三元首相も福田康夫前首相も、閣僚経験は官房長官だけだ。


議院内閣制のわが国では、米大統領のように若手リーダーの衝撃的なデビューは極めて困難な環境にある。人材発掘には、米大統領選とまではいかなくとも、総裁選期間を延長し、候補者の資質を多くの国民に吟味してもらうことも一案だ。


最近の自民党内では派閥よりも世代間の確執が目立つ。反麻生的な言動が際立ちオールド世代から批判を浴びている塩崎恭久元官房長官は、幕末の「安政の大獄」を例に引き、反論する。


『弾圧で結果的には人材が欠如し、倒幕を早めた』と。『中央公論』12月号に掲載された野口武彦氏の『政体の末期に人材が払底するのはなぜか』を連想、読み直した。幕末では老中職が次々に取り換えられた。続出する平成紀の短期政権を対比し、野口氏は『政体の末期にはまず支配層から人材が払底する』『1つの政体が存続するか否かは、支配層の自己修繕能力の有無に関わっている』と結論づける。世論調査に表れた『軽い人気』を選出基準とする総裁選は未曽有の危機を招いただけで、限界だ。自民党の自己修繕能力が大いに問われる」