にほんブログ村
ブログランキングに参加しています
励みになりますので、クリックお願いいたします。
事務員 中野咲樹
先日、所内で、離婚判例勉強会を行いました。
数年前から毎年定期的に行われている勉強会でして、新人弁護士が入るタイミングで行っています。
「離婚判例ガイド」をテキストとして、4回に分けて、離婚の判例について新人弁護士をチューターとして、離婚担当事務スタッフ等で検討していきます。
第1回目は【離婚の成立】について検討しました。
法律で定める離婚原因とは?
裁判上で離婚をするには、法律で定める離婚原因が離婚請求する相手側にあること、夫婦の婚姻が破たんしていることが必要になります。
法律(民法770条)で定める離婚原因には、次のものがあります。
-
配偶者による不貞行為があったとき
-
配偶者から悪意で遺棄されたとき
-
配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
-
配偶者が強度の精神病にかかって回復する見込みがないとき
-
その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
1から4については、割と明確な基準がありますが、5については、裁判官が一切を考慮して決定します。(ですので、性格の不一致、モラハラ、DVなどを理由に配偶者へ離婚を請求する場合はこの5項に該当するか否かで決まります。)
有責配偶者からの離婚
第1回目の今回は有責配偶者からの離婚について検討しました。
有責配偶者とは上の1から5の離婚原因を作り、婚姻関係を破綻させた人のことです。
つまり、1項だと不貞(巷でいう不倫)ですし、2項だと悪意の遺棄(婚姻費用の未払い等)をした側からの離婚請求のことをいいます。
最高裁昭和27年2月19日判決以降、「婚姻が破綻している場合でも、破綻について責任のある者(有責配偶者)からの離婚請求は信義誠実の原則に反し、認めない」という立場を裁判所はとっています。
しかしその一方で、有責配偶者からの離婚請求であっても以下の3つの要件が満たされる場合は離婚をある程度認めていました。
- 夫婦の別居が相当長期に及んでいること。
- 夫婦間に未成熟の子がいないこと。
- 相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に苛酷な状況におかれることがないこと。
※この3要件のほかにも一切の事情を含めて総合的に判断するので、常に3要件全てを満たしている必要があるとは限りません。
未成熟子がいても有責配偶者からの離婚請求が認容された判例
今回、勉強会の中で検討した判例の1つに有責配偶者からの離婚請求について、未成熟子がいても離婚が認容されたケース(大阪高裁平成19年5月15日判決・判タ1251号312頁)
がありました。
ケースの概要は以下の通りです。(確定した判決日を基準に修正しています)
- 21年前 婚姻
- 19年前 長男誕生
- 17年前 次男誕生
- 17年前 夫がC子さんと関係を持つ
- 13年前 夫が家を出て別居
- 8年前 夫がC子さんと同居し内縁関係
- 2年前 離婚裁判第1審→離婚認められず
- 現在 離婚裁判第2審→離婚判決
※夫は2年前に裁判を提起する前にも、妻に対し4回の離婚調停、1回の離婚訴訟を提起していました。
第1審では離婚は認められませんでした。裁判所の言い分としては、以下の通りです。
- 相当長期間の別居だが、未成熟子2人(いずれも病弱で、その養育費の他に高額の医療費負担が必要になる可能性がある)がいること
- 妻は、パートであり失職の可能性があること
- 夫は過去に長期間婚姻費用の支払を滞納したこともあり、今後の養育費の支払が確実とは言い切れないこと
- 夫からの慰謝料額(150万円)は低額であること
- 夫は妻に分けられる財産がないと主張していること
しかし、控訴審の第2審では、離婚が認められました。裁判所の言い分としては以下の通りです。
- 約13年の別居期間があること
- 子どもたちが高校生に成長し、経済面以外には離婚によって大きな影響を受ける可能性は低いこと
- 夫が離婚慰謝料150万円が支払われること
- 子どもの大学進学費用150万円の支払を約束されていること
この判例から有責配偶者からの離婚について以下の理解が深まりました。
- 有責配偶者からの離婚請求の場合、未成熟子の存在は、離婚請求棄却する大きな考慮要素となること
- 一方で、未成熟子が存在していても、離婚により未成熟子に心情面や経済面での影響があるのかを具体的に検討することが必要なこと
- 経済面では、離婚を拒否している側の具体的な生活状況、収入状況に加え、慰謝料の支払いや特別に加算された養育費の支払いなどをすることで離婚が成立されやすくなること
今回の勉強会に参加して、離婚を扱う弁護士としては、相談時に具体的な事実の聞き取りや離婚後の方針を考える必要があるなあ、と強く思いました。
また、第1審判決では「慰謝料150万は低い!」と言われていたのに、第2審判決ではそれが一定程度評価されています。その時の裁判官が誰になるのかも1つの要素だといえます。
にほんブログ村
ブログランキングに参加しています
励みになりますので、クリックお願いいたします。