(前回の続き)
やがて、谷村新司さんやさだまさしさん、堀内孝雄さんらが曲を提供、いちずに恋に生きる少女の歌から大人の歌へと変貌していった。
『秋桜』は、明日嫁ぐ娘と年老いた母が縁側で日向ぼっこしながら積もる思い出をめぐらす歌。誰もが涙ぐむ名曲だ。
『いい日旅立ち』は、子どもの頃の父母との思い出を胸に旅出す歌。旧・国鉄のCMソングとして流れた大人の歌だ。
『愛染橋』は、プロポーズされて結婚を受け入れるべきか戸惑っている女性の歌。演歌のような雄大さがある。結婚生活に自信がなくて決心がつかない控えめに生きてきた女性、でも彼と一緒に暮らしたい思いもほとばしる。「結婚なんて旧い(古いと同じ意味)言葉に縛られたくなくて」という歌詞が、当時としては先進的な家庭観結婚観だったので世間的に衝撃的だった・・・と、子どもなりに記憶している。
後半には作詞・阿木燿子、作曲・宇崎竜童コンビが増えていく。『プレイバックpart2』や『ロックンロール・ウィドウ』、『イミテーション・ゴールド』、『絶体絶命』など、男に縛られないで生きる自由奔放な女性が歌われた。
『乙女座 宮』は「銀河大陸横断鉄道」に乗って銀河系を彼氏と旅をするロマンチックな歌・・・なのだが、そう見せかけておいて最後は、星占いでおなじみの星座を歌詞に並べておいてそれは、自ら恋しては振って見せるという、次々と男を乗り換える女の恋模様だったというどんでん返しを見せる。軽い裏切りに合った気分にさせてくれる歌なのだ。
『夢先案内人』はパステルカラーの絵のような童話の世界がムードたっぷりに広がる歌。夜明け前・早朝の気だるい感じがなまめかしい。一方、『しなやかに歌って』はレコードが回り続けているイメージ、軽やかな明るい曲だ。
『横須賀ストーリー』は「これっきり これっきり もうこれっきりですか~」と繰り返すのが印象的な歌。私も当時、子どもだったが、子どもたちは「これっきり これっきり」というフレーズが面白くてそこだけ、ちょっとふざけながら歌っていたものだ。何がこれっきりなのかも知らずに。知らなくてもノリで歌えたものだ。
百恵さんは、恋にうぶな女の子の心から大人のムード歌謡、さらに嫁入り前の娘の心境まで実に幅広く歌いあげ、どれもが名曲となるほど豊かに表現した。華々しく咲き乱れ、燃えるように咲き狂い、そして短くあっという間に散っていった。現役期間はわずか7年半だった。自ら引いて、引退以降、いっさい顔を出すことはなかった。すがすがしいほどの潔さだった。
引退コンサートの最後に、舞台にマイクを置いて去るという演出があるが、百恵さんが最初にやったものだ。伝説となり、その後、真似されるようになった。
最後の歌も阿木・宇崎コンビ『さよならの向こう側』。あなたへの感謝の歌。あなたとは愛する夫・三浦友和さんのことか、それとも支えてきてくれたスタッフやファンたちのことか? 百恵さんのお別れメッセージそのものという歌だった
つづく