(前回の続き)
山口百恵さんの歌はどれもわかりやすく女性が共感できる歌ばかりだ。万人に、この歌は何が言いたいのかわかるものでなくてはいけないと思う。最近は、何べん読んでも意味さえもわからないような歌が多くなってはいないか? 見習ってほしいものだ。
1960年代から80年代にかけて放送されたNHKの番組に、作詞作曲のオーディション番組があった。「あなたのメロディ」というタイトルの番組。素人(一般)募集でエントリー、作詞か作曲、または両方でオリジナルを持ち寄り、それをプロの歌手がアドリブに近い状態で楽譜を見ながら歌い、それを聴いて歌詞と曲について審査員が批評した。北島三郎さんの『与作』はこの番組で誕生した。
私がまだまだ子どもで、あまり覚えてなく、たまに見ていた記憶があるが、もっとも印象深く記憶に残っているのはひとつだけ。歌詞の批評で、歌詞の中に英語が入っていて、意味なく英語を入れるな! とダメ出し、叱られているシーンがあった。当時、歌謡曲で、英語まじりの歌詞の歌が現れ増えてきた頃だったのでは? と思う。まるでブームのように浮かれた感じで英語のフレーズが入り込んできていた。が、素人が安易にブームに乗って英語を使うことには抵抗感もあったのだろう、審査員に厳しく叱られていた。大衆がパッと聞いて、何を歌っているのかわかるものでなくてはいけない。
その点、例えばひとつ挙げれば、百恵さんの曲『赤い絆(レッド・センセーション)』は面白い。
彼氏が別の彼女を作って失踪、行方知れず。いままで尽くしてきたのに手のひらを返されて、絶対許さないと怒っている彼女の歌。・・・なのだが、最初から読んでいくと徐々に状況が見えてきて彼女の憤り、怒りが理解できていくようになっている歌詞なのだ。歌詞を検索して読んでいただきたい。
たとえば、「涙をかくした真っ赤なコート」と歌詞。つまり、真っ赤なコートを着ていて涙を隠している彼女がいて、そのあと、「あなたを愛した証しの色よ」と歌うので、それでわかることは、
ああ、彼氏は赤色が大好きで、デート時には赤い服を着てほしいと彼氏がおねだり。彼女(歌詞上で私のこと)は大好きな彼が喜ぶならと真っ赤なコートを買ったんだな・・・と。
(「あなたを愛した・・・」とあるから、彼氏からのプレゼントではなかろう。彼女(歌詞上の私)が無理してでも買ったのだと解釈)
「許せない 電話をかけてもなしのつぶてね」
「許せない あなたの心がつかめない」
彼の元へこれから押しかけるのか、はたまた行方知れずで探し回っているのか、人混みの中をぬうように走る怒りの表情の彼女の服装は、彼氏に見せびらかさんばかりに真っ赤なコートなのだった。
読むにつれて彼女の心境が写真のごとくあざやかに浮かび上がる。
歌詞としての表現の面白さだ。とても詩的なのだ。鮮やかな場面描写、ヒロインの心境の細やかな描写とその変化・・・百恵さんの曲は皆、わかりやすくて魅力的な歌詞ばかりだった。
いまも変わらぬ人気の山口百恵さん、この表現の豊かさも百恵さんの魅力なのではないだろうか。
いや、百恵さんの歌だけではない。昭和の名曲はそういう歌曲ばかりだった。だから、平成の若者たちにも支持されているのだ