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本の虫凪子の徘徊記録

新しく読んだ本、読み返した本の感想などを中心に、好きなものや好きなことについて気ままに書いていくブログです。

【再読】  荒木飛呂彦『STEEL BALL RUN ジョジョの奇妙な冒険Part7』5~9 集英社文庫(コミック版)

 

前回の続きです。

本日はジョジョ7部、文庫版5~9巻までを再読しました。

 

以下、内容についての記載あり。未読の方はご注意ください。

 

ようやく私の7部最推しが登場です。

ホット・パンツ!!好き!!
3rd.STAGEゴール前でのジャイロ、ディエゴ、ジョニィの壮絶な競り合い、からのしれっとトップをかっ攫っていたホット・パンツが本当に格好良い。レースを途中でリタイアしてしまったのが残念です。本気で走ったら優勝も夢じゃなかったと思いますが、まあ彼女の目的はあくまで遺体の方ですからね。本職も馬乗りではなく修道女ですし。
彼女のスタンド能力「クリーム・スターター」は肉体を変幻自在のスプレー状にする力で、攻撃・治療・変装と応用の幅が広い、スタンドの中でもかなり使い勝手の良い能力です。特に治療に関しては肉を吹き付けるだけで済むぶん、クレイジー・Dやゴールド・エクスペリエンスよりも使いやすそうです。攻撃力はともかく、汎用性では上なのでは。実際、作中ではほとんど回復アイテムのような扱われ方で、怪我をするたびにジョニィが「ホット・パンツを探せ!!」と叫んでいます。
9巻でルーシーの窮地に駆けつけたホット・パンツはちょっと格好良すぎましたね。遺体目当ての打算的行動だと分かっていても痺れます。もうヒーローじゃん。
あ、あと似たようなシチュエーションでルーシーを助けに来てくれたマウンテン・ティムも格好良かったです。黙祷。彼のスタンドもかなり好きでした。

6巻後半辺りから危ない綱を渡り始めるルーシーには本当にドキドキさせられます。まだ十四歳だというのに夫のために命がけで大統領に挑んで、すごい度胸です。流石は旧姓ペンドルトン。勇ましい。
そしてこの辺りから大統領もラスボス感を出し始めてきます。最初は太っていたのにどんどんイケメンになっていく。
大統領が動き出してからは、レースよりも遺体集めの方がメインストーリーになっていきます。

バトルで好きなのは6巻のリンゴォ戦、8巻のサンドマン戦とシュガー・マウンテン周辺です。
リンゴォとジャイロの決闘は男同士の勝負という感じがアツい。しかも撃ち合いというアメリカンスタイルなのが最高です。
サンドマンとの戦いはかなりギリギリで、最後にホット・パンツが傷を治してくれなければ危ないところでした。サンドマンは初期よりちょっと悪人顔というか、覚悟を決めた者の顔になっています。あんな美人なお姉さん残して死んじゃうなんて。姉不幸者!!
シュガー・マウンテンのエピソードは全編通した中でも特に好きな部分です。タブーを犯すと罰を受けるタイプの能力は緊張感があってワクワクしますよね。スタンドではないですが、4部の「振り向いてはいけない小道」とかの設定も好きでした。
シュガー・マウンテンに言われた通り、ルールを守ってジョニィが遺体を自ら手放し、その後雪の中で二人がワインで乾杯する一連の流れが美しすぎます。遺体欲しさに一度はジャイロを見捨てかけたジョニィが、それでも最終的には友人を救うため遺体を敵に渡しました。よく決心したなジョニィ、偉い。

9巻は新たな追手のウェカピポとマジェント・マジェントが登場し、ジョニィ、ジャイロとの戦闘に入ったところで終了します。
ウェカピポは知的で義理堅い良キャラで、個人的にもかなり好きなので、ここからの活躍を見るのが楽しみです。大統領戦まではまだもう少しあったはず。「左半身失調」とかいうオシャレすぎるデバフは何度読んでも刺さります。

やはり単行本で一気読みするとスピード感を味わえるのが良いです。全16巻なので、これでまだ半分過ぎ。
続きはまた別日に読みたいと思います。

それでは今日はこの辺で。
 

 

 

 

【再読】  荒木飛呂彦『STEEL BALL RUN ジョジョの奇妙な冒険Part7』1~4 集英社文庫(コミック版)

 

本日はこちらの作品を再読しました。

ジョジョ7部『スティール・ボール・ラン』です。かなり久しぶりに読み返しました。

文庫版は装丁にかなり気合が入っています。カラフルでお洒落な愛蔵向きのデザイン。

こちらは全16巻なのですが、とりあえず今日は4巻まで。

それでは早速、内容について書いていきたいと思います。

 

以下、内容についての記載あり。未読の方はご注意ください。

 

この序盤のスピード感、何度読んでも最高です。

舞台は1890年のアメリカ。
物語の主軸となるのは、スティール氏によって開催された、乗馬による北米大陸横断レース「スティール・ボール・ラン」。
サンディエゴからニューヨークまで、総距離約6000㎞を何日もかけて走り続ける過酷なレースで、優勝賞金は5千万ドル(60億円)。一攫千金、命がけのアメリカンドリームです。
このレースの参加者にはプロのジョッキーの他にアマチュアやカウボーイもおり、ラクダや自動車(この時代にはまだ珍しい)での参加者、騎乗せずに走る例外も含めて総数は3852名。スタート前のビーチに馬と騎手がズラっと並んでいる光景はなかなかに壮観で、もうこの時点でわくわくします。
ただ、途中からはレースよりも、コース上で行われる「聖なる遺体」探しやそれをめぐるバトルの方に焦点が当てられていき、騎手同士の競り合いからいつものスタンドバトルになります。

主人公ポジションの人物は二人。ジャイロ・ツェペリとジョニィ・ジョースター。相棒のような関係で、二人で共にレースを進んでいきます。


ジャイロは登場シーンから格好良い。その金歯なに?とかバックルやばいな、とか色々思う所はありますが、それでも、というかそこを含めて本当に格好良い。ナイスデザイン。オーラが凄い。
初期ジョニィはちょっとガラが悪くて余裕のない感じが、ドン底から這い上がる系主人公感があって◎。過去のシーンを初めて読んだときには「本当にジョースターか!?」と思いました。今までのジョジョたちとはまたタイプが違うというか、俗っぽさ、人間らしさがより強いキャラクターのように感じます。ジョセフとジョルノを足して割ったらこういう雰囲気になるかな?という感じ。善人寄りで正義感もありますが、硬派さや高潔さはやや薄めな印象。まあ他のジョジョも言うほど硬派で高潔か?という気もしますが。青年期ジョナサン以外。

文庫版1~4巻はディエゴの恐竜化までですね。ガラガラヘビと奇行の後。1部ディオや3部DIO様も大概ですが、ディエゴも迷ゼリフが多くて愉快です。何となく、この三人の中だとディエゴが一番人生楽しんでそう。
3巻の、ブンブーン一家戦からジャイロの過去編を挟みつつオエコモバ戦の流れが特に好きです。どちらも序盤の敵にしては結構厄介。ジャイロと少年のエピソードは芸術的で美しい。
4巻のシュトロハイムはラクダのアブドゥル同様ファンサービス枠なんでしょうかね。2部のシュトロハイムさん好きだったので初見時はちょっと嬉しかったです。
それから、ワイアーのポーク・パイ・ハット小僧(いつも名前を忘れる)もかなり面倒な敵だったと思います。スタンドの見た目も戦い方もなかなか洒落ていて面白い。ジャイロを助けるためにジョニィが泣きながら左腕の遺体を差し出すシーンは何度読んでも感動します。

大統領も登場し、ここから本格的に遺体争奪戦が始まる、というところで終わりです。
続きはまた別日に読みたいと思います。
……最推しがまだ名前しか出てこない…。

それでは今日はこの辺で。
 

 

 

 

【再読】  田辺聖子『おちくぼ姫』 角川文庫

 

本日はこちらの作品を再読しました。

平安版シンデレラ・ストーリーと名高い『落窪物語』。こちらはその途中までを現代語訳し、訳者の新解釈を加えて再編した作品です。文章はだいぶカジュアルで読みやすくなっています。
継母に虐められる薄幸の姫君・おちくぼが名門生まれの超絶イケメン・右近の少将と恋に落ち、困難を乗り越えて結ばれる恋愛物語です。

それでは早速、感想の方を。

 

以下、内容についての記載あり。未読の方はご注意ください。


ヒロインのおちくぼは皇族の血を引くにも関わらず、継母たちからは酷い扱いを受け、着る物や食べる物にも不自由するような下女同然の暮らしぶりを強いられていました。落ち窪んだみすぼらしい部屋に住んでいることから付いたあだ名が「おちくぼ」です。普通に悪口ですね。

そんな彼女に、右近の少将は遊び半分で近付きます。しかし、一目見てすぐに恋に落ち、その後は真剣におちくぼを愛するようになります。
家格に縛られた窮屈な結婚、そして一夫多妻制が常識のこの時代に、「わたしのほしいのは、あなただけです。」と言い切る右近の少将。びっくりするくらい情熱的です。
そして本当に他の恋人を作らず、彼女一人を愛し続けたところが立派です。「帝からご皇女さまを賜るとご沙汰があってもご辞退する」とまで断言しました。聞いてるか光源氏。

私が一番好きなキャラクターはおちくぼの乳姉妹の阿漕ですね。
姫君の唯一な絶対的味方です。献身的におちくぼの世話を焼く、賢くて気の強い黒髪美少女。大正義。
夫の帯刀(こちらは右近の少将の乳兄弟)と共に物語を回す立ち位置ということもあり、表情豊かで生き生きとしたキャラクターとして描かれています。あと滅茶苦茶フットワークが軽い。『アラビアン・ナイト』のモルジアナと並ぶレベルの活躍を見せてくれます。作中のMVPは間違いなく彼女でしょう。正直、性格はそんなに良くはありませんが。

憎めないキャラの典薬の助も、個人的には結構好きです。腹下しの話を聞いて思わず笑ってしまう継母はちょっと可愛かった。
それから、兵部の少輔と四の君のカップルも好きです。おちくぼと少将のカップルより萌える関係性だと思います。この兵部の少輔は多分出家しないでしょうね。
 

そして最後は和解からのハッピーエンド。これが良い。シンデレラはどのバージョンでも継母たちとは和解していなかったような気がしますが、『落窪物語』はおちくぼが幸せになった「その後」をしっかり描き切ってくれる点が好きです。

原文と違う部分はいくつかありますが、これはこれでとても面白い作品です。古典の『落窪物語』を知っている人も知らない人も、楽しむことができるんじゃないでしょうか。
久しぶりに読み返しました。

それでは今日はこの辺で。
 

 

 

 

【初読】  川村裕子『はじめての王朝文化辞典』 角川ソフィア文庫

 

新年初投稿になります。

十二月は色々と生活が慌ただしく、ブログ更新どころか本を読む時間すら無かったのですが、年が明けてようやく一段落しました。やっと読書の時間がとれそうです。

ということで本日はこちらを読んでみました。家族に勧められた一冊です。

表紙から分かる通り、平安時代の文化を解説している書籍になります。平安京好きにはたまらない。

それでは早速、簡単に感想を書いていきたいと思います。

 

以下、内容についての記載あり。未読の方はご注意ください。

 

項目が多いので文庫本としてはやや厚め。タイトルには辞典とありますが、一般的な辞書の書き方ではなく、文章による解説という形になっています。
平安時代の衣食住や風俗について事細かに紹介されている、ガイドブック的な一冊です。視覚的な表現が多いのが特徴ですね。
『蜻蛉日記』『源氏物語』『枕草子』『和泉式部日記』などの古典作品を引用した部分が多く、古典の作品論・作品解説なども兼ねているのが面白いポイントでした。ただの用語辞典よりも分かりやすく、印象にも残りやすいです。
巻末の参考文献の量がえぐい。
重要箇所が太字になっているため最初は少し読み辛く感じたのですが、それもすぐに気にならなくなるくらい面白かったです。

内容は大きく四つの章に分けられています。
Ⅰ.王朝の空間
Ⅱ.王朝のライフ・サイクル
Ⅲ.王朝のファッション
Ⅳ.王朝の日常生活

第一章「王朝の空間」は、家屋や家具についての解説です。
第二章「王朝のライフ・サイクル」は出産や成人の儀式、結婚、葬式など人生の節目となるイベントについての解説となっています。
第三章「王朝のファッション」は文字通り平安時代の服飾に関する解説。男性・女性それぞれの装束から、髪やお化粧、薫りについてなどが取り上げられています。
最後の、第四章「王朝の日常生活」は、一番容量のある章です。全ページ数のほぼ半分近いボリューム。一年のイベント暦から始まり、食生活、音楽と舞、娯楽、病気、信仰と続きます。
イベント暦は月ごとのイベント日が一つずつ詳細に解説されているのでかなり読み応えがあります。
二月の「釈奠(せきてん)」というイベントは耳馴染みがなかったので勉強になりました。孔子とお弟子さんたちを祀る儀式だそうです。ふむふむ。

どの項目も具体的な例を挙げつつ解説されているので、こちらとしても色々と想像しやすく、より平安文化への理解が深まったような気がします。
また、古文を多く引用しているところから、古典作品を読み解くための辞典としても非常に有用だと思います。
例えば、女性の装束について解説している項目。
ここでは『紫式部日記』からの引用で、「裳と唐衣を着けた倫子と、袿と小袿を着けた彰子(倫子の娘)」の親子の姿が描かれています。正装している母親に対して、天皇の妻であり皇子を産んでいる娘の方は普段着。ここから、平安時代の身分の在り方や、装束に表れている彼女らの身分意識について読み解くことができ、引用元である『紫式部日記』についての理解がより深まることにも繋がります。
まさしく辞典として正しい在り方。全ての項目が、このように古文と一緒に解説されています。イラストも満載で分かりやすく、古典作品に触れる際には本当に役立つ一冊だと思います。

定価が1450+税と文庫本にしてはそこそこお値段の張る部類ではありますが、それだけの価値はある作品でした。通読して楽しい辞典です。平安文化好きには結構刺さるのでは。

興味のある方はぜひ。
それでは今日はこの辺で。

 

 

 

 

【初読】  手塚治虫『マンガの描き方 似顔絵から長編まで』 光文社知恵の森文庫

 

本日はこちらの作品を読んでみることに。
漫画の神様・手塚治虫先生による漫画の描き方講座です。
小学三年生の時、なぜか手塚治虫にハマって作品やら伝記やらを何度も繰り返し読んでいた記憶があります。
ちなみに、一番好きな手塚作品は『ブラック・ジャック』。ピノコ大正義。『火の鳥』は宇宙編派ですが、その前のヤマト編も好きです。カジカちゃんが可愛いので。

それでは早速、内容について書いていきたいと思います。

以下、内容についての記載あり。未読の方はご注意ください。

読んでみると、手塚先生の漫画論では、絵の上手さやリアリティのある設定よりも、パワフルで支離滅裂で、漫画でしか表現できないような荒唐無稽な「面白さ」の方を重要視していることが分かります。小綺麗に纏まっているものよりも面白いものの方が良い、という意見のようです。確かに、手塚先生の漫画はいつでもパワフルですよね。
ただ、先生の場合は丁寧に描く時には絵もストーリーも本当に丁寧に描かれていて、そこが凄い所だと思います。
ギャグとシリアスの塩梅が天才的。

第一章は、絵の描き方についての解説です。
画材の使い方やキャラの描き方、動かし方、構図などの基本的な事について教えてくれます。
特徴を捉えた似顔絵の描き方を文章とイラストで丁寧に説明してくれるのですが、そこで例として描かれている人々の表情の多彩さには驚きました。手塚先生は表情の作り方がとんでもなく上手い。キャラのリアクションがオーバーなので感情がダイレクトに伝わってきます。そして動作も同じ様にオーバーに描かれているため、インパクトがあって分かりやすいです。だからキャラクターがこんなに生き生きと見えるんでしょうね。納得です。

第二章はストーリーとなる案の考え方についてです。
四コマ漫画の作り方や、「面白さ」を作るコツなどが纏められています。私は漫画を描かないのでちょっと分からないのですが、何となく、この行程が一番大変そうだなと感じました。アイデアが無ければ描くものも描けませんよね。想像力が皆無だと漫画家には向かないようです。

第三章は漫画全体の作り方についてです。
ストーリーの上手なたて方やテーマの広げ方。この辺りは作文の書き方などにも応用できそうな気がします。
メインテーマはしっかりと決めておき、作中では匂わせる程度にすること(前面に出しすぎると鼻持ちならなくなる)など、漫画だけでなく小説や脚本などを書く上でも大切なことだと思います。
そして手塚先生曰く、長編漫画を描く時に一番大切なのは、「最後まで飽きずに描ききること」だそうです。これが出来ない人が意外と多いとのこと。かくいう私も、恐らくはプロットを作って満足してしまうタイプです。漫画家には向いていないのかも。

全編通して、ユーモアたっぷりで分かりやすい文章なので読んでいて楽しかったです。
イラスト満載なのも最高です。
読んだあとは何となく、自分でも漫画が描けそうな気になりました。短編とか四コマにちょっとだけ挑戦してみようかな、なんて思ったり思わなかったり。
手塚先生の漫画愛に溢れた一冊です。興味がある方はぜひ。