命見つめて | nagarenotokiのブログ

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四季折々、自然の姿に感じること


それは 仕事納めの12月30日の事だった
朝から 1人の男性患者さんが
体調不良を訴えていた
しかし認知症もある その人の訴えは
的を得ず どこがどうなのか
本当に体調が悪いのかさえも
定かではなかった
病院はどこも 休診となっていたが
当直医に診てもらおうと 
その人を連れて 病院に行く
診てくれた当直医も 首をかしげて
「念のために」検査と点滴をしてみよう 
ということになる

点滴中も さまざまな訴えを口にするその人
それらの訴えの中に 一言だけ気になる言葉があった
これまでの訴えを 1つ1つ思い返してみた
・・・もしかしたら・・・!
それは直感的なものだった
すぐに その部位を見せてもらった
その部位は 異常な様相を呈していた
やっと その患者さんの苦痛の原因がわかった
すぐに当直医に知らせなければ・・・と思った時
当直医があわただしくやって来た
検査結果の異常を知って 駆けつけたのだ

それから その患者さんは
緊急手術を受けるために 救急車で
転院することになった
その時になって 患者さんはやっと
痛みをはっきりと 口に出来るようになっていた

転院先で さらに検査が行われ
手術室に向かったのは 夜9時も過ぎていた
その時 患者さんは言ってくれた
「Sさん、ありがとう。本当にありがとう」と
その人が 私の名を呼んでくれた事に感動した
どこが痛むのかさえも 言えなかった人なのだ
「Hさん、がんばってくださいね。
 手術を受けたら 楽になりますからね」
そう言いながら 涙が込み上げて来た

私は身をもって 教えられた
認知症だという 偏見を持って
患者さんを見てはならない
患者さんの言葉を 軽んじてはならない
何気ない言葉の中に キーワードは
隠されているのだと

私の仕事
それはかけがえのない命に寄り添い 支え守る事
 
この年も 命を見つめて