https://www.youtube.com/watch?v=g9ReXWwepVo
クリスマスの頃になると、広島県の上下町という中国山脈の山深い町に、「世界一のクリスマスツリー」を見に行ったことを思い出す。標高500m以上の翁山をクリスマスツリーに見立てて、たくさんのイルミネーションでひと山を飾り付ける「世界一のクリスマスツリー」。
初めて行ったのは10年前だっただろうか・・・。満天の星空の下、澄み切った空気の中、翁山のイルミネーションは美しく輝いていた。まるで空から星の代表たちが、地上を清らかにするために降りて来て、翁山から愛や平和の波動を送っている・・・そんな気さえした聖なる光の祭典だった。
クリスマスの頃になると、広島県の上下町という中国山脈の山深い町に、「世界一のクリスマスツリー」を見に行ったことを思い出す。標高500m以上の翁山をクリスマスツリーに見立てて、たくさんのイルミネーションでひと山を飾り付ける「世界一のクリスマスツリー」。
初めて行ったのは10年前だっただろうか・・・。満天の星空の下、澄み切った空気の中、翁山のイルミネーションは美しく輝いていた。まるで空から星の代表たちが、地上を清らかにするために降りて来て、翁山から愛や平和の波動を送っている・・・そんな気さえした聖なる光の祭典だった。
次の年のクリスマス。その冬は全国的にも大雪の降った大変な12月。その日も天気予報は「夕方から大雪」と告げていた。雪深い山脈を越えて、広島の山間部まで行くにはかなりの無理があった。「今夜は中止にしよう」・・・と何度も夫に忠告しても聞き入れず、不安な気持ちを抱えての出発だった。そして、1時間もしないうちに、道の両側は1m以上の雪に埋まっていた。何度も引き返そうと言う私の言葉も聞き入れず、そのうち猛吹雪に見舞われながらも、「せっかくここまで来たのだから・・・」と夫は前進し続けた。目的地に着いたが、そこは1年前とは打って変わって吹雪の山。光らしきものがかすかに見えるだけだった。
いったい何のためにはるばる来たのだろう。見物もそこそこに、早く帰らなければ。吹雪は確実にパワーアップしていた。
予想をさらに上回り、帰路は前も見えないくらいの横殴りの吹雪。空から湧いて襲いかかる雪に、前方の視界はさえぎられ、あっという間に積もる雪に車輪は取られて、運転は難航した。もちろん、道行く車など他には1台もいない。大雪の夜に外出をすることの愚かさを、雪の多い地の人々が心得ていないわけはなかった。私たちは雪を軽んじていたのだ。広島と島根の県境、おろちループのちょうど真ん中あたりで、ついに車は自然にエンジンが止まり、全く動かなくなってしまった。さっき見た電光板の気温はー7度。心の中で、こんな日に強行に出発した夫を恨んだ。
すっかり途方に暮れていた時・・・吹雪の中にライトの光が近づいて来た。必死の思いでその車を止め、恥ずかしながら事情を話した。車を停めてくれたその人は、まさにキリスト様のように親切な人だった。寒いのを厭いもせず、車を見てくれて、そして、エンジンを再び回転させるという奇跡を行ってくれた。そして、「私が先導しますから、そのわだちの後を付いて来てください」と言われ、奥さんは持っていたお菓子を私たちに下さって、まるでマリア様のように見えた。そして、そのご夫婦の家も素通りして、わざわざ安全な場所まで先導し続けてくださったのである。
それから春が来て、夫と私はおろちループに向かった。あの時のお礼を言わなければ・・・。あのキリスト様さながらの愛深い人はおろちループの観光センターの植木屋さんだった。その時買った姫りんごとコデマリ。姫リンゴは春が来るごとに純白の花を咲かせ、見上げるほどに大きくなった。その木を見るたび、あの無謀な山脈越えを思い出して、一人笑ってしまう。
そして、一生懸命私たちを助けてくれた人の姿を思い出す時、感謝と共に「親切のありったけを尽くしなさい」と教えられたような思いになるのだった。

