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野に曼珠沙華(マンジュシャカ)が 咲き乱れている
強烈な想いだけを一筋に伝えるように
茎だけが地下から伸びて来る
葉は一切ない
情熱的な赤
蘂(しべ)は奔放に花びらの外に広がる
その姿を まるで阿修羅のようだと
いつからか想って 見ていた
曼珠沙華はその身の内に 毒を持ち
誤って鱗茎を食すると
中枢神経に麻痺をきたして
死に至らしめる力さえ持つ
一方で彼岸の頃から開花し始めるので
「天上の花」とも呼ばれるという
阿修羅も ペルシャでは善神とされたが
インドでは 神にあらざる者とされ
悪神とみなされた阿修羅は
ビシュヌ神の円盤に切られ
刀、槍、棍棒でことごとく打ちのめされ
地上に血に染まって横たわった
そのことから 血なまぐさい戦闘が行われる場所を
「修羅場」というようになったと言われる
真っ赤な曼珠沙華の群落は
修羅場のようだ
思えば阿修羅は 私の中にもいる
善と悪は 常に内なる心の中に在る
どんな人もみな 心の中には阿修羅が住んでいるはずだ
道徳心 倫理観 常識 世の習い
そんなものでは片付けられない
割り切れない 置き所の決まらない想いを
背負いながら 歩いている
真っ赤に咲き乱れる曼珠沙華の前で
ひととき 善の仮面をはずしてみる
今回使用した画像はネットより拝借させていただきました。