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200?年7月
私は京都に向かう 電車に乗っていた
長い年月 想い続けていた男性との出会いに
胸をときめかせていた

彼の音楽と出会ったのは
19歳の秋のことだった
当時音楽業界は
ニューミュージックという 音楽が湧き起こり
たくさんのニューミュージシャンが 生まれた
そんな中で 突然私の耳に
飛び込んで来た 彼の曲
雷にでも打たれたような 衝撃を感じた
それはかつて 誰も思いつきもしなかった音楽だったのだ
ギターに琴 和太鼓 尺八
ロック調でありながら それは日本のものだった
オリエンタルロック
それが彼の音楽のジャンルだった
日本の神話を物語ったその曲が
私は いっぺんに好きになった
しかし 彼はほとんど無名に近いミュージシャンだった
友人に彼の話をしたことで
彼が深夜に5分程度の
短いラジオ番組をやっていることを知り
それから毎日 深夜のひとときが
最大の楽しみとなる
その中で 日本を愛する彼の深い思想を知る
だが その放送も終わりの時が来る
それからも 私は彼を探し求めた
雑誌 音楽関係 いつもチェックした
しかし 彼はもうどこにもいなかった
パソコンという 魔法の機械もない時代
消息は霧の中 どんなに探しても
見つけることは 出来なかった

カセットテープに吹き込んだ
私の好きな彼の音楽
やがて結婚し 子供が生まれ
子供と共に その音楽を聴いた
時々 せつなくなるくらい
彼のことを知りたいと想った
テープはとうとう 擦り切れてしまった
それでも 音楽は私の心に刻まれている
彼の音楽を知って 23年がたった
そうだ・・・インターネットで調べれば
何かわかるかもしれない
彼の名を検索すると 105件の情報があった
ちょうど彼は 自分のホームページを
立ち上げたばかりだったのだ
それによると 彼は現在アメリカのシアトル在住だったが
七夕の日に京都で 友人の追悼コンサートをするという

京都なら行ける
23年間も探し続けたのだ
行ってみよう 彼に会いに
私の気持ちはすぐに決まった つづく