年齢が55歳以上で帯状疱疹になったら「鍼灸」をして下さい。

帯状疱疹は後遺症が辛い疾患です。
帯状疱疹になって、高齢で、体力が落ちていると感じていたら、初期の段階で「鍼灸」を併用して下さい。(その際、鍼灸院に臨床経験の有無を確認して下さい。)
「鍼灸」では、圧痛点・罹患神経節の直刺と、疱疹に糸状灸(糸の様に細いお灸)をします。
皮疹の増殖を阻止し、帯状疱疹後神経痛を確実に防ぎます。
しかし、帯状疱疹の初期段階で鍼灸治療をする人は、余程、鍼灸にくわしい人でしょう。
皮膚症状が消えても痛みが残るようならば、この時点でも遅くはありません。すぐ「鍼灸」をして下さい。副作用も無く、治癒率はどんな治療法よりも一番高いと思います。
帯状疱疹は、水ぼうそう(水痘)のウィルスが原因でおこります。
水ぼうそうが治った後、このウィルスは三叉神経や脊髄神経の知覚神経節に潜伏しています(潜伏感染)。
その後、過労、免疫機能の低下などの誘因によって、ウィルスが再活性化し、帯状疱疹を発症します。
以前は、比較的高齢者における発症率が高く、老齢による体力や免疫力の低下が誘因とされてきましたが、近年では、20~30歳代での発症が増えていることから、ストレスも発症誘発要因の一つとされています。
まず、身体の片側(稀に両側)に神経痛の様な痛みが起こります。その4、5日後に同部位に虫に刺されたような赤い皮疹ができ、次第に水疱に変わります。その後、水疱がカサブタになって、約3週間くらいで治ります。
肋間神経(胸部)、坐骨神経(腰部)、三叉神経(顔面)などの神経系に沿って、ピリピリした痛みと、小さな赤い皮疹が身体の片側に出た時には、すぐ皮膚科を受診して下さい。
抗ウィルス薬が開発されています。
しかし、抗ウィルス薬は水痘・帯状疱疹ウィルスの増殖を抑制する効果しかない為、膿疱や潰瘍ができる時期になると効かなくなります。
早めの受診が重要です。
特に、鼻背部・鼻尖部・目と耳を結ぶ線上に皮疹ができた時は、最悪、失明する危険性があります。すぐに眼科を受診して下さい。
あごや耳に皮疹が出来た時は、顔面神経麻痺(ラムゼイ・ハント症候群)になる可能性が有ります。すぐ、耳鼻科・神経内科に行って下さい。
体幹に発症したものは、大体2~3週間もすれば疱疹も乾き、痛みも違和感も無くなるのが普通です。
ただ、あまり皮膚症状が酷いと跡になりますから、なるべく水ぶくれを破らない様にして細菌感染を防ぎます。
風呂は、かさぶたが乾くまでは湯船に浸からず、シャワーが安心です。
若い人にとっては、ほとんど心配のない疾患ですが、55歳以上の人は帯状疱疹後神経痛になる危険性があります。
帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹の疱疹が治った後に、神経痛様の痛みが残ってしまうものを言います。三ヶ月経っても痛みが続く時は、この疾患と考えて間違いないでしょう。
不愉快な痛みが毎日あり、その上、軽く触った時などに、鋭い電撃様の痛みが走ります。痛みの程度は、軽いものから夜も眠れない程まであります。
最悪の場合、その痛みは半永久的で止むことがありません。疱疹が治っているのに痛みが取れない時には、すぐ「鍼灸」をして下さい。
西洋医学では、薬・ブロック・レーザー・イオントフォレーシスなどがありますが、あまり有効な治療法はありません。現時点では「鍼灸」が最も有効と考えます。
「鍼灸」でも、時間経過したものは多少痛みが軽減される程度で、ほとんど治りません。
一番大事なことは、帯状疱疹になった時点で、帯状疱疹後神経痛にならない様に最大限の注意をする事です。
先ず、絶対に身体を冷やさない事です。風呂は身体を温めると思いがちですが、上手に入らないと結果的に冷える事になりますから、入らないか、シャワーが無難です。
それから、体力を落とさない事です。激しい運動や過食、過飲は避けて下さい。
疱疹が消えても、しばらくは注意して下さい。2~3ヶ月経って、痛みが無ければひと安心です。
長尾鍼灸院の臨床から
長尾鍼灸院が開業したのは、1977年、約40年前のことです。
昔から、「鍼灸」の帯状疱疹に対する治験は数多くあり、直後の治療は本当に良く効きます。
最初に発症した皮疹は、疱疹(水疱になった状態)に変化していきます。初期の時点であれば、疱疹に糸状灸を一壮づつ据えるだけで、皮疹の増殖を防ぎ、帯状疱疹後神経痛を確実に防ぎます。
一方、すでに帯状疱疹後神経痛になってしまった患者さんが、神経痛様の痛みを治療する為に来院されました。神経痛は「鍼灸」の得意科目です。
しかし、この疾患は神経の圧迫によって生ずる、いわゆる「神経痛」ではなく、帯状疱疹急性期の炎症によって、神経自体に強い損傷が生じたことで起きる痛みです。
何年も経過した例では、多少、楽になる程度で「鍼灸」の適応ではありません。
しかし、経験的に、6ヶ月以内であれば、完治とまではいかなくても良い結果が期待出来ます。
特に坐骨神経や肋間神経、後頭神経に沿った帯状疱疹は、時期が早ければ確実に帯状疱疹後神経痛を防ぎます。
1977年にエリオンとヒッチングスによって、抗ウィルス剤のアシクロビルが開発された時、帯状疱疹は速やかに治癒し、後遺症は出ないのではと思われましたが、早期に投与された場合でも、免疫低下の人には疱疹後神経痛が発症しています。
高齢で糖尿病・抗がん剤やステロイドの服用などで免疫力の低下があれば、早い時期に「鍼灸」を併用して下さい。
なお、三叉神経・顔面神経・前庭神経・聴神経領域に生じた帯状疱疹では重症化しやすく、それぞれ顔面神経麻痺(ラムゼイハント症候群)や最悪失明する事もあります。
「鍼灸」だけでは対応しきれない疾患です。早期に耳鼻科・眼科を受診し、出来れば「鍼灸」も併用することを勧めます。
その他、「鍼灸」は帯状疱疹に関係する様々な症状、頭痛、眩暈、耳鳴り、耳閉、味覚障害、顔面麻痺、排尿障害、尿閉、便秘にも対応します。やはり、早い時点での治療が必須です。
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