「扇受け」の解釈の一つ、両上肢で受けるからこそそれを活用して打つ。逃げ場のない技で強力に作用 | 中山隆嗣の「活殺自在」

中山隆嗣の「活殺自在」

武道と癒しを中心に、生き方、日々のことを綴ります。

 昨日の続きです。

 

 土曜日にしては珍しく(かた)」の分解・解説の稽古になりましたが、具体的には「二十四歩(にーせーし)」でした。

 

 この「形」は鳥の動作をベースにしていますが、その優美な動作の中に武術に応用できる動きがあり、その点を解釈して技を練っていくことが必要になります。

 

 その場合、「形」としての動作だけでなくその使い方も学ぶ必要があり、それが分解・解説の稽古となります。

 

 ならば最初からその方法を学べば良いのでは、思う人がいるかもしれませんが、武技を用いるだけの身体的な条件を備えていることが必要です。

 

 そのためには武術体の養成ということが必要になりますが、そのことは「形」稽古の大切な要件の一つになります。

 

 このブログではこれまで何度も「形」稽古は武術体の錬成と共に武技の伝承の意味がある、ということを述べてきましたが、今回もそういうところを再確認してもらうことになりました。

 

 だからこそ、「形」の分解・解説の後、第2部として「二十四歩」の稽古になったわけですが、今日は昨日同様、扇受け(おおぎうけ)」の用法例の稽古の話になります。

 

 この技の基本的なことは昨日のブログでお話ししましたので、今日は具体的な動作についての話に入ります。

 

扇受け 2

 ということで、まずご覧いただくのは上のイラストです。

 

 ここでは基本ということで、対峙している2名の様子は昨日設定した状態と同じです。

 

 受ける側は「内八字立ち(うちはちじだち)」で立ち、両拳を腰に置きます。仕掛ける側は「正整立ち(せいさんだち)」で立ち、中段を意識した構えになり、両者は対峙します。

 

 そこから仕掛ける側は「右中段追い突き(みぎちゅうだんおいづき)」で攻撃するわけですが、こういう稽古の時に意識しなければならない間合いや攻撃の際の際の迫力などは相手を倒すイメージが必要です。

 

 とは言っても、最初からそうしてもらうわけではありませんし、レベルによっても稽古時のアドバイスには違いがあります。それは昨日の場合も同様で、稽古ゆえのことです。ですから、実戦の時はそのリミッターを外し、全開で行なうことになりますが、そのような意識の使い分けは稽古時には不可欠です。

 

 こういうことをあえてお話ししのは、今日のテーマがそういう意識と関係があるからです。

 

 それを上のイラストに合わせてお話ししていきますが、まず再確認していただきたいことがあります。

 

 昨日アップしたイラストとの違いですが、その感じは間違い探しのクイズのような感じになります。

 

 攻撃する側の様子は同じ、受ける側の様子も同じだけど、そこから1ヶ所だけ違いがあり、それは「受け」として用いている上肢です。

 

 昨日の場合は右側、今日の場合は左側になります。

 

 突く側の上肢はいずれも右側ですので、前者の場合は尺骨側、後者の場合は橈骨側になります。

 

 接触時のベクトルと部位によってによってその後のコントロールにも違いが出てきますが、武技として稽古する時にそのことを念頭に置いておくと展開にも違いが出てきます

 

 こういうところについていくつかの視点からお話ししていますが、まず接触時に感じる感覚の違いがあります。

 

 仕掛け技の動きを見た場合、「突き」は外側から内側に向かって放たれることになりますので、尺骨側を受けた場合は流しやすく、比較的小さなパワーで対応できます。

 

 それに対して橈骨側から受ける場合、「突き」が持っている本来のコースからすれば逆らう方向からになりますので、一般的にはどうしても力技になりがちで、しっかり弾くような感じになることが多くなります

 

 その場合、接触部位となる小手の鍛錬が必要になるケースが多く、それに対応して基礎稽古の一つに「小手鍛え(こてぎたえ)」があります。

 

 裏を返せば、こういうところができていなければ技自体が形骸化するリスクがあるということであり、少しでもそれを低減させるためにはこういう稽古も鍛錬の一つと理解し、少々痛くても数をこなすことが必要です。

 

 ただ、見ているとこの稽古で小手が痛いという人はいませんでしたが、初学者がいる場合には見ることがあるため、あえてお話ししました。

 

 また、そういったことは受ける側の接触後の上肢のコントロールにも関係することになり、ここでは両者の前腕が触れた時に止まるようであってはならず、そこから相手の上肢が外側に押し開かれるような感じにならなければなりません

 

 その場合、上肢の筋力だけに頼るのではなく、下半身や腰、体幹部、中心軸といった全身的な身体操作の連携として行なうことが必要で、そうなればいわゆる力みの問題は解消されます。

 

 そういう意識で受けた後、反撃を考えることになりますが、タイトルからそれは「打ち」であることがお分かりになると思います。

 

 ただ、一口に「打ち」と言って複数の技があり、具体的に絞って意識しなくては中途半端な反撃で終わります

 

拳槌

 

 そこで具体的な技の話になりますが、「打ち」の場合、拳形とその用法の意識が重要です。

 

 今回は上のイラストに挙げた「拳槌(けんつい)」を用います。

 

 拳形そのものは「正拳(せいけん)」と同じですので、親指を除く4指でしっかり握り込み、芯を作るようにします。その上で親指でしっかり締めるようにして「正拳」を作りますが、実際の使用部位はイラストのようにこの拳の小指側になります。

 

 ちょうど金槌のような感じになり、自身の腕をそのようにイメージして用いると良いかもしれません。力んで使えば工具としての金槌もあまり用を成しませんが、その意味からもこの武器を武技として用いる時のイメージングとして活用できることになります。

 

 基本稽古としてはあまり行っていないのですが、似たような技に「手刀打ち(しゅとううち)」があります。「閉手(へいしゅ)」と「開手(かいしゅ)」の違いはありますが、全体的な用法として類似性があります。

 

 ただ「手刀打ち」の場合、接触部位のコントロールは慎重にする必要がありますが、今回行なう「拳槌打ち(けんついうち)」の場合はそこまで気を遣わなくても効果を発揮します。

 

 とは言ってもいわゆる見えない技」的なポイントは存在しますので、稽古を通じ、その点を確認していくことになります。

 

二十四歩解説4番

 そして上のイラストが極めの時の様子ですが、受けた後、1歩足を進め、「正整立ち」になった瞬間、「拳槌挟み打ち(けんついはさみうち)」を相手の首をターゲットに打ち込みます

 

 行為としてはこれだけですが、約束ごとの稽古の場合、「受け」の後に変な間(ま)が生じ、2挙動の技になってしまいます。

 

 しかし、この「受け」の場合、防御の質が低い場合、最初に突いた側の反対で再攻撃が行われる可能性があります。また、仮にそれなりのクオリティで対応できた場合でも、実戦では相手も必死ですから、次の手を打ってくる可能性は十分あります

 

 だからこそ「見えない技」である拍子の要素は全ての技に共通する重大事項になるのですが、稽古ということで甘さが生じ、今一つ、真剣みが感じられず、結果的に間延びしてしまう、ということになるのではと思われます。

 

 それがスタンダードになってはいけないので、稽古の合間の説明の際、模範として実際のスピードに近い感覚で一連の技の流れを見てもらいました

 

 こういう時は実際の戦いを想定し、互いに組手の構えで行ないますが、仕掛け技は基本と同じ「右中段追い突き」でやってもらいました

 

 時間があれば左右交代した場合や、「突き」の種別が異なった場合も見せたかったのですが、こういうところが研究稽古ではないというところからあえて行ないませんでした。

 

 でも、互いに組手の時の構えで行なったら、ということで行なったことて、いろいろ考えなければならない、という気持ちは湧いてきたのではと思っています。

 

 同時に、そういう場合はいかに拍子の意識と実践が重要かということも頭では分かってもらえたのではと思っています。

 

 だからといってできるかどうかというのは別問題になりますが、一つずつ階段を上るような感じで稽古を続けてもらえればと願っています。

 

 昨日は「二十四歩」の分解・解説の1番、今日は4番を行ないましたが、明日のブログでは9番を稽古した様子についてお話ししたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

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