開手で受け、開手で反撃 | 中山隆嗣の「活殺自在」

中山隆嗣の「活殺自在」

武道と癒しを中心に、生き方、日々のことを綴ります。

 先週の火曜日の稽古の話です。第2部の稽古はグループ別に分かれて組稽古を行ないましたが、その中の1クループのテーマは二十四歩(にーせーし)」の分解・解説でした。


 ここ数回に渡ってお話ししたテーマですが、まだご紹介していない技があります。今日はその中から、タイトルにある「開手(かいしゅ)」を用いた技のことを綴りたいと思います。


背手受け  今日は2つの技をご紹介したいと思いますが、その一つが左のイラストにある「背手受け(はいしゅうけ)」からの技です。


 「形(かた)」の流れから言うと最後に近いところになり、動作自体も激しいものではありません


 そのため、気が緩みやすくなる部分でもあり、「形」の動作としても、また、この動きを武技の一つとして見た場合にも注意が必要なところになります。


 そこで具体的な注意点ですが、まず目線があります。


 イラストをご覧いただければお分かりの様に、顔は正面を向いています。


 ということは、ここは目線を移動し、相手の攻撃を見て受ける、ということではなく、感じて受ける、という意味と解釈できます。動作としては一見簡単そうなところですが、この動作が要求している武技の質というのは、実は感性を必要とする、結構高度な内容であることが伺えます。


 また、上肢の様子にも気を付けなければなりません。


 具体的に言うと、背手(はいしゅ)」と肘の位置関係です。「背手」のほうが肘より遠方になっていますが、「形」として稽古する際、肘のほうが遠方になっている人がいます


 しかし、実際にはイラストのようなフォームであることが必要で、「形」として行なう時にもよく注意する箇所の一つです。


二十四歩解説10番











 さて、この「背手受け」の具体的な解釈例が上のイラストに示してあります。


 攻撃側は側方から「上段追い突き(じょうだんおいづき)」で攻撃してきた、という想定です。


 それに対して、「形」通り「背手受け」を行ない、同じ側ですぐに「手刀打ち(しゅとううち)」で反撃する、という技になります。


 動作としての説明を簡単にすると以上のようになりますが、これを武技として行なうにはいくつかのポイントがあります。


 それを稽古の様子を前提にピックアップして説明しましょう。その際、まず先ほど「形」としての説明として上げた目線の問題との絡みがあります。


 「形」の中では顔を動かし、相手の攻撃を見ることなく感じることを要求する動作になっていますが、上のイラストでは攻撃する側に視線を向けています。稽古のプロセスとしては、最初はやはり相手の攻撃の確認の大切さを示している、と考えなければなりません。そして、そこで培った感性を昇華させ、やがては気配を感じて動けるようにする、という意識で稽古すべき箇所となります。


 また、受ける際の立ち方は「結び立ち(むすびだち)」であり、きちんとした中心軸の意識の有無がバランスのキープに重要です。稽古の際、相手の勢いに押されて姿勢がぐらつくケースがありますが、それではきちんとした反撃はできませんし、劣勢の状態です。すぐに第二、第三の攻撃を仕掛けられる状態と言えますので、たとえ踏ん張りにくい立ち方であっても、中心軸のキープと、「受け」の質から姿勢の崩れには十分注意をしなければなりません


 この日の稽古で、結構な体格差があるペアになっているケースがありました。一方は普通の体系の日本人、もう一方は120キロのオーストラリア人、という組み合わせです。日本人側も、普段から筋トレをしっかり行なっている人で、体力的には自信があると思われたのでペアを組んでもらったわけですが、それでも体格差はいかんともしがたくらしく、受けるたびにグラついていました。


 だから、どこに問題点があるのかを理解してもらうべく、私と交代してもらい、様子を見てもらいました。


 そこではきちんと相手の「突き」を受け流し、反撃の「手刀打ち」まで行ないます。


 その違いは何か、ということを客観的に見てもらいたかったわけですが、これは総合的な身体操作が関係することです。そういうところは自身で感じてもらうことも必要ですが、可能というところを見てもらうことはそのままイメージトレーニングになります。その上で、この時点でアドバイスできるところについては個別指導として行ないました。


 多少の変化はありましたが、やはりこの時点での体格差の克服は難しく、それ以上は今後の稽古を委ねました。


二十四歩 最後  続いては、「形」の最後で行なう合掌の箇所ですが、千唐流の「形」の終わりは左手は「開手」のままで、右手は「正拳(せいけん)」になります


 ところが、左のスラストをご覧いただければお分かりの様に、左右いずれも「開手」になっています。千唐流の「形」の中ではもう一つ、「鷺牌(ろーはい)」の場合も同様の状態で終わりになりますが、いずれも鳥の動きをイメージした「形」という共通項があります。


 当然、ここには何らかの意図があると理解されるわけですが、実際、この箇所にも解釈例が存在し、単なる「形」の終了動作ではなかったわけです。


 そうなると、この動作にもきちんと魂を込め、油断が無いようにしなければなりません


 「形」の動作としてはこの後、両上肢を体側に移動させ、終了ということになりますが、イラストの箇所で気を抜かないようにしなければならない、ということです。


 そういう意識は「形」稽古の際にも注意しており、試合の場合でも、得点、あるいは勝敗がコールされるまでは気を抜かないようにアドバイスしています。


 経験が浅い道場生の場合や子供たちの中には、上のイラストの箇所から緊張感が抜けてしまっているケースがありますが、そういう状態は武術でよく言われる「残心」が抜けていることにもなります。


 この意識は「形」からも学べるところですが、この動作にも分解・解説がある、ということを知れば、その部分は更にしっかりしたものなるだろうと期待します。


二十四歩 解説11番










 さて、その具体的な解釈例ですが、上のイラストに示してあります。


 「形」では終了動作ということで両掌を自分の方に向けて合掌していますが、実際の場では手を合わせている状態にもかかわらず攻撃を仕掛けてきた場面、と考えればいいでしょう。


 そういう場面で行なう「受け」→反撃例が、掌底落とし受け(しょうていおとしうけ)」→「手刀打ち」という流れです。


 その時、「受け」により相手の姿勢が前傾することが大切ですので、軽い「受け」ではできません。その状態であれば、そもそも「受け」の用を成しているかどうか、という疑問符もつきます。


 ですから、ここでは重い「受け」を意識し、体重を乗せた技にすることが必要になります。そして、姿勢の崩れに乗じてカウンター気味に「手刀」を放つわけですが、より効果を高めるために急所を意識することが大切です。稽古ではそこまで要求した上で行ないましたが、「受け」と反撃が1拍子で行なわなければならないところなども難度を上げる一因になっていたようです。


 数をこなす中で自分のものにしてもらいたいと願っています。






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