稽古前に武技の細かなポイントをアドバイス | 中山隆嗣の「活殺自在」

中山隆嗣の「活殺自在」

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 昨日の稽古ですが、本来のメニューがスタートする前に、武技の細かなポイントについて個人的なアドバイスをしました。あくまでも稽古前のことなので、数をこなすといったことはありませんでしたが、ここを意識すれば質的向上が図れる、といったところを選びました。その全てをご紹介することはできないと思いますが、3つほどお話ししたいと思います。


追い突き 前足


























  まず、上のイラストに示した「追い突き(おいづき)」ですが、自分の姿を鏡に映しながら稽古していました。


 全体的な様子を見ていると、一見良さそうに見えるのですが、こういった移動稽古の場合、特に足元に注目する必要があります。


 もちろん、土台の大切さという意味では静止時にも同様に意識しなければなりませんが、動く際の重心の移動などに関係するというところでは別の視点から注目し、正しく行なわれているかどうかの確認が必要です。


 そこで気になった点ですが、上のイラストには前足のところに赤丸を付けています。


 私が気になったのはこの点で、移動の際、軸足になった時のことです。運足時、前進する場合は前足に、後退する場合は後ろ足に瞬間的に身体の中心軸が移動することになりますが、身体操作の視点からはここを見逃してはなりません。


 その際、アドバイスの対象になった人の体重は小指側にかかっていました。せっかく「その場稽古」の際、内八字立ち(うちはちじだち)」などで親指側を意識してもらっていたのが、運足時にやってはならない小指側に重心をかけるという状態になっていたのです。


 この状態では身体の中心軸のキープが難しく、技の乱れや安定感に欠ける可能性が出てきます。稽古の際、単にスピードだけを意識している時には気付かないことかもしれませんが、身体操作を間違えて覚えてしまうと、質的な問題が出てきます。身体の中心軸の意識と、その上での身体操作は武技の質の根幹に関わるだけに、この悪い癖は早々に改善してもらわなくてはなりません。


 そこで移動時にも親指がを意識した上で「追い突き」をやってもらったわけですが、これまで他で稽古していた時に着いた癖だったらしく、少々戸惑いがありました。今後の改善テーマとして意識してもらうことになりましたが、こういった通常稽古とは別の視点でアドバイスすることも効果的です。チャンスがあれば、時々行ないたいと思います。


鎮東 初動作













 続いては「形(かた)」を稽古していた人の話ですが、具体的には「鎮東(ちんとう)」です。


 先日も稽古した「形」ですが、その分、記憶に新しいのかその確認を行なっている様子でした。


 ただ、先日のブログに書いた箇所ではなく、上に示した初動作のところが引っ掛かっている様子でした。


 ちょっと観察していましたが、たしかに引っ掛かっていると感じるところがありました。自分の動きにしっくりこないということを感じるところまでレベルアップしている様子が伺えますが、このようなことは意識しなければそのままスルーしてしまいます。でもそこが気になる、という様子でしたので具体的なアドバイスになりました。


 上の画像はイラストなので、実際に動く際の微妙な身体操作の感覚は分かりくいと思いますが、今回の場合、下半身の動きと上半身の動きに微妙なズレがあったのです。具体的には下半身の動きが先行し、身体全体が変に捻じれた状態になっています


 もっとも、それはしっかり観察しなければ分からない程度であり、同様の動きになっている人は散見されます。しかし、全身の動きは正しくコントロールされなければ本来の能力を最大限発揮することはできず、武技の持つ意味も体現できないことになります。


 この動作自身、「抜塞(ばっさい)」の初動作に酷似しており、その違いを理解する上でもここで正しい身体操作の意識を定着させなければなりません。その詳細を説明すると長くなりますので割愛しますが、稽古ではアドバイスに従って動いてもらいました。身体の使い方にしっくりしたものがあったらしく、その後はスムーズに行なっていましたが、ちょっとした気付きの有無が動作の質を変えるのです。


下段払い  今日のブログの最後の話になりますが、それは具体的な武技の話ではありません。全ての武技に関係する「緩急」をテーマに説明しました。


 というのは、全体的に一本調子の感じになる人がおり、武技には「緩急」という「見えない技」の要素が必要ということを説明したかったわけです。


 でも、話だけでは伝わらないため、具体的な武技を通して理解してもらうことにしました。それが左に示した「下段払い(げだんばらい)」でした。


 「緩急」というテーマで説明する場合、「脱力」という意識は不可欠ですが、単に力を抜くだけの意味合いではありません。筋力とは異なるパワーアップのための身体操作であり、その中には身体の部位によりコントロールすることが異なる場合があります。


 それを「下段払い」で説明すると、上肢全体は「受け」の際に相手に触れるまでは不要な力みをなくすようにし、インパクトの瞬間に全体を瞬間的に締めることが大切になります。


 そうすると本当に上肢全部の力を抜いてしまいがちですが、上肢全体は脱力していてもその付け根に近い脇には締めの意識が必要で、その状態があるからこそ重い「下段払い」が可能になります。


 身体の部位別にコントロールするというのはなかなか難しいことではありますが、そういう身体操作ができるようになることが武術の稽古には必要なことであり、その実際は私の脇に触れてもらい、脇の締めの有無と上肢の「脱力」、動作の「緩急」の意識などの条件を変化させながら全員に技の重さと共に体験してもらいました。


 最近入門した初学者の人には難しかったかもしれませんが、武技というのは上辺だけの動作ではない、ということを理解してもらったものと思います。そういう身体操法と、それを可能にする武術体作りが稽古の目的であることを再度理解してもらい、本来の稽古に入りました。


 その話はまた後日にしたいと思います。






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