闇とブルー -390ページ目

ふりむく

ふりむいて私を呼んだ声探す二度と会えぬと知ってはいるけど






『孤独』

私を呼ぶ声がしたので
振り向いたら あなたでした

私は嬉しくなって
あなたに近づいていきました
でも
近づけば 近づくほど
あなたは遠く 離れていきます

人混みの中
私を呼ぶ声がしたので
振り向いたら
白い野原に
私は 一人でした







はじめの短歌はマイグルっぽ、短歌集団〔参柔壱門児〕内の期間限定企画に投稿したもの。


下の詩は高校のときに書いたもの。




冬を待つ

『冬を待つ』


やわらかい光に包まれて
ガラスの少女は
透明な息を吐く
もうすぐ冬が来るね

春は逃げてしまったし
夏は溺れてしまったし
秋もきっと消えてしまうでしょう
だから冬を待っているの

冷たい空気と
降り込める雪と
風の柱で
私を閉じ込めてくれるから

そして粉々に砕いて下さい
その欠片を
雪の結晶に変えて下さい

春の夢は見たくない
刺すように冷えた酸素を吸い込んで
肺が凍っていくのを
ガラスの少女は
待ち望んでいる

藤原正彦『国家の品格』を読んで

ベストセラーになるはずである。論理的思考を持つ数学者の講演記録をもとに執筆されたものだから、読みやすくわかりやすい。

この本では、サブプライムローンに端を発した今回の恐慌がすでに予言されている。


小川洋子との共著『世にも美しい数学入門』でも、著者には国粋主義的な匂いは感じていた。

小学生には英語よりも国語をしっかり勉強させるべきということには賛同する。

愛国心(ナショナリズム)ではなく祖国愛(パトリオティズム)を持て、という意見にはある程度賛同する。が、いざというときには国を守るという覚悟が必要という意見には賛同しかねる。
日本人を皆殺しにされるとなると困るが、戦争に負けても占領されていても「祖国愛(自国の文化、伝統、情緒、自然を愛すること)」があれば、文化などは必ず継承されると信じている。


日本人が持つべきものとして武士道精神を挙げている。著者の言う武士道精神とは卑怯を憎む心のことである。
こういうものを持ち出すのは、著者自身が頭が良く、力のある強い人間だからだ。彼のような能力のある人間がみな武士道精神を持てば、世の中は平和になるだろう。武士道精神が本当に卑怯を憎むという精神ならば。


そもそもなぜ新渡戸稲造は、日本人は無宗教だと思ったのだろうか。日本中いたる所にお地蔵様や神社仏閣があり、著者の言うような自然や神に跪く心を日本人はもともと持っているなら、それは信仰心があるということにはならないのだろうか。ただこういう複雑な日本人の宗教観に明確な○○教という名前がついていないだけだ。


この世が平等でないこと、「論理」だけでは世の中は良くならないということにも賛同する。

クルト・ゲーデルという数学者が「不完全性定理」つまり「正しいか、正しくないか、を論理的に判定できない」ことを証明したそうだ。

著者は「「論理」だけでは世界は破綻する」ということを論理的に証明している。

なかなか不思議な興味深い本である。

冒頭、「私ひとりだけが正しくて、他のすべての人々が間違っている」「女房に言わせると、私の話の半分は誤りと勘違い、残りの半分は誇張と大風呂敷」と笑いを誘うような前置きがされているのを見逃してはならない。


カバーには「日本人に誇りと自信を与える画期的提言」と書かれている。
このような本がベストセラーになるというのは、日本人は(自分自身も含め)自虐的であり、欧米人に対して劣等感をかなり持っているからだろう。
日本の文化や歴史の教育をしっかりしていないツケがここに回ってきているのだ。だからつくる会などのナショナリズムに流されやすい。


国家に品格が必要かどうかは分からないが、やはり自分が生まれ育った国の文化や歴史や国民性というものを(他の国と比べて素晴らしいかということではなく)勉強すべきだし、勉強したいと思った。
アイデンティティーには多かれ少なかれ祖国が核になるのだから。意識的にも、無意識的にも。