今回は前回の『ふたたび嗤う淑女』(中山七里著)の続編『嗤う淑女二人』をご紹介します。

 

『嗤う淑女』シリーズ三作目となる今回は、なんと稀代の悪女・蒲生美智留のほかにもう一人ヤバすぎる女が登場します。

 

その名は有働さゆり。この女が具体的にどんな事件をやらかしたのかは不明ですが、一応、”有働さゆりは連続殺人犯で医療刑務所から脱走しているヤツ”という設定です。美智留とさゆりは、ある日偶然出会ったことから結託し、さゆりは美智留の仕事を手伝うことを条件に、匿ってもらうことになります。

 

美智留が依頼する仕事とは、大量無差別殺人(もはやテロ)。すべての計画は美智留が練ってくれるということで、さゆりは言われたとおりに実行するだけ。中学校の同窓会で毒殺事件を起こしたり、バスツアーの最中にバスを爆発させたり、中学校を放火したり、フィットネスジムを爆発させたり・・・。お互い殺人に対して何の罪悪感も、恐怖感も、ためらいもないので、ざくざく殺していきます。その犠牲者の数は49人。捕まれば死刑まっしぐらの凶悪事件ですが、何の証拠も残さないのが美智留流。今回も自分の手は汚さず、すべてをさゆりにやってもらいます。

 

もちろん警察は、こんなイカれた事件の裏には蒲生美智留がいると睨んでいます。しかしどうしてもそれを証明することができず、実行犯のさゆりすら捕まえることができません。ふたりは同じ凶悪殺人犯でもタイプが違い、計画的で慎重な美智留に対し、さゆりは場面で動きます。証拠を消す美智留に対し、「捕まえられるものならやってみろ」と堂々と犯行を重ねるさゆり。自分の手は汚さず、するとしても遠隔操作が基本の美知留に対し、一対一の接近戦が得意のさゆり。これは結託しているときはいいけれど、もつれたら大変なことになるなぁと思っていたらそのとおり。

 

これまで美智留と関わったものは、協力者含め(証拠隠滅のため)すべて殺されてきましたが、さゆりだけは上手くいきませんでした。なぜならあちらもサイコパス。すべての依頼を実行したら、最後は殺されることを予想していたさゆりは、その前に逃走してしまいます。

 

このパターンは初。今回の事件自体はどれも爆発系でマンネリ化こそしてはいましたが、美智留VSさゆりの決闘は面白い!もし続編があるなら、そこではサイコ同士の騙し合いをしてほしいなぁと思います。

 

そして何より三作目まで読んでわかったのは、美智留には恭子がいないとダメだということ。一見、美智留にとって恭子なんかいてもいなくてもどっちでもいいビジネスパートナーのように思えますが、個人的には少々狂った恭子という助手がいないと美智留の悪女っぷりは引き立たないように見えるのです。

 

恭子がいた頃の美智留は、もっと恭子の扱いに困っていたり、ペテン師具合もレベル高かったし、何よりもっと自分で動いていたんですよね。今は適当に見つけてきた手下まかせで物足りない。というわけで、もし続編があるのでなら、美智留には再び悪女っぷりを見せつけてほしいですね。あの美貌と巧みな話術で世の中を操ってほしい!

 

好き勝手いってしまい、申し訳ありません。次作を期待しています。

 

 

美智留の犯行動機は異質に過ぎる。欲望でもなければ情動でもなく人を殺めている。それも自らが手を汚すことなく、他人を手足のように使役している。その行動には悪意さえ感じられず、さながらアリを面白半分に踏み潰しているような印象さえある。面白半分。そうだ、その言葉こそが蒲生美智留の犯行態様そのものだ。精神病質やサイコパスという用語さえも雅に思えてくる。P266

やばい、やばい。

 

 

以上、『嗤う淑女二人』のレビューでした!

 

 

 

シリーズ一作目のレビューはコチラから