今回ご紹介するのは、中山七里さんの『嗤う淑女』シリーズ第二作目になります。

 

稀代の悪女「蒲生美智留」が世間を震撼させた凶悪事件から三年後。今度は「野々宮恭子」と名乗る投資アドバイザーの周りで多くの死人が発生します。前作を読んだ方ならご存知のとおり、この「野々宮恭子」の正体は、死んだはずの「蒲生美智留」です。前作のラストでは、燃えカスとなった恭子の遺体を「美智留の遺体」と偽り、自身の顔を恭子そっくりに整形して、本人になりすましていた美智留。これまでの犯罪行為すべてを故人になすりつけ、自身は堂々と社会復帰を果たした現在、また良からぬことを考えています。

 

二作目では美智留が野々宮恭子として、ふたたびサイコパスも驚くような事件をやらかします。その際は絶対に自分の手は汚さずに、ターゲットを唆すだけで殺してしまうといういつものパターンも忘れません。本当におそろしい人です。

 

個人的な感想としては、一作目の方が面白かったかなぁという気がします。ちょっと今回は政治絡みの殺人案件ばかりだったので、全体的に堅苦しい印象でした。すみません。ターゲットは5人で、どれも国会議員・柳井耕一郎の関係者です。彼の支援者や秘書を順々に殺していって、最後に本人を―という流れですが、今回はお金が目的ではないようで・・。

 

じゃあ何が目的なの?と思いますが、恭子(美智留)は、「他人が不幸になっていく姿を見るのが好き」なだけで、それ以上の意味はないと語ります。そのため今回は騙し取ったお金をすべてパアにしてしまったり、選ぶターゲットにも個人的な感情を持っていません。正直、目的があって悪女をしている美智留が面白かったので、ただのサイコに成り下がっていて残念な部分は否めませんでした(と思う私もヤバイけれど)。

 

ただ、ターゲットを間接的に殺す手法は、前回よりも進化していて警察は何もできません。事件の背後に美智留らしき存在を疑ってはいますが、罪に問えないよう完璧に工作されているので太刀打ちできない状況です。やっていることは詐欺としか言えませんが、騙された方が騙されたと思わないほど巧妙な手口を使うので、お手上げです。

 

そして、さらに今回は新メンバーの神崎亜香里も登場します。彼女は美智留の手下となって、ターゲットの職場に潜り込んで弱みを握り、親切を装っては彼らを野々宮恭子の事務所へ誘導します。不思議なことに、この亜香里という女は、前回美智留の手下だった恭子とは違い、めちゃくちゃ有能なのです。え?ほとんど美智留は何もしてなくない?亜香里だけで事が足りてない?とすら思ってしまいます。

 

違和感は他にもあります。絶世の美女だった美智留は、これまで誰からも圧倒的な美貌を褒められていましたが、今回はそうでもないのです。綺麗といえば綺麗だけれど、全員を骨抜きにするレベルではなさそうなのです。※ちなみに美知留は一度恭子の顔に整形したあと、再び元の顔に戻しています

 

また、手下の亜香里は毎回初対面の人から「目鼻立ちは整っているけれど化粧が下手すぎて野暮ったく見える人」と思われがちなのも気になります。そもそも有名な凶悪事件の首謀者と一緒に悪さをする亜香里は何者なの?という感じもしてきます。

 

まぁ彼女の正体は直接本編を読んでいただくとして、問題は美智留です。今回は美智留の活躍が薄く、前回のようなヒヤヒヤ感が薄まってしまったのが残念でした。政治の話がドーンと前に居座っているような話で美智留不足。あれ?私いつのまにか美智留にハマってる?怖いもの見たさになってる?

 

危険、危険。

 

いったい私は美智留に何を期待しているんだ!!

 

稀代の悪女に洗脳される前に、これでレビューを終わりにします。

 

興味のある方は一作目から順番にどうぞ。

 

 

 

三作目のレビューはこちら!

 

 

以上、『ふたたび嗤う淑女』のレビューでした!