ブルノンヴィル・バレエ『ポンテモーレ』 | あるバレエママの告白

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バレエしている息子のこと。それを母として観察する私が考えたこと。デンマークの暮らし、教育などなど、ふと頭に浮かんだことをそのまま書いてます。

夜のニューハウン。


一昨日ここを通って、王立ドラマハウスまで行って来たもので、ちょうどニューハウンのことを書いたばかりだなぁ?と思って、写真撮って来ました。ちょっと追記しますと「ハウン」はデンマーク語で港という意味で、ニューハウンは新しい港という意味です。ちなみに先週書いていたハウンはクリスチャンスハウンで、クリスチャンの港でした。


クリスマスの飾りは取り外されて、レストランにはある程度人が入っていたけれど、夜だったし、観光客はボチボチという感じで、ここも思ったより静かでちょっと寂しい感じでした。


王立ハウスには演劇を観に行ったのではなく、「バレエ友の会」主催、ブルノンヴィル作品『ポンテモーレ/芸術家たちの祭宴』の上映、そして復元に携わった、デンマーク王立バレエ団、元芸術監督、フランク・アンダーセンの講演に参加するためでした。




『ポンテモーレ/芸術家たちの祭宴』は、1861年にデンマーク王立バレエ劇場で初演され、最後に踊られたのが1911年でした。私たちが観たのは、2016年スウェーデン王立バレエ団のために再制作され上演された作品の録画でした。


ディナ・ビヨーン、フランク・アンダーセン、他2人、40年間ブルノンヴィルを踊り続けて来て、そのステップが体に染み込んでいるエキスパートの面々が、ブルノンヴィルの手書きのノートを元に、全幕のバレエを「復元した」と言うよりは「再制作した」作品だったそうで、その過程の苦労話を当人から直接お聞きするのは中々興味深かったです。


全二幕の作品で、第一幕の舞台はローマの芸術家たちのアトリエ。芸術家たちと娘たちの恋物語。恋愛イザコザがあった後、第二幕では問題が解決して無事結婚式が開かれハッピーエンド。デンマーク人のアーティストはデンマークの婚約者の元に帰って行く。と言う物語でした。


ここでは芸術家たちとその後援者だったけど、プリンスやプリンセスではない、普通の人が登場するヴォードヴィル・バレエで、第一幕はほとんどがパントマイムで物語が語られ、第二幕はバレエで踊りを楽しむと言う典型的なブルノンヴィルの作品でした。


スウェーデンで再初演された時のトレーラーです。


ブルノンヴィルは1861年から1864年までの間、スウェーデン王立バレエ団で芸術監督を務めていました。デンマークは1864年に第二次シューレスヴィヒ=ホルシュタイン戦争で大敗北して国土を失い、国家危機に陥ってしまいました。ブルノンヴィルは故郷の一大事の知らせに帰国を決意し、2年後にこの作品を発表して、当時は大好評だったらしいです。


でもこの作品がブルノンヴィルの代表作の一つとしてあげられたのを、何かで読んだり聞いたりしたことはありませんでした。


物語の主人公デンマーク人のアーティスト、アルフレッドは、友だちのアーティストたちがが恋煩いしている中で、デンマークの許嫁から手紙を受け取りデンマークに帰国する決心をします。あれは(きっと自分の姿を表現したんだなぁ〜?)って思いました。


音楽はオリジナルの部分が多かったのか、いかにもブルノンヴィルだったし、新しく作成された舞台装飾や衣装はとても美しかったです。


第一幕のパントマイムは、上映前の説明や、上映中のフランクさんによる登場人物の紹介がなかったら理解できなかったと思われます。


最近バズっている(って言うんですか?)谷桃子バレエ団のYouTubeで、バレエ公演にオーディオ・ガイドを使う試みが紹介されていましたね!最初はえっ?て、抵抗感がありましたが、あれって伝統芸能はじめてって言う人には良い考えなのかもなぁ〜って、このパントマイムの第一幕を観て思いました。


第二幕は、夜が弱い私は、不覚にもウトウトしてしまったのでなんとも言えないのですが、パッと目が覚めるソロ、胸キュンのPDD、心まで踊りだすPD6などはなかったような……


もしかしたら、それもこの作品が100年以上失われていた原因かもしれません。でも、上に書いたような自伝的な要素がある物語のこのバレエが、謂れがあるスウェーデンで再初演さえたのは面白いと思いました。


2016年にスウェーデン王立で再初演されたけれど、その後再度演目に上がったって話は聞きませんでした。


でも、手書きのノート一つで、一つの作品を蘇らせるエキスパートたちの尽力には脱帽します。


今回は、居眠りしちゃって、豚に真珠だったのかも?


大変失礼いたしました。