デンマークバレエ界大御所の訃報 | 日々の覚え書き

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デンマークの暮らし、教育、天然酵母、麹、発酵の話、旅行の話、子どもたちを通して知ったバレエのことなどなど、ふと頭に浮かんだこと、思ったこと、感じたことをそのまま綴るブログです。

10日になってまだ数時間しか経っていない頃、前夜の家族パーティーの興奮で寝付かれず水を飲もうと起き上がり、ついでになんとなく開いてしまったiPadに、日本の知り合いからメッセージが届いているのに気付いた。


「Erik Aschengreenが亡くなったと知りました…悲しくて、ショックで……」


つい最近、バレエ友の会主催の講演会で、1時間近くたちっぱなして、いつも通りにユーモアたっぷりのスピーチをされるお姿をお見かけしたばかりだったような気がしたので、この訃報を私はすぐには信じられませんでした。


ネットに何か載っていないかな?と調べようとしたけれど、エリック・アッシェングリーン逝去の情報は見つかりませんでした。


だから、何かの勘違いでは?そう願いながらも、日本の知り合いが「FBで知った」と書いていたのを思い出し、半信半疑でFBを開けてみました。


そして、そこに投稿されていた数人からのお悔やみの言葉を読み、ご逝去が確認されました。亡くなられたのは9日でした。


享年88歳。


亡くなっても不思議ではないお歳だけど、前回の講演会を拝聴しながら、(なんて素晴らしい洞察力と記憶力なんだろう!この人はきっとデンマークバレエ界のために、神様が長い命をお与えになった方に違いない)と感じ、いつまでもお話を伺い続けることができるような気になっていたので、とてもショックでした。


エリック・アッシェングリーンは、デンマークのバレエの歴史、王立バレエ団の作品、ブルノンヴィルをはじめ著名な人物などなどの、数多くの本を著作しているノンフィクション作家で、バレエ評論家で、コペンハーゲン大学に舞踏学科を設立することに貢献して、講師としてバレエ美学や歴史の教育に尽力し、デンマーク王立バレエ学校でも20年以上教壇に立っていて、現芸術監督も教え子の一人だったと言う方でした。


バレエの生き字引と言っても過言ではなく、誰もが認める「舞踏博士」でした。


私は直接お話ししたことはありませんが、講演会には何度も足を運びました。彼の本も持っているし、図書館で何冊も借りて読みました。


ある新聞社の専任バレエ評論家だった頃の新聞のレビューがまとめられている本を読むのが、私は特に好きです。


その場にいなくても、作品の印象が良く伝わってきて何度もワクワクさせられました。当然、もうすでに亡くなっていたり、引退しているダンサーたちの名前が出てくるのですが、(うわ〜素晴らしいダンサーだったんだなぁ〜!あー観てみたいな〜!)なんて、恋するような気持ちにさえ何度もさせられました。時には鋭いことも書くけれ、意地悪ではなく、バレエへの愛が溢れているような文章です。


レビューを書く人が、ダンサーたちから慕われるってことはあまりないのでは?と想像しますが、エリック・アッシェングリーンが嫌いだったダンサーは存在しないのでは?と思われます。


とても、とても、チャーミングな方でした。


彼が長年評論家を務めた某新聞社から、公式な訃報が出ていました。


それによると、「デンマークのみならず、世界各国で講演会を開いた」とあり、さまざまな国の名前が記載されていました。その中に、日本はなかったのですが、デンマーク王立バレエ団が遠征する場所には、必ずと言っていいほど、同行されていたようなので、彼は日本にも行って、講演会を開かれていたのではないかなぁ?と私には思われます。


実際、この訃報を真っ先に教えてくださったのは、日本のバレエ関係者の方でした。


日本でも知る人ぞ知る存在だったのだと思います。


安らかにお眠りください。


色々教えてくださって、本当に、ありがとうございました。


Erik Aschengreen(1935年8月31日-2023年9月9日)

ネットでお借りした写真です。