「お帰りなさい、早かったわね!?」
何気なく言っていた言葉に、息子が凄く傷ついていたことを知った。
息子がトレーニングから帰宅する時間に合わせていた我が家の夕飯。食べれるのは早くても19時半、19時45分だった日々から、遅くとも19時には食べれそう?と言う日々に変わってからもう久しいのに、無意識のうちに口から出てしまうその言葉だった。
研修生の特別公演が来週あるので、先生方や他の研修生たちは一日中リハーサルに忙しく、出演を断念した息子は全くの別行動で、一人で黙々とトレーニングしている。
その日はフラストレーションがマックスだったのか?
「お母さん、早く、早くって、帰ってこない方が良いみたいな言い方やめてくれない!?」
「今の状態が、どんだけ辛いかわかってないでしょ?」
と指摘された。
何気なく言っていたけれど、トレーニング出来ないから帰って来るしかない息子にとっては、嫌味極まりない言葉だったのだ。
反省して、謝ったら、許してくれた。
息子も気持ちを伝えて少し楽になったのか、その日の出来事を話してくれた。
リハーサルを見学して、研修生仲間が目の前でジャンプしているのをみて、見せつけられているような気がしてしまったことなど……。
……バレエ少女だった次女曰く、
「『悲しい』とか『悔しい』とか、そんな感情が残っているうちはまだまだ見込みあるよ!もうダメなのは、そんな感情も無くなった時だからね!」
確かにそうなのかもしれない。
翌日は、少し明るくなった息子のために、夕飯には大好きな組み合わせ、辛ランミョンとキンパを用意した。
主人も「辛い辛い」と言って食べながら、普段は少食の息子が、自分よりよく食べているのを、嬉しそうに見ていた。