ヒヨコに弟子入りする息子 | 大好きな日々の覚え書き

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デンマークの暮らし、教育、天然酵母、麹、発酵の話、旅行の話、子どもたちを通して知ったバレエのことなどなど、ふと頭に浮かんだこと、思ったこと、感じたことをそのまま綴るブログです。

10月中旬から秋休みにかけて上演される、バレエ学校の生徒によって踊られる子ども向けのバレエ『バレエだよ、バムセ』の準備が始まっています。


バムセとは、デンマーク語で「クマのぬいぐるみ」という意味です。

そして、この作品の主役はクマのぬいぐるみのバムセです。

でもこのバムセは普通のバムセではありません。デンマークではとてもとても有名なバムセです。

なんたって1983年にテレビに初登場して以来、子どもたちにずーっと親しまれ続けてきた、つまり、もうすぐ生誕40周年を迎えるバムセなのです。


バムセにはクーリングと言う親友がいます。クーリングはデンマーク語で「ヒヨコ」と言う意味。クーリングはバムセにとって、親友であり、弟のような存在です。バムセは4歳から6歳くらい。クーリングは3歳から4歳くらいと言う設定らしいです。そして2人の他に、後に妹的な存在のエーリングが加わりました。エーリングはデンマーク語で「アヒルの子」と言う意味です。


秘密の森に住むこの3人(匹)が、人間のアスク(男)とルーナ(女)と一緒に繰り広げる細やかな日常ドラマが80年代、90年代テレビで放映されて、バムセはデンマークの誰もが知る存在になりました。


デンマーク王立バレエ学校の元校長、Thomas Lundが振り付けた、バレエ版の『Kom Bamse, nu balletter vi』(直訳すると、『おいでバムセ、さあ、バレエしよ!』)が初演されたのは2008年でした。大好評で、その後、間を置いて3シーズンに再演されていたのですが、デンマーク放送(DR)との契約が何たらかんたらで、再演されるたびにこれが最後だ、これが最後だ!と言われ続けていました。が、なぜか今シーズンまた上演されることになりました。


私は、まず娘が、そして息子が、初演以外の3回の再演に出演していたので、何回みたか覚えてないくらい何度もこの作品をみました。


2011年、2014年、2018年再演時のパンフレット。


でも、今回はみることはないだろう!と思っていました。

なぜなら、秋休みの作品に出演するのは、通常、バレエ学校の67年生までの生徒と1年目研修生と決まっているからです。


ところが、5月に手術をして以来、足の状態が本調子でない2年目研修生の息子は、1年目研修生と一緒にこの作品に出演することになりました。そのため私はどうやらまた観に行くことになりそうです。


出演、と言いましても、1年目の研修生のように目立つ役を踊るわけではありません。


息子は、バムセの親友、クーリングのアンダースタディに抜擢?されたのでした。


はじめにそれを聞いた時「えーーー!!!」(いくらなんでも“ぬいぐるみ”をかぶって、しかも代役ですか?)と少しショックでした。

でも、よくよく話を聞いてみると、とても面白く、なんていいチャンスを与えられたのだろう!と心を改め、同時に無知だった自分を恥ずかしく思ったので、そのことについて少し書きます。


息子に聞くまで、私は全く知らなかったのですが、クーリング役(ヒヨコのぬいぐるみを着た人)は、過去40年間、ずーっと同じ俳優によって演じられて来たそうです。ぬいぐるみの顔は知っていても、中に入って声を出している俳優について考えてみたことがありませんでした。バムセは、数人いたようですが、今回はオリジナルの俳優が演じるそうです。エーリングが仲間に加わったのは1993年なので約30年になりますが、同じ俳優が演じて来たそうです。


つまり、クーリング(ヒヨコ)は、一人の俳優の魂が40年間注ぎ込まれて出来上がった、とてもオリジナルなキャラクターだったのです!


当然、その俳優はもうそんなに若くありません。そのため、飛んだり跳ねたりは無理です。でも、この作品にはクーリングが踊ったり、跳ねたりしなければならないシーンがあります。ハイ、そう、その通り!そこで、息子がぬいぐるみを着て影武者として登場する、と言うわけです。


そして、その短いシーン(それこそ何秒?の世界)を代役するために、また必要に応じて他の場面でも代役できるように、息子はクーリングが出る全てのリハーサルに同行しなければなりません。


「クーリングの魂を理解しないと、その役が代役出来ないから」


なのだそうなのです。


今回のこの公演は、全てがオリジナルメンバーであるだけでなく、オーケストラによる生演奏と気合が入っています。


そしてリハーサルは当然既に始まっています。

息子も10月中旬まで、高校に行くことなく劇場に通う日が多くなりそうです。


開かれた心で、沢山のことを吸収して欲しいと願っています。


最後に2018/2019年シーズンのトレーラーを貼り付けておきます。