今日、久しぶりにバレエを観に行ってきました。
……と言っても舞台ではなく、録画されたバレエを映画館で観ました。
『コンセルヴァトワールあるいは新聞の求婚広告』と言う、ブルノンヴィルの作品です。
はい、タイトル、凄く長いです。
「なになに?そんなタイトルのバレエは聞いたことない!」
どんなバレエ通の方でも、そう思われるに違いありません。
もし『コンセルヴァトワール』とだけ書いたら、「聞き覚えがある」って、大抵の方は思われることでしょう。
『コンセルヴァトワールあるいは新聞の求婚広告』は全幕のバレエで、『コンセルヴァトワール』は、その第1幕の「バレエ学校のシーン」だけを取り出した作品です。と書いたら、少しサッパリするでしょうか?
ブルノンヴィルの『コンセルヴァトワールあるいは新聞の求婚広告』は、1849年に初演された、ヴァードヴィル・バレエと呼ばれる、大衆向けの娯楽バレエ劇でした。
1848年にダンサーを引退したブルノンヴィルが、若かりし頃の1820年代パリ時代を思い出しながら創作した作品だそうです。
全幕が上演されることは、特別な機会以外ではなくなってしまいましたが、『コンセルヴァトワール』として知られている「バレエ学校のシーン」は、ブルノンヴィルの時代からずっと踊り続けられて、今では世界中で踊られています。
1820年代のコンセルヴァトワール(パリ・オペラ座バレエ学校)のトレーニングの様子が再現されていることが、特にこの部分を歴史的に興味深くしています。
デンマーク王立が踊っているものは見つからないので、ワガノワバレエ学校の生徒たちが踊った『コンセルヴァトワール』を最後に貼り付けておきます。
Pas de Trois のヴァイオリン音楽は1820年代パリのコンセルヴァトワールで実際に使われていた音楽をブルノンヴィルが再現させたものらしいです。下の動画では6分40秒からのPas de Troisがそれですが、途中からオーケストラで演奏されてしまっているので雰囲気が随分違く感じられます。
書くまでもないと思いますが、当時のバレエトレーニングの伴奏は、ピアノではなくヴァイオリンでおこなれていました。ピアノに変更になったのは20世紀に入ってからではなかったかしら?ブルノンヴィルも、デンマーク王立バレエ団バレエ・マスター時代は、ヴァイオリンを演奏し指導していたそうです。
さて、私が今日観たのは、全幕の『コンセルヴァトワールあるいは新聞の求婚広告』で、2005年の第3回ブルノンヴィル・フェスティバルを記念して復元され、上演され、録画されたものでした。
2005年といえば、息子が誕生した年で、つまり上演からそろそろ17年経つはずです。私にはかなりの歳月だと感じられますが、バラバラに録画されたものを編集するのに時間がかかって、完成したのはつい最近の話だそうです。
でも17年なんて、ブルノンヴィル継承のために一生を捧げているデンマークバレエ界の大御所さまたちにとっては、それこそ瞬く間なのかも知れません。
第一幕はバレエ学校が舞台。第二幕の舞台はパリ郊外サン・ジェルマン・アンレイのお食事処「アンリ・キャトル」のテラスと言う設定。アンリ・キャトルは今でもあるそうで、舞台装飾も興味深かったです。
ストーリーは、詳しく書きませんが、「バレエ学校の校長が、結婚を約束した相手がいるにも関わらず、もっと良い相手を見つけよう!と新聞に求婚広告を出したことで巻き起こる喜劇」で、ダンサーたちのパントマイムの演技がなによりも見ものです。
第1幕のトレーニング・シーンも、それほど厳格な雰囲気ではなく、自分の順番でない時は生徒同士がおしゃべりしたり、和気あいあい感があるレッスン、物語の一部として設定されていました。
楽しい作品なので、全幕が上演されなくなってしまったのは残念ですが、映画館で昔の映画を観るノリで偶に観るから良いのかもしれないなぁ〜っとも思いました。
「才能があるのに、貧しい家庭出身なので校長にバレエ学校入学を許可されないものの、ダンサーたちに助けられて最終的には入学を許可される女の子、ファニー」と言う大役を、子役として任されていたのは、今はプリンシパルのイーダ・プレトリウスでした。
彼女は現在ハンブルク・バレエ団に一時移籍しています。今日はジョン・ノイマイヤーのバレエ『リリオム』で主役(ジュリー)デビューだったそうです。
今も変わらない笑顔と演技力で、大役を堂々と演じていて、とても感心させられました。凄いダンサーは子どもの時から違います。
カンパニーの演目に大役に抜擢されるのは、将来を期待された子たちのみです。そこら辺はかなり鋭く、クールで、違いが露わに暴露されるものです。もちろん、大役に選ばれた子が皆プリンシパルになると言うものでもないのですが……。