デンマークには直訳すると「列文化」という、それは厳しい暗黙のルールがあります。
デンマーク語ではkø(列)のkultur(文化)で、køkultur(ク・クルチュー)と言います。
「列文化」とは「列を作り、列に並ぶ時のエチケット」で、それを乱すと、公の場で、とんでもないお叱りを受けかねないので注意しなければいけません。
「列文化」の裏にある基本の思想はたった一つ。
「列に並んでいる人は皆平等である」です。
そして、だからこそ正しい順番で進んでいかなければなりません。順番を守らないものは容赦なく罰せられます。
スーパーなどで、列がハッキリしていなくて、うっかり真ん中に割り込んでしまったものなら、さあ大変!
「ちょっとあんた!ここに列があんの見えないの〜?」
と怒鳴られること間違いなしです。
「列文化!」
と一喝される場合もあります。
知り合いが並んでいるからとこっそり横に入ったりするのも反則です。つまりそれは、一種のネポティスムですから……。
そんなにも神聖な「列文化」を無視して、今メディアで大目玉を食らっているのが、一部の医療従事者です。
「どこそこの医者がワクチンを自分の家族に持ち帰って打った」「どこそこの病院の病院長は高齢者でも、持病があるわけでもないのにワクチンを打った」「どこそこの病院の研究室では、患者と接触がないにも関わらず、研究員にワクチンを打った」などなど……。
政府が決めた新型コロナ「ワクチン接種計画」の自分の順番を、飛び越えてしまっただけでなく、「医師」と言う特権が絡んでいることも怒りの原因になり、ガンガン批判されています。
ちなみにその神聖な列の順番というのは、
1. 介護施設居住者
2. 自宅介護を受けている65歳以上の人。
3. 85歳以上の人。
4. 重症化する危険が特に高い患者や高齢者に接する、最前線の医療従事者と介護従事者。
5. 重症化する危険が特に高い基礎疾患がある人。
6. 基礎疾患がある人の親族、介護者である親族。
7. 80〜84歳の人。
8. 75〜79歳の人。
9. 65〜74歳の人。
10. 危険がやや高い基礎疾患がる65歳以下の人。
11. 社会的に重要な機能を持つ人。
12. その他一般。
このようになっています。
追記(2021年5月3日現在)
11番以降が次の順番に細かく分類されました。
11. 55-59歳
12. 50-54歳
13.16-19歳と45-49歳
14. 20-24歳と40-44歳
15. 25-29歳と35-39歳
16. 30-34歳
50歳以上は重症になるリスクがやや大きいと言う理由で優先されるようになりました。その他の若年層の順番は、交流範囲の大きい順になっているそうです。
列を乱して問題になっている人たちは、罰金を支払うことになるかもしれません。
私の長男、次男は、カテゴリー「4」の医療従事者なので、既に2回のワクチン接種を終了しています。
これに関しても、例えば、カテゴリー「3」に属する私の義母は、カテゴリー「4」の孫たちが自分よりも早く接種を完了したことに少々不満を持ったようでした。
追記:
孫たちがより早く接種したのには、キャンセルが出た予約済みワクチンを無駄にしないため、と言う正当な理由がありました。
私は、最前線で働く息子たちが、アパートで巣篭もりしている義母より早くワクチン接種を受けるのは当然だと思いますが、列に多少乱れがあったのは確かです。
ワクチン接種の招待状が届くのを、首を長くして待っていた義母。
幸い先週の日曜日、彼女の順番がやって来て第一回の接種を受けました。
「ファイザーのワクチン以外は拒絶する」と言っていた頑固な義母でしたが、幸いファイザーのワクチンでした。
接種後2日目くらいから疲れが出て、暫くそれが続いたようです。
今はすっかり元気になって、しかもワクチンには驚くべき副作用があった!と言って喜んでいます。
「変形性膝関節症」の膝の痛みがなくなった、と言うのです。
おそらく、それは気のせいで、ワクチンを打ってもらった安心感がそうさせているのだと思います。
このように、デンマークでは、大部分の人がワクチン接種の列にお行儀よく並んで、自分の順番を、まだかまだかとドキドキしながら待っています。
私も招待状が届くのがとても楽しみです。