◆今月のmwe交流会のテーマは?
今月のmwe交流会のテーマは、
自分が、大切な人が、いざという時に良質な医療サービスを受けるために…
「地域ごとに医療の現状を知って、「地域医療」「救急医療」について考えよう!」です。
急速な高齢化の進展による医療需要・介護需要の大きな変化が見込まれる中、
医療や介護を必要とする埼玉県民が、できる限り住み慣れた地域で必要な
サービスを受けられる体制を確保することが求められています。
そのためには、地域ごとに異なる条件や実情を踏まえ、限られた医療資源を
効率的に活用できる医療提供体制の「将来像」を明らかする必要があります。
そこで、令和7年(2025年)の医療提供体制に関する構想として、
平成28年(2016年)10月に埼玉県地域医療構想を策定しました。
3月度交流会では、第7次埼玉県地域保健医療計画(平成30年度(2018年度)
~令和5年度(2023年度))と“その後”ついて解説いただきました。
SDGs17のテーマ「3.すべての人に健康と福祉を」の理解を深めながら、
地域医療について考える交流会となりました。
今月の交流会もよろしくお願いいたします!
◆理事長によるmweフィロソフィの共有
毎月、交流会の始まりは、mwe杉田理事長によるmweフィロソフィの共有からです。
mwe活動で大切にしている理念(「利他」「協働」)を異なる側面からお話する時間です。
日頃、仕事に追われて、忘れている「大前提」「原理原則」に立ち返る時間になっています。
今月のテーマは、『「理想的な夢」を描き共有する』です。
◆財団交流会 講演①◆
テーマ :「 埼玉県地域医療構想について 」
~埼玉県地域医療構想の内容と、埼玉県の取組み~
講 師 : 埼玉県 保健医療部 保険医療政策課 企画・構想担当 主査 工藤一郎様
冒頭、埼玉県 工藤様より、「埼玉県地域医療構想について」解説を頂きました。
<地域医療構想の概要>
構想策定の趣旨は、急速な高齢化の進展による医療需要・介護需要の大きな変化が
見込まれる中、医療や介護を必要とする県民が、できる限り住み慣れた地域で
必要なサービスを受けられる体制を確保することが求められます。
そこで、限られた医療資源を効率的に活用できる医療提供体制の将来像を明らかにすることが
必要であるとして、平成28年(2016年)10月「埼玉県地域医療構想」が策定されました。
構想の趣旨は、以下の3点です。
◆医療法により都道府県に策定が義務付けられている医療計画に定める事項として規定
◆令和7年(2025年)の医療提供体制に関する構想
◆第6次 埼玉県地域保健医療計画の一部として策定し、第7次、第8次計画に引き続く
<埼玉県の地域医療の概況とは?>
さて、今回の交流会では、急速な高齢化の進展による医療需要・介護需要の大きな変化が
見込まれる中、医療や介護を必要とする埼玉県民が、できる限り住み慣れた地域で必要な
サービスを受けられる体制を確保することを目的に企画をしました。
そこで、埼玉県の地域医療の概況を共有しました。
◆埼玉県の病床数の状況
人口10万人当たりの病院の一般病床数は515.9床で、全国第46位と極めて少ない
ちなみに全国平均は709.6床/10万人、全国1位は高知県(1,130.6床/10万人)
◆埼玉県の医師数の状況
人口10万人当たりの医師数は177.8人で、全国で最も少ない
ちなみに全国平均は256.6人/10万人、全国1位は徳島県(338.4人/10万人)
◆県の将来人口の見通し
総人口→ R7年(2025年)にはH25年(2013年)に比べ、▲3.9%見込み
75歳以上の人口→ R7年(2025年)にH25年(2013年)に比べ、+79.7%見込み
◆入院患者の受療動向推計
東京都への流出超過が大きく、県北部では群馬県への流出超過も
県全体として流出超過でH25時点で1,816人/日の流出超過
「住み慣れた地域で医療を受ける」という地域医療構想の原則から、ほど遠い状況ですね…。
<保健医療圏の設定>
上記のような地域医療の概況を踏まえ、地域の特性・課題に対応した保健医療サービスを
提供するため「保健医療圏」を設定しています。
◆一次保健医療圏
役割 日常生活に密着した保健・医療サービスが提供される
区域 概ね市町村の区域
◆二次保健医療圏
役割 入院医療及び広域的な保健サービスが提供される
区域 地理的条件、日常生活、交通事情等の社会的条件を考慮した10の広域的な圏域
◆三次保健医療圏
役割 専門的かつ特殊な保健医療サービスが提供される
区域 全県域
二次保健医療圏は、以下の10圏域が設定されています。
南部 南西部 東部 さいたま 県央
川越比企 西部 利根 北部 秩父
いずれも県の保健所が1つ以上所在しているように設定されています。
なお、10圏域は「埼玉県5か年計画」と同じ圏域となっており、
医療と介護が連携できるようになっています。
<2025年における医療需要>
県全体ではすべての医療機能区分で入院患者の医療需要は増加する推計結果となってより、
H25(2013年)、R7(2025年)、R17(2035年)の医療需要推計は以下の通りです。
H25(2013年) R7(2025年) R17(2035年)
合 計 35,811人 46,086人 49,881人
高度急性期 3,543人 4,145人 4,232人
急 性 期 10,625人 14,007人 14,892人
回 復 期 10,701人 15,044人 16,288人
慢 性 期 10,942人 12,890人 14,469人
また、R7(2025年)時点の必要病床数の推計を10圏域別にみると、必要数を満たしている
(過剰)な圏域は南西部・西部・秩父の3圏域のみとなっており、残りの7圏域では必要数を
満たしていない(不足・非過剰)となっています。
10圏域の合計で見ると、「既存病床数:51,988床」に対して、「必要病床数:54,210床」
となっており、2,000床以上が不足している状態です。
<医療提供体制整備の方向性>
医療機能の分化・連携と病床整備における現状と課題は、以下の2点です。
1.2025年の必要病床数と現在の病床数を比較すると全体では不足
病床機能ごとで見ると、回復期の不足に対し、急性期は過剰
2.限られた医療資源で増大する医療需要に対応するためには、
各医療機関が担う医療機能を明確にするとともに、
病床機能に応じた患者を受け入れる体制を構築し、
医療機関相互の連携を図る、医療機能の分化・連携を進めることが重要
そして、問題解決に向けた主な取組みとして、以下の6つに取組んでいます。
1.地域医療構想調整会議での協議を通じた医療機能の分化・連携
2.病床機能報告制度と定量基準分析の実施・分析を活用した医療機能情報の提供
3.急性期病床から地域包括ケア病床等回復期病床への転換促進
4.2025年に向けた医療機関の対応方針の策定と地域医療構想調整会議における協議と合意
5.地域医療構想アドバイザー制度を活用した地域医療構想調整会議での議論の活性化
6.国における医療DXの推進の検討状況を踏まえた必要な対応の実施
「埼玉県地域医療構想」について情報が整理されたサイトをご紹介します。
※参考:埼玉県ホームページ「埼玉県地域医療構想」
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0701/chiikiiryoukousou/r4kousou.html
地域医療構想の推進体制や、地域医療構想調整会議について、また、10圏域ごとの
調整会議についても議事が整理されています。ご関心がおありの際はぜひ、ご確認下さい。
◆財団交流会 講演②◆
テーマ :「 救命医療の取組みについて 」
~埼玉県の救急医療の現状や、県が進めている救急医療の取組み~
講 師 : 埼玉県 保険医療部 医療整備課 地域医療対策担当 主事 堀良徳様
続いて、堀様より、「埼玉県の救急医療について」解説を頂きました。
<埼玉県の救急医療を取り巻く現状>
救急搬送患者が増加する一方、救急医療機関数が横ばいであり、
1救急医療機関当たりの負担が増加しています。
(令和2年については新型コロナウイルスの影響等で救急搬送患者が大きく減少)
H18~R4まで救急医療機関数が200前後で推移する中、
救急搬送人員数は「H18:248,962人➡R4:339,587人」まで大幅に増加しています。
救急搬送人員数の増加のうち、大半が高齢者となっています。
H24当時は成人(107,759人)と高齢者(128,864人)の数が拮抗していましたが、
R4には高齢者(198,808人)は成人(102,513人)の倍まで増加しています。
高齢者が増加した背景は「中等症」「軽症」の搬送が増えていることが原因です。
(重症:生命の危機にある状態 / 中等症:手術・入院が必要な状態)
救急搬送が増加し続けている中、「軽症」患者の搬送は50.1%を占めており、
“救急”が必要な人に行き渡らない状態になっているのが現状です。
<埼玉県の救急医療体制>
現在、埼玉県には342病院・4,600診療所がありますが、このうち救急医療機関は
108病院(52.6%)・16診療所(0.3%)に留まります。
これらの医療機関がピラミッド構想で救急医療を担っています。
「重篤」な救急患者に対応する第三次救急医療体制は、救命救急センター(11病院)
・小児救命救急センター(2病院)が担当します。
「手術・入院」が必要な救急患者に対応する第二次救急医療体制は救急告示医療機関(1%)
+狭山厚生病院・蓮田外科病院・所沢市市民医療センター・佐瀬病院が担当します。
「軽症」な救急患者に対応する初期救急医療体制は、在宅当番医制度28郡市医師会、
休日夜間急患センター27カ所が担当します。
<救急医療機関の定義>
救急医療機関の定義は、「基準に該当する病院又は診療所であって、その開設者から
都道府県知事に対して救急業務に関し協力する旨の申出のあったもののうち、
都道府県知事が(中略)医療計画の内容、当該病院又は診療所の所在する地域における
救急業務の対象となる傷病者の発生状況等を勘案して必要と認定したもの」とされています。
また、病院と診療所の違いは、
病 院 患者20人以上の収容施設(病床)を有するもの
診療所 患者の収容施設を有しないもの(無床診療所)
または患者19人以下の収容施設を有するもの(有床診療所)
とされています。
<救急医療体制の充実に向けた3本柱>
埼玉県は平成25年、久喜市で発生した救急搬送を36回たらい回しにされた後、
他県に搬送後に患者がお亡くなりになった事例を踏まえて、
救急医療体制の充実に向けた3つの取組みを行っています。
◆救急搬送体制の強化
・新たな救急医療情報システムの導入
H26からタブレット端末の活用がスタートし、H26には群馬県との連携が始まります。
H29にはスマホ機能が導入され、H30に東京都とも連携が始まります。
自治体との連携はその後(R2)千葉県・茨城県に広がります。
・ドクターヘリの運行
H27「隣接する群馬県との間でドクターヘリの広域連携体制を構築し、
より多くの事案に対応することで、救命率の向上を図る」ため、
群馬県との広域連携がスタートし、両県で救急対応を補い合っています。
(R5時点での救急搬送事例は、埼玉県➡群馬県が87件、群馬県➡埼玉県が144件)
・ドクターカーの運行支援
◆受入医療機関の整備
・救命救急センターの指定
・搬送困難事案受入医療機関の整備
「救急隊が緊急又は重症疑いと判断した患者が2回以上受入れを断られた場合、又は、
それ以外の場合でも一定回数(6回程度)以上受入れを断れた場合等に原則として
受け入れる」との受入条件を設定し、埼玉県全域から受入れを行う13病院、
地域限定で受入れを行う6病院が指定されています。
・精神合併症受入強化
・脳卒中治療ネットワークの運用
・転院支援システムの運用
・大動脈緊急症ネットワークの運用
◆適正受診の推進
・救急電話相談の充実
・相談時間の24時間化
・♯7119の導入
・AI救急相談の運用開始
救急搬送件数が増加する中、救急車・医師が対応しきれない(遅れてしまう)状態を
緩和する為、適正受診の推進に取組んでいます。
その背景には、小児救命の場合、約65%が緊急の対応が不要な事案であること、
大人の救急の場合、約80%が緊急対応が不要な事案であったことに拠ります。
ここで言う「救急対応が不要な事案」とは、「翌日、日中にかかりつけ医に行く」
「症状が2,3日持続するようであれば医療機関へ行く」よう勧められた事例を含まれます。
わずかではありますが、一部「タクシー代わりに救急車を呼ぶ」事例も発生している状況
ですので、限られた医療資源が必要な人に行き渡るよう、一人ひとりが適切な受診判断が
できるようになりたいですね。
次回、4月度mwe交流会は、4月9日(火)開催です。
<交流会テーマ>
国籍や民族が異なる人々が互いの文化的違いを認め合い、地域社会で暮らすために…
『人口減少社会、少子高齢化社会でよく生きるため、「多文化共生」について考えよう!』
埼玉県の在留外国人数は、約20万人(R3.6時点)となり、県民のおよそ37人に1人が
外国人です。現在、外国人が共に地域で生活することはごく当たり前になり、
多文化共生を取り巻く課題も多様化している状況です。
埼玉県の人口、生産年齢人口がともに減少する一方、高齢者が増加し、
地域社会の担い手・事業活動を支える人材の確保が課題となっています。
その中で、外国人は今後も増加が見込まれており、埼玉県が将来にわたり活力を
維持するためには、外国人を含む多様な人々が暮らしやすいと感じ、
それぞれが能力を発揮して活躍できる多文化共生の地域づくりが求められています。
今回の交流会では、国籍や民族が異なる人々が互いの文化的違いを認め合い、
地域社会の構成員として共に生きていく姿に向けた「埼玉県多文化共生推進プラン」
を解説頂きます。
SDGs17のテーマ「10.人や国の不平等をなくそう」の理解を深めながら、
今後、私たちの生活、事業活動でなくてはならない「外国人材との多文化共生」
について考える交流会です。
<講演>
講演① 「埼玉県の多文化共生の地域づくりについて」
~日本人と外国人が共に支え合う「埼玉県多文化共生推進プラン」~
講 師 埼玉県 県民生活部 国際課 多文化共生担当(講師調整中)