2024年2月度(第147回)mwe交流会を開催しました! | mwe

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◆今月のmwe交流会のテーマは?
今月のmwe交流会のテーマは、
社会的・経済的なつながりを取り戻し、制度の狭間から抜け出すために…
「生活困窮者を取り巻く環境を知って、支援制度の概要を理解しよう!」
です。

mweでは過去4回に亘り「子どもの食支援交流会」を開催してきましたが、
今回は“食”に留まらない生活困窮世帯の支援制度について包括的に学ぶ交流会です。

新型コロナも拡大期~アフターコロナに移行し、4年目に入りましたが、この間、
非正規労働者が大黒柱となっているご家庭(ひとり親家庭)では厳しい生活状況が
依然として続いています。相対的貧困率が15.4%と米英よりも格差が大きく
なっているのが現状です。

何か支援をしたいけれど、何から始めれば好いかわからない…という方々のために、
現状の生活困窮者を取り巻く環境を押さえて、埼玉県が取組む支援制度を紹介します。
皆さんの生活圏で具体的な支援がイメージできるような交流会になれば、
企画した甲斐があります。

SDGs17のテーマ「1.貧困をなくそう」の理解を深めながら、
自分の半径2ⅿからできる社会貢献について考える交流会となりました。

今月の交流会もよろしくお願いいたします!


◆理事長によるmweフィロソフィの共有


毎月、交流会の始まりは、mwe杉田理事長によるmweフィロソフィの共有からです。

mwe活動で大切にしている理念(「利他」「協働」)を異なる側面からお話する時間です。

日頃、仕事に追われて、忘れている「大前提」「原理原則」に立ち返る時間になっています。

今月のテーマは、『「心を伝える」即行と継続』です。


◆財団交流会 講演①◆


テーマ :「 生活困窮者支援制度について 」
     ~子どもがいる世帯への支援~
講 師 : 埼玉県 福祉部 社会福祉課 主事 大石美沙様

冒頭、埼玉県 大石様より、「生活困窮者自立支援制度について」解説を頂きました。

<3段階のセーフティネット>
現在、日本には3段階の仕組みが用意されていて、第1のセーフティネットとして

労働保険制度と社会保険制度があります。1つ飛ばして第3のセーフティネットとして、

生活保護制度があります。

そして、真ん中の第2のセーフティネットは、比較的新しく追加された「求職者支援制度」

と「生活困窮者自立支援制度」です。これらは生活保護受給者や非正規雇用者の増加など

により、困窮状態となるリスクが増したため、生活保護に至る前の段階から、

早期に支援を行うためにつくられた制度です。

<「生活困窮者自立支援制度」とは?>
この制度は、平成27年4月1日に作られた生活困窮者自立支援法に基づいています。

生活保護を受けている人以外の、生活に困窮している人に対して、

支援を行う目的で制定されました。

実施するのは、福祉事務所が置いてある自治体ということになっており、埼玉県では、

市は市で、町村は県で担当しています。例えば、さいたま市にいらっしゃる方で

生活に困っている方は、まずさいたま市の窓口で相談いただき、

本人の状況に応じた支援を行います。

<生活困窮者はどんな人?>
さて、次にあげる人たちは、生活困窮者にあてはまるでしょうか?
 1人目は、仕事が見つからない人
 2人目は、住むところがない人
 3人目は、収入は多いがそれ以上にお金を使ってしまう人
 4人目は、仕事がない引きこもりだが、親がいるので生活に困っていない人

答えは、「全員が生活困窮者」です。

法律では、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなる

おそれのある者と定められています。先の4人の例では、みんな今現在困っていて、

最低限の生活が困難になってしまう可能性があるので、対象となります。

<困窮世帯の子どもの学習・生活支援って?>
経済的に苦しい家庭で暮らす子供たちは、幼い兄弟姉妹の世話、病気を抱えた保護者の看病、

不登校やひきこもりといった事情で勉強に取り組みづらい環境であることが少なくありません。

結果として、一般的な世帯の子どもと比べ、高校進学率が低いといった、学力面での格差が

生じてしまっているのが現状です。学力面での格差は不安定な就労に繋がり、

再び生活保護を受給するあるいは経済的に苦しい状態が続いてしまいます。

いわゆる「貧困の連鎖」という状態です。

このような貧困の連鎖を解消するため、各自治体では生活保護や生活困窮世帯の子供を

対象とした、学習支援を実施しています。その一番の目的は高校進学の支援と

高校中退を防止することです。

具体的な支援として、学習教室で宿題や受験勉強などのサポートを行うほか、不登校や

引きこもりの子には家庭訪問をして勉強を教えたり、進路相談に乗ったりしています。

埼玉県の場合、中学生の支援はすべての市町村、高校生の支援も9割近くの市町村で

実施しています。この事業は単に勉強を教えるだけでなく、厳しい生活環境に置かれている

子供たちに寄り添い、その子が抱える悩みを一緒に受け止めることで、学校や家庭以外にも

「心を休められる居場所」があることに気づいてもらうことを目指しています。

また、子供たちへの支援だけでなく保護者への支援も重要です。自治体によっては心身の不調

や失業状態などで子育てに困難を抱える保護者の相談に応じて、世帯全体を見据えた幅広い

支援を行っているところもあります。

最後に全体を整理すると・・・
まずはお住いの自治体の自立相談支援機関にご相談いただき、支援員と一緒に計画を立てて、

各種の支援を受けて頂く流れとなっています。各種の支援というのは、自治体によって異なり

ますが、住まいや、就職、家計のやりくりなどの支援があります。生活に困りごとを抱えて

いる方を見かけた際は、その方のお住いの自治体の自立相談支援機関にご相談ください。


◆財団交流会 講演②◆


テーマ :「 生活困窮者自立支援法における学習・生活支援事業について 」
     ~アスポート学習支援の現場から…~
講 師 : 一般社団法人 彩の国子ども・若者支援ネットワーク 代表理事 土屋匠宇三様

続いて、土屋様より、埼玉県の取組みが先進事例として全国に展開するようになった

「アスポート学習支援事業について」解説を頂きました。

<子どもの貧困の現状…>
現在、子どもの貧困率は、11.5%となっており、9人に1人が貧困家庭の状況です。

ひとり親世帯(親+子)で手取り20万円ほどで生活をしています。

また、生活保護世帯の高校進学率は、86.9%(2010年・埼玉県)であり、低学歴・不登校・

いじめ・高校中退であるケースが多く、4人に1人が再び生活保護世帯になっている現状です。

<アスポートでの学習・生活支援とは?>
「家庭訪問」と「学習教室」の二つの支援があります。

「家庭訪問」では、対象世帯を直接訪問し、教育相談・進路相談を行います。これは、

家庭環境を把握し、親子から勉強や生活習慣の悩みを聴くことが目的です。支援員は子ども

・保護者との信頼関係を構築するために子どもの目線を合わせた支援を行っています。

土屋さんのエピソードで印象的だったのは、実際に支援を行った子どもについての話です。

最初のうちは打ち解けずに会話もぎこちなかったものの、子どもが好きなゲーム

(任天堂スイッチ)を一緒にやりながら距離感を縮めて行きます。

子どもにとって土屋さんが安心な人で、何を言っても大丈夫な人と分かると話が弾むように

なってきます。地味なコミュニケーションですが、子どもたちにとって・・・
  ・何を話しても好い、頼ってもいい大人であることの発見
  ・自分のために時間を費やしてくれる(大切にしてくれる)経験

ができることで学習・生活支援のスタートラインに立つことができます。

話を聴いていて当然と言えば当然ですが、いきなり学習支援の場に誘っても子どもたちは

来ないですよね。土屋さんのような地道なコミュニケーションがこども達に溶け込んでいる

のを実感しました。

「学習教室」では、分かる楽しさが実感できる学習環境を創ることが目的です。学ぶことで

拡がる世界があり、学習教室が子どもの良さを引き出す居場所になっていることが判ります。

学習支援では、支援員やボランティアによるマンツーマン指導で、こども達一人ひとりに

合わせた学習支援に取組んでいます。

<「学習教室」で明らかになったこと>
土屋さんが学習教室でこども達に接する中で明らかになったことは、以下の5点です。
 1.ひとり親世帯が8割であること
 2.極端な低学力な生徒の存在(小学4年生の問題で平均点が38点)
 3.不登校率が20%であること
 4.生活保護世帯の中学3年生進学率が94%であること
 5.朝食を食べない子どもが30%もいること

そして、家庭訪問を通じて、以下の7点の実態を知ります。
 1.ひとり親世帯である  71人(80%)
 2.保護者が疾病を患っている  51人(58%)
 3.保護者の最終学歴が中学高卒である  17人(19%)
 4.親が外国人である  18人(20%)
 5.不登校の状態である  28人(31%)
 6.極端な低学力の状況である  12人(13%)
 7.生活保護世帯である  76人(86%)   (支援を行った中高生88人より)

<アスポート学習支援で変化する子どもたち>
2010年、埼玉県が全国で初めて生活保護世帯を対象に住宅や就労、教育を柱とした学習・

生活支援事業「アスポート事業」を始めます。

当初、学習面から支援する埼玉県独自の学習支援事業は、進学に向け受験勉強に取組む

中学3年生を対象に行われました。参加した160人の受験生の大半が進学し、次年度以降も

成果を上げたことから、全国のモデル事業として注目されます。

その後、2015年には生活困窮者自立支援法が施行され、国の制度としても学習支援事業が

位置づけられます。事業開始から10年が経過した2019年には、埼玉県内で中学、高校

全学年を対象に173の学習教室で、2,416人の生徒が参加するまでに裾野が広がりました!

アスポート事業によって子どもたちの“変化”がありました。
「頼ってもいい大人の発見」
 :自分のためにわざわざ家庭訪問・学習教室に来てくれたこと。
  2時間の勉強を見てもらえた初めての経験ができたこと。
「自分を大切にしてもらう経験が自分を大切にする」
  :日々の何気ない声掛け、水面下での働きかけ
   三者面談、高校説明会への同行、自転車の乗り方を教えてくれた
「将来のことを気にするようになる」
「声が出る、表情が明るくなる、笑うようになる」


このようにアスポート事業の事例を聴いていると、子どもたちにとって「学ぶことで

拡がる世界がある」ことが分かりますね!

最後に(社)彩の国子ども・若者支援ネットワークが実施した、子どもたちへのアンケート

をご紹介頂きました。
<質問> 
 あなたがこの教室に参加して「自分が変わったな」と思うところは?
<回答>
 ・性格が明るくなった。よく笑うようになった。
 ・自分が何事にも挑戦する意識が変わった。
 ・将来のことについて深く考えるようになった。
 ・次のことを考え、目標が立てられるようになった。
 ・むやみに『分からない』と言わなくなった。
 ・最初は敵対心を頂いていましたが、私の話を聴いてくれたり、親身になって

  下さったりして、自分の世界の見方が少し変化したように感じた。

土屋さんは「子どもの幸福度」について・・・
 ◆大人たちからの温もり
 ◆学ぶことで拡がる世界
 ◆仲間たちとの支え合い、自分の役割の自覚
 ◆モデルとなる、真似したい年上・大人の存在
      を挙げます。

★ご存知ですか?★ 企業版ふるさと納税の寄付先に「学習支援促進事業」

「子ども食堂応援プロジェクト」が選ばれました!

埼玉県では、本県では、「埼玉県デジタル田園都市国家構想の実現に向けたまち・ひと・

しごと創生総合戦略」に基づき、以下の4つの基本目標を定め、地方創生に資する取組を

推進しています。

基本目標1:県内における安定した雇用を創出する 
      ~生産年齢人口減少期における経済活性化~
基本目標2:県内への新しいひとの流れをつくる 
      ~東京都区部への一極集中の克服~
基本目標3:県民の結婚、妊娠・出産、子育ての希望をかなえる 
      ~少子社会からの転換~

基本目標4:時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守る 
      ~異次元の高齢化への挑戦~

基本目標3を選ぶと、「学習支援促進事業」「子ども食堂応援プロジェクト」への寄付が

可能です。『地域のために何かやりたいけれど、何からやれば好いのか?』という場合、

まずは企業版ふるさと納税から始められては、いかがでしょうか?

埼玉県の企業版ふるさと納税(「学習支援促進事業」「子ども食堂応援プロジェクト」)

は以下のURLにアクセスなさって下さい。
➡https://www.pref.saitama.lg.jp/a0102/kigyobanfurusatonozei.html


◆財団交流会 講演③◆


テーマ :「 食品ロス削減とひとり親世帯支援の取組み 」
     ~「フードリカバリーセンター」「ペイフォワードパンリーシステム」の立ち上げ~
講 師 : 一般社団法人 日本フードリカバリー協会 代表理事 植田全紀様

2023年7月、mwe交流会で食品ロス削減とこどもの貧困を横断的に解決する取り組みとして「コミュニティフリッジ」をご紹介頂きました。実際、草加市でコミュニティフリッジを

立ち上げるまでの試行錯誤を実体験としてお話頂きました。

また、2023年12月には日本で最初にコミュニティフリッジを立ち上げた北長瀬コミュニティ

フリッジ(岡山県倉敷市)視察の機会を得て、mweメンバーで視察を行いました。

<「コミュニティフリッジ」とは?>
企業から寄付された消費期限間近の食品を冷蔵・冷凍保管し、支援が必要な人が24時間無料で受け取ることができる公共冷蔵庫です。利用者は児童扶養手当や就学援助などの受給世帯が

対象で、自治体から発行される証明書を提示し、スマホを鍵代わりにコミュニティフリッジに

出入りします。食品の受け取りは買い物時と同様、専用のバーコードを読み取り、受け取り

履歴を残し、商品を引き取ります。

現在、草加市のコミュニティフリッジでは、協力企業は10社を超え、利用者は周辺の市から

100名超に及んでいます。ひとり親家庭の利用が多く、『育ち盛りの子どもがいるので助かる』

『お腹いっぱいになる』など地域に根差した取組みになっています。

「コミュニティフリッジ草加」の取組みは、専用サイトをご覧下さい。

➡https://cf-soka.com/

国内で最初にコミュニティフリッジを開設した「北長瀬コミュニティフリッジ」でも

活動内容を公開しています。➡https://communityfridge.jp/

<コミュニティフリッジが次のステージに!>
植田さんからはここ半年ほどでコミュニティフリッジが次のステージに進みつつある状況を

ご報告頂きました。ポイントは「有料フードバンク」と「無料公共冷蔵庫システム」です。

「有料フードバンク/フードリカバリーセンターの立ち上げ」
埼玉県深谷市の物流企業との提携することで、大規模な物流倉庫の活用が可能になりました。

フードリカバリーセンターでは個々の団体・組織が食材の寄付を受け、配送をするコストを

一括で取りまとめることで運営コストを大幅に削減できる仕組みです。一か所に集められた

食品は、物流業者が本業として各フードパントリー・コミュニティフリッジに配送します。

大手食品メーカーでは一定量の食品を製造工程、運搬工程で廃棄をしている現状です。

そこで、フードリカバリーセンターでは、廃棄コスト以下のコストを設定し、食品を

受け入れることで、センターの運営コストを捻出しつつ、持続的な活動を行う狙いです。

現在、年間523万トンの食品が廃棄されており、
  家庭領域(244万トン)は、フードドライブが
  小売領域(62万トン)+卸領域(12万トン)は、フードリカバリーセンター
受け皿になることで、食品ロス削減+こどもの貧困を実現する狙いです。

昨年の時点では、フードリカバリーセンターのための大規模の物流施設をどうやって

立ち上げようか?と苦心していたところ、既に物流施設を持つ事業者との“つながり”が

一気に事業構想を進める推進力になりました!

「無料公共冷蔵庫システム/ペイフォワードパントリーの立ち上げ」
植田さんはコミュニティフリッジで、食品を「提供する人」と「受け取る人」が一方通行の、

一回限りの関係性になるのではなく、順繰りに善意が循環する姿を思い描きます。

それが、“ペイフォワード(恩送り)”です。
『恩を受け取ったら、別な誰かに恩を送ってほしい』という思いから、ペイフォワード

パントリーと名付けました。

いまは食品を「受け取る人」ではあるけれど、『今度は誰かにお返ししたい!』という

思いを育む考え方です。食品を「受け取る人」はいまは受け取るだけかもしれないけれど、

長い目で見た時、別の誰かに、自身が提供できるコトを「提供する人」になれば、

ペイフォワードが実現しますね

お金でモノをやり取りすることでは生まれない、持続性のある考え方と思います。
mweでは、「有料フードバンク/フードリカバリーセンターの立ち上げ」「無料公共冷蔵庫

システム/ペイフォワードパントリーの立ち上げ」を継続して追い掛けていきます。

次回、3月度mwe交流会は、3月12日(火)開催です。

<交流会テーマ>
自分が、大切な人が、いざという時に良質な医療サービスを受けるために…
『地域ごとの医療の現状を知って、「地域医療」「救急医療」について考えよう!』


急速な高齢化の進展による医療需要・介護需要の大きな変化が見込まれる中、医療や介護を

必要とする埼玉県民が、できる限り住み慣れた地域で必要なサービスを受けられる体制を

確保することが求められています。

そのためには、地域ごとに異なる条件や実情を踏まえ、限られた医療資源を効率的に

活用できる医療提供体制の「将来像」を明らかにしていく必要があります。そこで、

令和7年(2025年)の医療提供体制に関する構想として、平成28年(2016年)10月に

埼玉県地域医療構想を策定しました。

3月度交流会では、第7次埼玉県地域保健医療計画(平成30年度(2018年度)~令和5年度(2023年度))と“その後”ついて解説いただきます。

SDGs17のテーマ「3.すべての人に健康と福祉を」の理解を深めながら、地域医療について考える交流会です。

<講演>
講演① 「埼玉県地域医療構想について」
     ~埼玉県地域医療構想の内容と、埼玉県の取組み~
講 師 埼玉県 保険医療部 保険医療政策課 企画・構想担当 主査 工藤 一郎 様

講演② 「救急医療の取組みについて」
     ~埼玉県の救急医療の現状や、県が進めている救急医療の取組み~
講 師 埼玉県 保険医療部 医療整備課 地域医療対策担当 主事 堀 良徳 様