◆今月のmwe交流会のテーマは?
今月のmwe交流会のテーマは、
身近な人が、大切な人が支援の狭間で取り残されないように…
「人がつながる、デジタルでつながる“見守りシステム”を学ぼう!」です。
コロナ禍、人々の直接の接点(つながり)が希薄になり、リモート(遠隔)・非接触が
日常になってしまいました。効率的な一面はあるものの、人とのつながり(関係性)
の中にいた人々(高齢者・障がい者・こども…)にとっては孤立・孤独といった問題が
顕在化しています。
今回の交流会では、SDGs17のテーマ「3.すべての人に健康と福祉を」の理解を
深めながら、「行政が主体的に取組む見守りサービス」の事例をベンチマークすることで、
孤立・孤独をデジタルで克服する事例から学ぶ!交流会となりました。
今月の交流会もよろしくお願いいたします!
◆理事長によるmweフィロソフィの共有
毎月、交流会の始まりは、mwe関専務理事によるmweフィロソフィの共有からです。
mwe活動で大切にしている理念(「利他」「協働」)を異なる側面からお話する時間です。
日頃、仕事に追われて、忘れている「大前提」「原理原則」に立ち返る時間になっています。
今月のテーマは、『「教える」ことは「学ぶ」ことである』です。
◆財団交流会 講演①◆
テーマ :「 埼玉県の福祉政策の概要について 」
~高齢者福祉・障害者福祉・児童福祉を包括的に知る~
講 師 : 埼玉県 福祉部 福祉政策課 主幹 川村淳一様
冒頭、川村様より、埼玉県の福祉政策という幅広い領域の事業について説明がありました。
日頃、高齢者・障がい者など個別事業にフォーカスをしてきましたので、
全体感を押さえるという意味でもとっても貴重な時間となりました。
<埼玉県の現状と将来推計>
令和2年(2020年)、埼玉県の後期高齢者(75歳以上)人口は約97万人であり、令和7年(2025年)には約121万人に増加し、全国トップクラスのスピードで増加する見込みです。
単純に高齢化率だけを比較すると、全国最高値の秋田県(37.5%)と埼玉県(27.0%)
では10ポイント超の差がありますが、高齢者の絶対数で比較すると、
秋田県(35.9万人) < 埼玉県(198.3万人) と逆転している状況です。
<「地域福祉施策」とは?>
地域福祉施策は、県民一人ひとりが住み慣れた地域で生き生きと安心して暮らせるよう、
多様な主体が連携・協働し、共に支え合う地域づくりを目指し、地域福祉を推進します。
高齢者・障がい者・孤立しがちな家庭など「支援を必要とする方々」を、
「行政」(市町村・社協)、「住民」(民生委員・ボランティア・自治会)、
「団体」(民間事業者・医療機関・福祉施設・地域包括支援センター)などが連携して、
地域全体で課題解決に取組みます。
具体的には福祉の縦割りを超えた総合相談の実現に向けて・・・
1.ワンストップ型総合相談窓口の設置
2.複合課題を調整するチームの設置
これらを通じて、『たらい回しにしない!』という強い思いが表れています。
<「高齢者福祉施策」とは?>
高齢者福祉施策は、介護や支援が必要になっても、安心して家庭や地域で生活を
続けられるように、介護・医療・予防・住まい・生活支援などのサービスが
身近な地域で提供される仕組みづくりを支援します。
埼玉県の高齢者を取り巻く環境(令和5年3月末時点)を俯瞰すると・・・
高齢者(65歳以上)の数 1,972,565人
その内、要介護認定者数 336,810人
要介護認定率は16.65%で全国でも5番目に低い数値となっています。
高齢者が社会とつながり、いつまでも活躍できる居場所づくりとして・・・
埼玉未来大学 県内9カ所
老人クラブ 2,559団体(会員数:124,224人)
シルバー人材センター 59団体(会員数:45,294人)
まだまだ、社会とつながるために“外”へ出向く高齢者の方々は一部となっています。
※埼玉未来大学:昭和51年度に老人大学として開設し、以降、老人大学校(昭和60年度)、
彩の国いきがい大学(平成6年度)と名称を変更し、令和2年4月から「埼玉未来大学」
として生涯学習を支援するリカレント教育の場へと刷新しました。
「埼玉未来大学」専用サイト:https://www.iki-iki-saitama.jp/mirai/
地域包括ケアシステムの理念に沿って、「高齢者の社会参加」を促す方向にシフト
していきます。“これまで”の介護予防は、どちらかと言えば機能回復訓練中心
(自己完結型)でしたが、“これから”の介護予防は、機能回復訓練に加えて
「社会参加・社会的な役割を得ること」に高齢者の活動領域が広がって行きます。
「支援する側」と「支援される側」の垣根をなくすことで、元気な高齢者には元気で
居続けて頂くことで健康長寿・医療費削減を実現する狙いがあります。
高齢者の皆さんにとっては●現役時代に能力を活かした活動、●興味関心がある活動、
●新たにチャレンジする活動で社会参加・社会的な役割を得ることに繋がります。
<「障害者福祉施策」とは?>
障害者福祉施策は、障がいのある人が障害のない人と分け隔てられることなく、
地域の中で共に育ち、学び、生活し、働き、活動できる共生社会の実現を目指し、
福祉サービスの基盤整備を進めると共に、障がい者の地域生活や就労の支援、
共に学ぶ教育の充実、安心・安全なまちづくりなど総合的な環境づくりを推進します。
埼玉県内の障害者手帳所持者は、約3.3万人で県人口の4.6%となっています。
内訳を見ると・・・
身体障がい 201,687人
精神障がい 78,220人
知的障がい 56,496人
多くは身体障がいですが、近年は精神障がい・知的障がいの手帳所持者が増加傾向です。
障害者の就労支援では、「一般就労への促進と工賃向上」の2大施策に取組んでいます。
就労移行支援事業所から一般就労へ移行した障害者の数は、平成30年(1,025人)、
令和2年(1,036人)、令和4年(1,145人)となっています。
さて、一方の工賃向上ではなかなか、工賃upの難しさに直面している状況です。
就労継続支援B型事業所における工賃は、埼玉県平均で14,024円/月(令和4年)と
大変厳しい状況です。1か月作業を行ったお給料が15,000円に満たない状況です…。
埼玉県では月2万円の工賃に向けて、一般就労に至らない障害者がパン・クッキー・
木工品づくりや、清掃・内職などの軽作業で得る工賃の工場を目指しています。
<「生活困窮者支援施策」とは?>
生活困窮者支援施策は、生活保護に至る前の段階の生活困窮者に対し、
早期かつ包括的な相談支援を実施します。
支援施策は、「居住確保支援」「就労支援」「緊急的な支援」「家計再建支援」
「子ども支援」の5つで構成されています。
➡2月度交流会(2024.2.13)では「生活困窮者自立支援制度」について解説します。
子どもの貧困の解決に向け、埼玉県では経済的に恵まれない子どもに対する
学習支援事業などにより、「貧困の連鎖の解消」に取組んでいます。
具体的には、貧困の連鎖解消を目的に生活保護世帯などの子どもを対象とした
学習支援事業(アスポート事業)を実施しています。元教員などの支援員や
大学生ボランティアが特別養護老人ホーム等で学習支援を行います。
アスポート事業の成果としては・・・
高校進学率 平成21年(86.9%) ➡ 令和4年(99.5%)に向上
高校中退率 平成24年( 8.1%) ➡ 令和4年( 1.9%)に改善
されてきました。
この他、子どもの居場所づくり(サードプレイス)として、こども食堂・
プレーパークの設置も続々と拡がっています。
本当に幅広い領域での福祉施策となっており、実施も大変かと思います。
ただし、これだけ、多彩な支援事業がありながらも“支援の狭間”で苦しむ生活者が
いるのも現実です。できるだけ、あまねく皆様に支援が行き届きますよう、
mweでは行政の支援施策の情報発信を継続して参ります。
皆さんもまずは「知る」ところから初めて頂けますと有難いです。
◆財団交流会 講演②◆
テーマ :「 自治体発!LINEを使った安否確認システム 」
~北海道栗山町、千葉県我孫子市での導入事例から見守りのいまを学ぶ~
講 師 : 特定非営利活動法人 エンリッチ 代表 紺野功様
交流会後半は、ご兄弟を孤独死で亡くした経験から『孤独死をなくしたい』という
強い思いから『生活者が日ごろから繋がるカンタンな方法はないか?』を模索する中、
LINEサービスに辿り着き、LINEを使った安否確認システムを開発するに至ります。
サービス開始(2018年)から6年、15歳~105歳までの生活者13,000人超が使用する
サービス(専用サイト:https://www.enrich.tokyo/index.html)となりました。
今回はその安否確認システムの開発背景、活用方法などをご紹介いただいました。
<“孤独死”って多いの?>
近年、加齢だけでなく、病気等のリスクを抱えながら独り暮らしをしている方の孤独死が
問題になっています。現役世代(60歳未満)で孤独死した人の割合は約4割です。
一般社団法人日本少額短期保険協会「第6回孤独死レポート」によると、
孤独死が多い年代は、
60代(30.6%) ➡ 70代(20.9%) ➡ 50代(19.2%) ➡ 40代(10.1%)
の順となっており、現役世代の割合が思っていた以上に多いことに驚きました。
また、死後発見までに時間が掛かることが多く、発見までの平均日数は全国的に
14日以上となっています。
先の「第6回孤独死レポート」日本少額保険協会では、地域別孤独死の平均年齢と
発見までの平均日数が比較されています。
孤独死時の平均年齢 発見までの平均日数
北海道・東北 58.1歳 17日
関 東 62.8歳 17日
北 陸 ・中 部 59.1歳 15日
関 西 61.5歳 14日
中 国 ・四 国 58.4歳 17日
九 州 ・沖 縄 57.2歳 16日
<「安否確認サービス」って何?>
これら孤独死の問題に対して、認知度・普及率が高く、使い勝手の良いLINEを
使ってご家族や仲間同士で見守り、支え合い孤独死の解決(早期発見)を
目指したのが安否確認サービス「コネクトハート」です。
利用者はLINEを通じて設定されたタイミングで届く、安否確認に「OK」ボタン
をタップするだけで見守りの双方向コミュニケーションが完結します。
具体的な安否確認は以下の流れです
・2日に1回、朝8時に安否確認を設定
・「OK」が無ければ、24時間後に再通知
・それでも「OK」が無ければ、3時間後に管理者(近親者)宛にLINE通知
<こんな方々が使用しています!-導入事例->
◆離れた家族や親族
疎遠になっている家族や親族の間で、もしもの場合に一定の距離を保ちながら利用。
このサービスをきっかけに連絡を取り合うようになり関係性が好転。
◆高齢化が進む集合住宅
過疎化が進み、取り残されつつある集合住宅の自治会で、近くに親族のいない
単身高齢者が誰も取りこぼさない社会を目指して支え合いの活用に利用。
◆外部との接触を望まない方
地域の単身者を支える活動をしている方により、ひきこもりがちな方のもしもの時の
早期発見のために活用。深入りせず一定の距離感を保ちつつ、緊急時の早期発見が可能。
<行政での導入事例>
2023年3月、千葉県我孫子市でLINEを使った安否確認サービスが導入されました。
導入前、我孫子市では市民に対するスマホ・LINEアプリの使い方講座や相談会を
実施しており、LINEを活用した見守りサービス導入の素地が整っていました。
当時、我孫子市では孤立死に係る通報が頻繁にあり、その対応に苦慮していた状況でした。
残念ながらお亡くなりになった状態で発見された方の多くは、他者とのつながりが希薄で
孤独・孤立への対策の必要性を実感していました。
併せて、一人暮らしの高齢者の見守りの仕組みについての問い合わせが、地域住民から多く、
情報をまとめていたこともあり、見守りサービスに関心を持っていたところでした。
そこで、我孫子市では社会福祉課・高齢者支援課・障害者支援課が3課共同事務局となり、
孤立死防止対策を推進しており、対策や分野を超えた見守りの仕組みの構築を目指して
行くこととなりました。
★我孫子市HP:https://www.city.abiko.chiba.jp/kenko/mimamori/mimamorishien.html
この他にも北海道夕張郡栗山町、多摩市集合住宅高齢化対策委員会などでもLINEを
使った見守りサービスが導入され、着実に生活者の中に浸透しつつあります。
今後は更なる自治体・社会福祉協議会(千葉県習志野市・神奈川県厚木市・東京都江東区)
への普及・浸透と共に、工業系大学(神奈川大学・芝浦工大)との官民連携による
システム開発にも取り組む計画です。
次回、2月度mwe交流会は、2月13日(火)開催です。
<交流会テーマ>
社会的・経済的なつながりを取り戻し、制度の狭間から抜け出すために…
『生活者困窮者を取り巻く環境を知って、支援制度の概要を理解しよう!』
mweでは過去4回に亘り「子どもの食支援交流会」を開催してきましたが、
今回は“食”に留まらない生活困窮世帯の支援制度について包括的に学ぶ交流会です。
新型コロナも拡大期~アフターコロナに移行し、4年目に入りましたが、この間、
非正規労働者が大黒柱となっているご家庭(ひとり親家庭)では厳しい生活状況が
依然として続いています。相対的貧困率が15.4%と米英よりも格差が大きく
なっているのが現状です。
『何か支援をしたいけれど、何から始めれば好いかわからない…』という方々のために、
現状の生活困窮者を取り巻く環境を押さえて、埼玉県が取組む支援制度を紹介します。
皆さんの生活圏で具体的な支援がイメージできるような交流会になれば、
企画した甲斐があります。
SDGs17のテーマ「1.貧困をなくそう」の理解を深めながら、
自分の半径2ⅿからできる社会貢献について考える交流会です。
<講演>
講演① 「生活困窮者自立支援制度について」
~子どもがいる世帯への支援~
講 師 埼玉県 福祉部 社会福祉課
医療保護・生活困窮者支援担当 主事 大石美沙様