2007.12.18社会レポート
■米サブプライムロ-ン問題で欧米の主要中央銀行が大量の資金を供給する緊急声明を発表。FRBは、11日FOMCで0.25%の利下げを実施、今後も更なる利下げを示唆。更に、年末までに最大400億ドルの越年資金をマ-ケットに供給し、ドルの資金調達も支援するとした。世界の主要中央銀行が流動性を維持するために大規模な協調体制をとる事は異例のことであるが、金融不安を拡大させないことを優先させた。あらゆる担保証券が格下げとなり、米ワシントンでは、ロ-ンが払えず住宅差し押さえ件数が急増。フロリダ州では公的年金の解約引き下ろしが殺到し、当局は解約を凍結している。しかし、ロ-ンの残高は120兆円規模で不動産・住宅価格や株式時価総額に比較して、大した金額ではない。不動産・住宅価格は2000年から比較して2倍~4倍になっており、高値から30~35%の下落といっても時価総額は膨らんでいる。株式時価総額は1800兆円だ。シテイやバンカメ、メリルリンチなどの損失は巨額であるが、シテイGがアブダビ投資庁から75億ドルの出資受け入れや金融機関の資本増資も進展していている。販売している全てのデリバテイブ商品が破綻するわけではない。無論、商品を最も多く保有しているのがヘッジファンドであり、総額は銀行や証券の比ではなく、従って、資金量が脆弱なヘッジファンドの破綻はある。サブプライムロ-ンの問題は、米国経済1―3月期を揺さぶっていくだろうが、全貌が見えてきたことで最悪期は過ぎた。米国に流入していた巨額のマネ-の運用先の一部は、欧州株式や日本株式や商品市場にまわる。だが、その多くの資金の受け皿は米国であり米国マ-ケットでしかない。オイルマネ-や中国・ロシアなど新興国の膨張マネ-が米国を支えるだろう。
2007.12.3社会レポート
■連日に亘り経済に無縁なニュ-ス番組でも触れない日が無いほど、有名になってしまった米サブプライムロ-ン問題。クリスマス商戦はその影響が懸念されたが堅調で、消費不振を先読みして大幅なデイスカウントで客寄せしたこともあるが、大方の心配をよそに客足は好調だ。金額ベ-スでの伸びも期待されるところ。7-9月期四半期GDP数値も予想を上回り、マ-ケットにとって朗報だ。サブプライムロ-ン問題は08年春まで影響が残ると思われるが、アブダビ投資庁のシテイバンク出資や、FRBのスピ-デイな対応により収束の方向に向かうと考える。ユ-ロ経済圏でも欧州中央銀行はFRB以上に流動性供給を行っている。ただ、米国経済減速懸念から米国一極集中であったホットマネ-の一部は米国からの逃避で、資金が『日本買い』に流れてくる可能性がある。ホットマネ-だけではない。ソブリン・ウエルス・ファンドと呼ばれる政府系投資ファンドである。中国の外貨準備155兆円の一部で、日本株投資に乗り出す報道や、ドバイ政府投資会社が大量のソニ-株を取得。ロシア政府系投資ファンドまで日本買い参戦を表明して、下値では静かに買いを入れている。新興市場であるBRIC’やVISTA経済は成長を継続し、英国・フランスなどユ-ロ圏の景気も堅調だ。ジャブジャブに有り余る膨張したマネ-の行き先は、リスク分散をし居所を変えながら、結局は日本や米国に還流することになる。チャイナマネ-・オイルマネ-の、世界的な株式持合いによる『08年~2010年バブル相場』のスタ-トとなる可能性が高い。
■今年末の韓国大統領選挙を皮切りに、08年には「台湾・ロシア・米国」の大統領選挙が実施される。北京オリンピック開催の08年は、大統領選挙年でもある。当選する顔ブレによって、世界は緊張ム-ドが高まっていく可能性がある。韓国の大統領選挙は野党の反北朝鮮のイ・ミョンパク前ソウル市長が、経済スキャンダルをモノともせず頭一歩抜け出している。イ候補が当選すれば北朝鮮との関係は悪化する。台湾は与野党中傷合戦で混戦模様。ロシアは、経済成長を糧に武力を増強したプ-チン政権が、息のかかった候補を有利にするため言論封鎖やマスコミに圧力をかけている。退陣後の影響を残したいためだ。米国は民主党ヒラリ-・クリントンが、米国歴史上初めての女性大統領に就任する可能性が極めて高い。いずれの国も、初めての大統領就任となる。日本を囲む4カ国のトップが新しい世界戦略を構築していくが、米国⇔台湾は中国と日本、米国⇔韓国は中国と北朝鮮、米国⇔ロシアは中国と日本に、それぞれの関係が微妙に変化するだろう。極東では、急速な経済成長を実現した中国と台湾がきな臭い関係となり、台湾海峡で小競り合いが頻発する。そこに米国が介入していくだろう。イスラエルを巡って、中東イスラム圏に対し米国とロシアが、再び、対決ム-ドになる可能性がある。2010年の世界各国の構図は、原油や水、金属や資源や環境を巡って緊張が拡大する。
2007.11.26社会レポート
■証券優遇税制は継続すべきである。日本の株式市場は海外投資家が占める割合が65%を占める。海外勢は政治の混迷や政治トップのリ-ダ-シップ欠如を嫌う。税制や金利の動きがクルクルと変動するのは、リスクをとって中長期投資する場合に不利に働くからだ。自民党の税制調査会や財務省、民主党などの野党は、現行の証券優遇税制は金持ち優遇であるから、08年度で打ち切るべきだと主張している。今の税制は株価が8000円を割り込んだ時に、緊急に市場の救済策として時限付き特別税制で導入された。株価が持ち直してきたから、役目を終えたというのが彼等の主張だ。しかし、現在の株価の位置は、世界市場で年初から7・5%下落して世界19位と取り残されている。東証の時価総額は500兆円台で伸び悩み、NYダウ株式時価総額1800兆円の3分の1にも及ばない。この1年間で、中国にも追いつかれた。税制や規制の動きが変わるのは、海外勢の投資スタンスが変化するばかりではない。個人投資家も萎縮する。政治や年金の先行き不安は、1550兆円の個人金融資産に形を変えている。個人の株式投資の平均年収は400~600万円で、金持ちではない。団塊世代の大量退職で投資をはじめた退職者や、年金受給者のシルバ-世代もネット取引で株式や投資信託を買っている。政府や金融当局は、海外勢の投資や個人金融資産を活性化させるために、本気で市場を振興させなければならない。時限法の優遇税制ではなく恒久法で個人株主を保護すべきだ。国家100年の計で『決断と実行』を実践する政治家が欲しい。
■10年前の1997年~99年は金融不況の真っ只中であった。97年11月には100年の歴史を誇った山一證券が破綻、自主廃業を決めた。『飛ばし』という違法行為が発覚し、免許取り消し処分を受けた。その後、2600億円を越す簿外債務の存在が表面化、主力の富士銀行・メリルリンチ・外国生命保険会社に救済を求めたが、いずれも救済に応じず営業の継続を断念した。会社清算に当たり、山一は1万人の社員に退職金を支払い、本社や支店の資産を二束三文で売却して廃業した。この年は、1ヶ月の間に三洋証券が会社更生法を申請、北海道拓殖銀行が邦銀では初の経営破綻をした。山一證券の破綻は、言いようの無い信用不安の広がりと底知れぬ先行き不透明感が漂い、このままでは日本経済沈没までと言われた。慌てた橋本内閣は、翌年3月に都銀・長期信用銀行など21行に総額1兆8200億円の公的資金を投入したが、日本長期信用銀行や日本債券信用銀行が特別公的管理を申請。99年には国民銀行・幸福銀行・東邦生命・東京相和銀行・なみはや銀行が、続々と破綻。金融パニックとなった。戦後初の金融パニックは信用収縮を加速させ、中弱小企業の資金繰りを悪化させ体力の無い企業や金融機関の倒産の嵐が吹き荒れた。株価も連日の安値更新を続けた。あれから10年、日本の金融界は合併や統合を繰り返し、相当の体力回復となった考える。メガバンクの大株主はみずほFG以外は外資が中心で、邦銀といっても中身はゴ-ルドマンサックスやモルガンである。サブプラムロ-ン問題で揺れる金融業界だが、株安や構造不況連鎖倒産の『超大型ハリケ-ン』が上陸した10年前の金融パニックとは異なる。3大メガバンクの08年3月期は、記録的な高収益を計上すると考える。