「わたしのかあさん〜天使の詩〜」鑑賞 |  pianoforute村のムーミンママのブログ 

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6月4日(火)
県民文化ホールで、「わたしのかあさん〜天使の詩」を観ました。
知的障がいの両親を持つ少女の葛藤を描いた実話。
監督は山田火砂子。
山田監督は、70歳で監督を始め、現在92歳。
女性の映画監督としては、最高年齢です。
これまでに撮った作品は、10本。
その殆どは、実在する人の生涯を描いたもの。
私が山田監督の映画を最初に観たのは、日本で初めての女医の不屈の精神を描いた「一粒の麦 荻野吟子の生涯」でした。
映画は勿論感銘を受けましたが、監督の舞台挨拶が素晴らしかった!

今回も、舞台挨拶があるというので、開場5分前に行きましたが、既に受付が始まっていて、前の方は満席。
みんな監督のメッセージを聞きたいのね。

真ん中より少し後ろに座れました。
平日の午前中とあって、殆ど高齢者。
スクリーンには、山田作品の予告編が流れていて、待ち時間は退屈せず。
時間になって、山田監督が杖をついてステージに現れると、万雷の拍手。
歯に衣着せぬ物言いが、監督の魅力。
今回も、政治、福祉の問題をスパーン!と言い切る。
社会派の作品が多く、豊富な知識に裏打ちされたトークだからこそ爽快なのでしょう。

監督の御長女も知的障がいがあり、この映画の原作者の菊地澄子さんが勤務する「大塚養護学校」に長年通っていたそうです。

「私はこの映画を観て、笑って欲しいの。でも、皆さん泣くんですよね。日本人は優しいのね。でも、障がい者は、不便な事もあるけど、決して可哀想じゃないんですよ」

障がいがあるお子さんを育て、障がい者と長年関わってきた山田監督の言葉は、重みがあります。

実は、私、若い頃障がい者に対して、かなり偏見を持っていました。
が、養護学校の代替教員として働いた時、認識が大きく変わりました。
一緒に生活して分かった事です。

山田監督は、話が止まりません。
スタッフが止めなければ、延々と話続けそう。
およそ20分ほど、結構な早口で、流れるように話し続ける事に、度肝を抜かれました。
しかも、ずーーっと立ったままで。
92歳でも、まだまだ頭の切れ味抜群。
あーだの、うーだの、えーが多い政治家に、山田監督の爪の垢を煎じて呑ませたい。

前置きが長くなりました。
映画の粗筋です。

障がい者特別支援施設「愛清園」の園長である山川高子(常盤貴子)は、子供の頃からの親友の優子(安達祐実)に、母親・清子(寺島しのぶ)の事を、本にしないかと声をかけられる。
今でこそ障がい者福祉に従事する高子だが、子供の頃は、知的障がいがある両親を恥じて、苦しんだ時期があった。授業参観にやってきた母親が、まるで子供のようにおどけて、保護者と同級生から、失笑を買ってしまう。
何をやっても要領が悪く、おかしな母の振る舞いは、いつも高子を傷つけていた。
小学校4年の時、両親が知的障がいである事を知り、ショックを受け葛藤する。世間の声や目線に押しつぶされ「恥ずかしい、よその子になりたい」と思い詰めるが、優子の父(船越英一郎)や祖母(高島礼子)、両親の養護学校時代の恩師(東ちづる)、清子の兄太郎(春風亭昇太)ら、周囲の大人達の支えもあって、高子の心は、次第に癒されていく……。

山田監督は、「笑ってください」と仰ったけれど、泣き笑いになり、最後は本当に涙が止まらなくなりました。
ハッピーエンドなのに、流れる曲は、明るい子供達の歌なのに、泣けて泣けて。
私、映画を見てこんなに泣いたの初めてです。

1日に使えるお金2000円を封筒に入れ、日めくりカレンダーに貼り付ける清子。

こんな事を思いつくなんて、凄いよね。

土砂降りの中、ベンチで濡れているホームレス(小倉一郎)に自分の傘を与え、ずぶ濡れになりながら家に向かう清子を偶然見た高子は、心を動かされる。

清子が普通学校に通っていた時、担任の先生が、クラスの子に「清子の当番」を作った。トイレや体育館への移動の時、手を繋ぐ。
外へ出る時は、靴箱から靴を出して履かせてあげる。一見とても親切で良い試みと思えるが、それは、清子が成長しようとする芽を摘み取ってしまっていた。養護学校に転校したら、誰も手伝ってくれない。が、清子はとても明るくなり、良く話をするようになった。

寺島しのぶさんの演技が、とても素晴らしくて、
運動会で、先頭を走る高子に嬉しくて、一緒に並んで走る姿なんか、演技とは思えませんでした。

高子の幼少期を演じた、落井実結衣子ちゃんが、とても上手で可愛くて、素敵でした。何処かで見た事あるなぁと思ったら、大河ドラマ「光る君へ」で、紫式部の幼少期、まひろを演じたんですね。

実際に障がいがある子供、大人が大勢出演してましたが、とても自然な表情を見せていました。

「枠にはめて撮ったものほどつまらないものはない」
と山田監督。

それにしても、キャストの豪華な事。
先にあげた他に、渡辺いっけい、宅麻伸、辰巳琢郎、小倉一郎(現在は、小倉蒼蛙)、堀内正美、磯村みどり、松木路子、窪塚俊介、山田邦子など、演技派の俳優さんばかり。
この映画を制作した現代プロダクションは、小さな会社で、制作費が少ないので、出演料は後払いだそうです。興行が終わって得た収入から、支払う。

だから、山田監督の映画に出る俳優さんは、ギャラは度外視。
出られるだけでいいと。
寺島さん、常盤さん、小倉さん、渡辺いっけいさんのように、出演をを志願する俳優さんも多いとか。
監督の10作品中、小倉さんは5本、常盤さんは4本出演しています。

制作費がギリギリなので、俳優さんは、NGが出せない。
撮り直すと、それだけ費用がかさむから。
とても緊張するそうです。

山田監督も「日本を代表する俳優陣が、出てよ、の一言で出演してくださる。ウチのような「ただ」みたいなギャラで出てくれる人、いませんよ。有難い事です」と、舞台挨拶でおっしゃってました。

世の中に蔓延る差別や理不尽、政治への怒りを原動力に、メガホンを取り続ける山田監督の姿が、俳優魂を揺さぶるのだと思います。

この映画も、福祉の闇を、台詞にまぎれこませて、サラリと言わせている。

そうそう、この映画、字幕もありました。
聴覚が不自由な方も大丈夫。

上映会は、9月まで全国で行われるようです。
皆さんの近くでありましたら、是非是非ご覧くださいね。
1人でも多くの方に観て頂きたいです。

主題歌「いのちの輝」 作詞・作曲:朱花
これがまた素敵な歌で…。

君がいるそれだけで…ただありがとう
かけがえのないものを教えてくれる