タケノコの知恵 3 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

竹は1日に1m以上伸びるが、あの巨体が伸びた質量は通常の植物の伸びる質量とは比べ物にならない。

樹木草類の中で最も伸びるのは葛のつるだが、同じ1mの重さを比較すれば別格だと言うことが分かる。

伸びる仕組みも他の植物にはない独特の方法で、その為にあのような構造をしている。

それは竹独特の「空洞と節」で、他の植物は先端が伸びて幹や茎が太くなり、枝もまた同じ仕組みで育つ。

竹はそれぞれの節と節の間が同時に伸びるが、同じ強度を持つ樹木類からすれば驚異的なスピードで、草類の伸長速度をも軽くしのぐ。

しかも中身のない円筒形で、繊維はすべて縦に走り外側ほど強度が増している。

しなっても折れることのない強靭な円筒構造、中心に大黒柱を必要としない省エネ構造、一気に上を目指すスピード建築技術は高層ビル建築技術の比ではない。

地球上で最も高度な仕組みを持つ植物に物理を持ち込めない人間が竹の仕組みを解明出来ないのは当然だろう。

竹を高層ビルではなく身近な道具に例えるなら、釣りの延べ竿のようなものだ。

延べ竿は穂先から伸ばして継ぎ目をしっかり固めて行くが、竹はすべての節が同時に伸び、強度を要する根元から固まる。

樹木類と違ってそれから生涯伸びもせず太くもならない、つまりそれで十分だと言うように完全な形を保ち続ける。

一気に10m以上伸び続け、枝葉を出さない竹は人間から見れば非常識の部類に入るだろうが、光合成をしなくてもそれだけのエネルギーを有していると考えれば謎は解ける。

竹は単独で生きるのではなく群落であり、タケノコはゾウのように親達が協力して面倒をみる小象のようなものだ。


続く・・