新日本紀行 1 | 野人エッセイす

野人エッセイす

森羅万象から見つめた食の本質とは

NHKの番組、新日本紀行を何年ぶりかで見た。

もうなくなったのかと思っていたがまだやっているではないか。

野人が子供の頃からの番組だから相当息が長い。

30年前に放送した宮城県のノリ養殖を営む青少年を、被災後に再び取材していた。

ハンサムな青少年は・・今はサラリーマンのおじさんとして復興に取り組んでいた。

30年前の放送は、同じように当時ハンサムだった野人の姿と重なって見えた。

ほぼ同じ時期、野人はこの番組に関わった。

主役として登場したのではなく、番組作りに関わり、目的の映像が撮れるかどうかは野人の本能の嗅覚次第でプレッシャーをかけられたのだ。

当時の野人は26歳、東シナ海を股に挟んだ不定期航路船の船長。

依頼があれば未知の海域へも運び、一緒に無人島のジャングルにも分け入る。

月刊誌の依頼で潜ってシャークハンティングもやった。

撮影隊は10人くらいだったか、映像が撮れるまで3日から1週間のチャーターだった。

高額なギャラで引き受けた以上、何が何でもやり遂げるのがプロフェッショナル。

ターゲットは誰も撮影したことがないという「海底活火山の噴火口」・・・

そこから噴き出る溶岩・・いや、煙・・つまりエアーカーテンと言う無数の泡を撮るのだ。

そんな物騒なもん撮りに秘境の海の底まで命懸けで行くモノ好きもいない。

海底だからカモメのように上からとまれるが、陸なら熱くて噴火口には入れない。

噴火したら・・海の底で・・「潮汁」になってしまう。

依頼する方もアホだが、受ける方もアホ・・

国営放送にしては翔んでいる、野人もカモメのムーさんになって翔ぶことにした。



屋久島の一湊港で2人のクルーと大量の食糧や氷を船倉に積み込み準備完了、いつ帰れるかは未定だ。

海賊ムーロックは、お弁当持ってルンルン温泉気分で火を吐く島々「トカラ列島」に向けて出航した。

その時、クルーが船内に流したムージックは・・「かもめが翔んだ日」

船は見渡す限り水平線の黒潮本流の真っただ中、波しぶきは飛んできてもかもめなど・・・一匹も飛んで来なかった・・

秘境海域で音響測深機と睨めっこしながら停船しては本能の嗅覚で海面を・・くんくん

やっと見つけた噴火口を確かめる為に、野人はズボンを脱いでフツーのパンツ一枚で海に飛び込んだ。

プロダイバーが本業だったが海水パンツなど持っていない。

スキューバタンクを背負わず一気に30mの海底まで潜って行った。

パンツは途中ずり落ちたが浮上途中で回収すれば良いのだ。

海底は丁度よい湯加減の・・温泉になっていた。

浮上してVサインを掲げると船内から

「おお~~~!」と歓声があがった。

ただ・・潮流が速くて・・パンツは行方不明になっていた。



続く・・