二見の猪農園の端には何本かの木が植えられている。
地主さんが庭木の松や南天などを植えていたものだが、他にキンカンが2本ありたわわに甘い実を付ける。
マキの木も一本あり、このマキに実が付いていた。
マキは実を付けないものが多いが、小学生の頃は神社のマキの大木に登ってこの実を食べまくっていた。
ひょうたんのようなツートンカラーの実を付け、先端は硬く緑色で食べられないが、元の実は赤から黒熟してねっとりと甘く種が入っていない。
鳥がこの甘い実を食べようとすればどうしても先から食べなければならないから、うまく青い実の種も運ばれる仕組みだ。
実の中に種を仕込むのではなく、送料別にするところが洒落ている。
さすが神社仏閣、庭に植えられる「やんごとな木」木だ。
植物にも心、個性があり、面白いことをそれなりに考えていると言うことだ。
「一位彫り」で知られるマキに似た葉の「イチイ」の実は単体、赤く丸い実で非常に甘い。
兄弟でもイチイはオーソドックスな道を選んだようだ。
このマキの隣には「イヌビワ」の木があり、やはりねっとりと甘い実が黒熟していた。
イヌビワを植える人はいないから自生したものだが、たまたま隣に生えたのが面白い。
イヌビワは前にも紹介したが、別名「乳桃、チチモモ」で、実や葉茎をちぎると乳のような汁が出る。
朝鮮半島からイチヂクが伝わるまで、これが山のイチヂクで、古代の人はイチヂクがりを楽しんでいた。
実の形も味も乳汁もそっくりだったことから名を奪われ、いつの間にか「イヌビワ」の名を押しつけられてしまった可哀そうな元祖イチヂクだ。
野人にとってはどちらもどんな果物にも勝るご馳走で生命力が漲って来る。
テーマ森の食卓 古代イチヂク イヌビワ