おいで・・
マリンビレッジによく来ていた野良のタマが世を去った。
タマとはよく竹輪を分け合って食べた「竹輪の友」だった。
天寿をまっとうしたとは言えないが、これも運命だから仕方がない。
オスだが滅法喧嘩が弱くていつも満身創痍だった。
野人は出来得る限り兵法の極意を言い聞かせ、鍛えてやったのだが効果はなかった。
10日ほど前、久しぶりに姿を現したタマを見てその死期を悟った。
痩せて背骨もあばらも浮き出たタマはヨタヨタしていた。
野人はタマに最後の晩餐を用意してあげた。
小さい頃からメス猫の臨終は看取ったが、自由なオス猫は人知れず最期を迎える。
出来るうちに出来るだけのことをしたが、数日後からタマは来なくなった。
三日前に姿を見せた時にはもう歩く気力もなかったようだ。
とても写真は撮れなかったが、目は塞がり、食べる気力はあるのだが食べられない。
最後まであきらめずエサをねだり、食べようとするタマに胸が熱くなってしまった。
はじめてタマの頭を撫でてあげたが、「フ~!!」と言って爪を立てる気力もないようだ。
動物は最後まで決して生きることをあきらめない。
生きるということはそう言うことだ。
タマは人に飼われず猫として誇り高く生きた。
そして一昨日夕刻、タマはマリンビレッジで野人とスタッフの傍で静かに生を終えた。
土には埋めず、敷地内の遠く離れた草むらに静かに横たわっている。
その体は埋めるよりはるかに早く大地に戻るだろう。
さらばタマ・・・マタね・・