滅びゆく海 ガンガゼ 2 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

長年海に潜ってきたが、海底を埋め尽くすほどガンガゼを目撃したことは一度もなかった。

ガンガゼはどの海域にもいたが、周囲とのバランスを保ちながら存在していたのだ。

これではまったく海底に足を着くことが出来ない。

両サイドの海は褐藻類が繁っているのにその一帯だけ数百mにわたり海底が丸裸になっていた。

海藻のない海底には、貝類だけでなく魚の姿も見えなかった。

サンゴ礁が死滅すれば魚がいなくなるのと同じだ。

ガンガゼの他には唯一、肉食の貝だけが点在していたのだ。

それは透明度は抜群でも「死の海」を見ているようだった。

熱帯魚が豊富だった沖縄や八重山の海も、観光客の増加と共に踏まれた浅瀬のサンゴは死滅、死の海と化した海岸も多い。

ウニとヒトデは同じような仲間。

グレートバリアリーフのオニヒトデと同じ条件で増殖したのは間違いないだろう。

タイでもこのガンガゼに埋め尽くされた海域があるようだ。

洗剤などの生活排水、農業用水を長年にわたり流し続けたツケが回ってきたとも言える。

今は部分的だが、沿岸全域に広がるのは時間の問題だろう。

野人のようにはっきりと断定している人は今のところいない。

漁業者も実態は知っていても原因もわからず、仕方ないとあきらめている。

野人は海の側で生まれ海で育った。

生まれ故郷の今も美しい海は既に滅んだ。

これ以上滅びゆく海など見たくはない。

漁業の消滅も、多くの人々が路頭に迷うのも見たくはないのだ。

魚だけでなく、アワビやサザエ、トコブシやウニや伊勢海老が食べられなくなる日も来るだろう。

川からの養分は海を豊かにすると言うが、今はその養分が豊か過ぎてプランクトンが異常繁殖、毎年のように大規模な赤潮が発生、昨年は生まれて初めて酸欠で大量に死んだ海底のサザエを目撃した。

農業も漁業も迷走する原因は全く同じで、大地も海も同じ物質で汚染されている。

大地が病めば人も病み、海まで病めば人は生きては行けなくなる。

海が地上を含めたすべての生命を養っているのだ。

必ずこれを食い止め、大地も海も復元して見せる。