地球温暖化は氷河を溶かすだけでなく、海水温の上昇を招き、海の生態系に深刻な影響を与えている。
珊瑚の白化現象もその一つだが、さらに農業用水や生活排水が拍車をかけている。
定置網に甚大な被害を与えるエチゼンクラゲの大繁殖や、化学肥料によるグレートバリアリーフのオニヒトデの大繁殖などがある。
他にも野人が衝撃を受けた出来事がある。
大きなニュースにはなっていないが、長年海に潜り続けた野人は身を持って実感、その原因を確信した。
それはガンガゼによる海底の激変だった。
ガンガゼとはウニの仲間で、本体は小さく、刺が長く20㎝を超えて鋭い。
刺には毒があり刺されると強烈に痛む。
刺先にはモリのように小さな引っかかりがあり、抜こうとしても抜けない。
刺さると簡単に折れて皮下に残るから始末が悪い。
このガンガゼには子供の頃から悩まされ、かかとに刺さった数本の刺をナイフで切り裂いて取り出して血だらけになり、激痛と、毒が回ったこともあってしばらく歩けなかったことがある。
他のウニと違いガンガゼの身は小さくて旨くもなく商品にはならない。
このガンガゼが異常繁殖して、海藻もなく丸裸にされた外洋の海底を2度目撃した。
ウニの仲間の主食は海藻類の中でも褐藻類で、数が急激に増えれば海底のバランスが壊れ、褐藻類は根こそぎ食べられ、胞子は付着しても成長出来ない。
生活排水や農業用水などに含まれる窒素やリン酸など、養分が多い内湾や河口ほど緑藻類が多く、澄んだ外洋ほど褐藻類が多い。
アワビやサザエなどはウニと同じくアラメやカジメなどの褐藻類が主食だ。
汚染が進むほど緑藻類が褐藻類を駆逐し、それは湾の奥から徐々に外洋へと広がって行った。
サザエが豊富な海域も褐藻類の消滅と共にその姿を見かけなくなった。
それは昔からわかってはいたが、内湾や川から離れた外洋から褐藻類が消え去ったのは衝撃的だった。
その原因がガンガゼの異常繁殖だ。
続く・・