逃走クジャクと野人の微妙な関係 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

ニュースになっていたが、飼っていたクジャクが逃走、捕獲されたのだが持ち主が二人も現れ大岡裁きに持ち込まれたと言う。

クジャクと言えば、野人はかってクジャクの大群にエサをやっていたことがある。

20代半ばで東シナ海の諏訪の瀬島にヤマハの海洋特務員として赴任していた時のことだ。

国内の最高僻地と言う極限の島で、鹿児島から月に数回来る定期船以外は、ヤマハの10人乗り小型飛行機しか交通便はなかった。

ヤマハは硫黄島にも飛行場を建設、屋久島を含めた3島にこの飛行機を不定期就航させていた。

毎月のようにこの飛行機で鹿児島の天文館に直行、命の洗濯の散財を繰り返していたが、寝泊りしていたのはこの島の私設飛行場だった。

飛行機が着陸すると、停止位置まで誘導するデスパッチャーもやった。

そこはクジャク天国で、夜が明けると数十羽のクジャクの奴が野人のベッドのガラス窓をコツコツと突っつくのだ。

無視すると、「アオ~! アオ~!!」と奇声をあげるから始末が悪い。

「やかましい! 青じゃない 今は赤信号!」と言っても日本語も洒落もわからんクジャクには通用しない。

自由なのだからエサくらい自分で捕らんかい・・と言いたい。

当時の川上源一社長が放し飼いにしたもので既に野生化していた。

クジャクは、野人の古武術の武芸鍛錬をすぐ横で・・知らん顔して見ていた。

他にもたまにアフリカ原産のホロホロチョウが群れで歩いて来る。

滑走路に至っては数十匹を超える気の荒い野生の山羊の群れがたむろして着陸出来ないことも多かった。ここには白く大人しい山羊などはいない。

パイロットからの無線連絡を受けた野人はアーチェリーを背負い、仮面ライダーとなって山羊の群れに突っ込んで行った。

コケてズルむけて因幡の白ウサギになってしまったが、晩飯の焼き肉の誘惑に負けて、矢を放つのに走行中つい両手を使ってしまったのだ。

とにかく・・クジャクは硬くて旨くないが山羊もホロホロチョウも非常に旨かった。

冬の強風で船も飛行機も来ず、食糧危機を脱したのは彼らのおかげで、クジャクの世話になるまでには至らなかった。

魚は、社員全員の食べる分は野人が海から調達していた。

巨大な夜光貝を研磨機にかけてマグロやカツオを釣るルアーを作り、ルアーに付ける鳥の羽にも不自由はしなかった、クジャクのおかげで。

しかし、エサをもらった恩義も忘れ、尻毛の一本を惜しんでクジャクの奴は毎回逃走した。

飛ぶことも忘れて必死の形相で飛行場を走るクジャクを、野人が全速で追いかける姿を想像していただきたい。

クジャクと野人は・・常に微妙な関係にあった。

 

連載東シナ海流5 火を噴く島

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連載東シナ海流6 野生山羊の反撃

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